土器土器体育祭

点数発表〜1日目〜



ー『それでは、閉会式を行います。その前に、本日の紅白別の点数の発表を行います!校舎上部に設置しております点数をご覧下さい!』

校庭に全生徒が集まったのを確認した先生から伝えられた放送部がアナウンスする。

いよいよ1日目の点数の発表。
言われるまま校舎を見上げると、屋上から吊られた紙の点数表示が見えた。

赤組 ■■540
白組 ■■480

頭二桁が隠されたそれは、結果がまだ分からなかった。
屋上で合図を待つ先生が隠された二桁目の紙に触れている。クラスメイトだけでなく、生徒全体が結果にソワソワして騒ついていた。
釣られて俺も少しどきどきしながら放送を待った。

『それでは、二桁目!お願いします!』

合図を受け、隠された紙が外される。
その点数は

赤組 ■0540
白組 ■1480

だった。
騒つきが大きくなる。

これは、桁が違ったら焼肉がどうなるか分かんねえな。

大勢が見守る中、いよいよ隠された最後の1枚に手を触れる先生。

『次は運命の1枚、ですが…結果がどうあれ明日の皆さんの頑張り次第で逆転は大いにあります!それでは、最後の1枚!お願いします〜!』
声を張り上げたヒラニシさんに先生が手を動かす。
点数は……

赤組 10540
白組 11480


「勝…ってる…。」
ぼんやりと呟いた言葉はすぐに掻き消えた。
白組の表示が見えた途端、ワッと校庭が沸き立ったからだ。
喜ぶ反面、点数に大きく差が無いことから気合いを入れている白組の生徒と、チャンスがあるとやる気に溢れる赤組の生徒。
点数を気にしてなかったから勝っていることに俺は普通に驚いていた。

委員長が「このまま焼肉まで行くぞ!!」とクラスメイトに振り返って真剣な顔で声をあげるのに顔が緩んだ。
勿論、クラスメイトは目に炎が灯っていた。

これはいよいよ担任の財布の心配だな。

先生が待機しているテントを体を動かして覗き見てみると、居た。
周りの先生から笑顔で声を掛けられている美月先生は、校舎を見上げて苦笑いしていた。
生徒だけでなく先生達にも知れ渡っているらしい。
逃げられない状況の担任に合掌。

熱が冷めないままの状態で閉会式の放送がかかった。
『結果発表が済みましたので、それでは次は閉会式に移ります!』

さっきよりは静かになったが、校長による挨拶と共に閉会式が終わり、解散となった途端またザワザワとしながら各教室に戻ることになった。
ザワザワしていた内容は結果だけでは無い。耳を澄まさないでも聞こえるそれは、それぞれ今日あった競技のことや親のことだった。
中には明日もあることに沈む声が聞こえ、内心同意した。

「勝ってたね!」
唐突に肩を組んできた上野に驚く。
「だな」
嬉しそうな上野に相槌を返す。
周りを見ると、いつの間にか遠坂と小森も近くに居たらしい。

「明日はもっと頑張らないとすね毛抜かれちゃうね」
悪戯っぽく笑う遠坂に、そういえば明日はチアボーイズの出番があることを思い出した。
どういう構成なんだか分かんねえけど、ちょっと楽しみだな。
俺んとこだけガチだったら笑う。
応援合戦に勝ち負けとか流石に無いだろうし。
いや…芸術点ならワンチャン?

「負けなきゃいいんでしょ」
鼻で笑う小森。
おーおー余裕なこって。
とは言え、俺もすね毛は守りたい。
すね毛が大事なわけじゃ無いです。
痛いのが嫌です。


教室に戻ると、担任から今日の締めと連絡事項を伝えられた。
紙を片手に形式的に連絡事項を読み終えた途端、陽キャから担任にそれぞれ声が掛けられる。

「せんせー、明日、楽しみにしててよ!」
「ぜってー勝つから!」
「応援しててくださいよ!」
活気よく口々に言われ、首に手を回した先生が困ったような気の抜けた顔を見せた。

「はいはい…、」
宥めたと思えば、そのまま続ける。
「……店決めてっから気合い入れろよ」
にや、と笑みを浮かべて言った言葉に驚いて目を丸くする。

クラスメイトも意外だったらしい。
一拍置いた後、驚きの声と歓声でクラスがドッと湧き立った。
狭い分、点数の結果発表があった時より声が大きく感じた。

へぇ。先生やるな。

もう勝った気で焼肉コールで盛り上がるクラスメイトを頬杖を付いてにやにやと見ていたら担任と目が合った。

腕を組み、片眉をあげて見せる担任はまさにドヤ顔だった。



「財布がなんかキメ顔してんな」
「あいつなんか失礼なこと言ってるな?」
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