土器土器体育祭
紅白応援合戦
はじめてまともに見ることになった紅白応援合戦は、結構見応えがあるものだった。
文句無しにかっこいい団長2人に、いつ練習したのか動きの揃った集団演技。
晴天の中、旗を自在にはためかせる様はドラマのワンシーンを切り取ったようにキマっている。
それぞれの動きも違い、赤団の生徒会役員達は笑顔が多く、時折手を振る姿に観客が湧いた。副会長と木雨が特に多かった。
それと、会計。
初めてしっかり見たその人は、茶髪でタレ目の、アイドルみたいな甘い顔だった。
これで生徒会全員の顔を認識したってことか。謎の感慨深さを噛み締めていると、演技中の木雨と目が合った。
そして手をピストルの形にしてバンッとファンサしてくるのに何故か伊藤が崩れ落ちた。
お前。
「あれはずるいって!」らしい。
しっかりしろ。関西弁だぞ。
脳内で、なんでや関西弁関係ないやろ!と聞こえた。
無視した。
反対に白団は硬派で、いつも緩い雰囲気のあの夏目副委員長でさえも表情が締まっていて、そのギャップに悶えている多数の人間を確認できた。
キレキレな動きの塩島委員長も、やっぱり普段より何割もかっこよく見えた。
余談ですが伊藤が女子になってたことをご報告します。
思い出したかのように携帯を構えだしたのは遠坂。
珍しい。
「同室者の勇姿撮ってんの?」
笑いを含んで聞くと、遠坂はいつもの柔らかい口元をつり上げさせた。その雰囲気は意地悪なように思えた。
「うん、燕の勇姿を見たい人も身内にいると思ってね」
「へえ」
確か、家柄の付き合いがあるって言ってたし、身内が知っていてもおかしくない話だ。
遠坂につられて俺もなんか記念に撮っておくことにしようと携帯を取り出した。
姉ちゃんと小森にでも送っておいてやろう。
静かな親衛隊により順調に演技は終了し、クラブ対抗リレーが始まる。
気合の入った上野を送り出して競技が始まるのを携帯を構えて見ていると、校庭の真ん中の待機場所に意外な人物がいた。
上着のジャージの前を開け、ウェーブのかかった髪がふわふわと風に揺れている。
眼鏡に光を反射させた、加賀屋先輩だ。
文化部も走るし、そういや加賀屋先輩は写真部部長だったな。俺の中では写真部の単語が消えていたから、普通に仲が良さそうに他の部員らしき生徒と話しているのに驚いた。
なんだ、普通に先輩してるんだな。
意外に思っていると、自然と俺と目を合わせてきた。そのままウインク。おまけに指ハート。なんなんだお前は。
気付いた数名が歓喜の声を上げるのが解せない。
チベスナ顔になり目を逸らした。
俺は上野を応援するのに忙しい。
精々頑張るんだな。
クラブ対抗リレーは4人で走り、形式はスウェーデン。一番手、二番手は選出メンバーで、基本的には最終コーナーの三番手、四番手のどちらかが部長副部長なのが伝統らしい。
上野が言ってた。
4人だけが走る中で選抜されたのは確かに凄いと思う。特に運動部でバスケ部は学校でも力が入ってるから人数も多いしな。誇らしげに話してたのにも納得だ。
立ち位置に居た他の部活が走り出し、次に走るために立ち位置に着く上野。真剣な表情に、一度だけ観に行ったことのあるバスケの試合での一幕と被った。
その時かっこいいと思ったし、やっぱりこう見ると綺麗な顔をしてる。
パシャ、と1枚撮った。
前に走っていた部活がゴールでテープを切り、拍手が送られる。
走る番が来たバスケ部を見ていると、ピストルの乾いた音が鳴った。それからはあっという間で、分かりやすい頭の野球部との接戦で上野はギリギリ2番目に三番手の生徒にバトンを渡した。
走り終え、白線の内側で同じ二番手で走っていた生徒と笑い合っているのを見て青春だなぁ…と他人事にそう思った。
部活に入ってるってだけでそう思う。
俺は部活に入る選択肢無かったけどな。
だって金かかるし。
でも、学生で部活って物凄く限られた時間でしかできない…って考えると、やっぱ良いもんだよな。
そういえば、とポンポンを持って校庭を眺める遠坂を見た。
遠坂は入学してから部活とか委員に入るような素振りが微塵も無かったけど興味なかったのか?
「なぁ、遠坂は部活とか入る予定ないのか?」
「え?ん〜〜。」
考える素振りを見せる遠坂。
「同好会も色々あるけど」
同好会…と呟いて動かしていたポンポンを止めた遠坂。
傾けていた首を元に戻し、「うん。やっぱり僕は良いかな!」と言った。
「普通に学生生活送れるのが1番僕は楽しいよ」
「そ、っか。俺もそれには概ね同意」
頷く俺に、ね〜。と頷き返した遠坂。
いや、今まで普通に学生生活送ってなかったわけ…?
突っ込みそびれた言葉は胸の内に仕舞った。
それから、夏目副委員長と話していた美人文化部部長達への熱い声援。
それはもう、野太かった。
「ただいまー!負けちゃった!」
「お疲れ〜頑張ったな」
「惜しかったねぇ」
はじめてまともに見ることになった紅白応援合戦は、結構見応えがあるものだった。
文句無しにかっこいい団長2人に、いつ練習したのか動きの揃った集団演技。
晴天の中、旗を自在にはためかせる様はドラマのワンシーンを切り取ったようにキマっている。
それぞれの動きも違い、赤団の生徒会役員達は笑顔が多く、時折手を振る姿に観客が湧いた。副会長と木雨が特に多かった。
それと、会計。
初めてしっかり見たその人は、茶髪でタレ目の、アイドルみたいな甘い顔だった。
これで生徒会全員の顔を認識したってことか。謎の感慨深さを噛み締めていると、演技中の木雨と目が合った。
そして手をピストルの形にしてバンッとファンサしてくるのに何故か伊藤が崩れ落ちた。
お前。
「あれはずるいって!」らしい。
しっかりしろ。関西弁だぞ。
脳内で、なんでや関西弁関係ないやろ!と聞こえた。
無視した。
反対に白団は硬派で、いつも緩い雰囲気のあの夏目副委員長でさえも表情が締まっていて、そのギャップに悶えている多数の人間を確認できた。
キレキレな動きの塩島委員長も、やっぱり普段より何割もかっこよく見えた。
余談ですが伊藤が女子になってたことをご報告します。
思い出したかのように携帯を構えだしたのは遠坂。
珍しい。
「同室者の勇姿撮ってんの?」
笑いを含んで聞くと、遠坂はいつもの柔らかい口元をつり上げさせた。その雰囲気は意地悪なように思えた。
「うん、燕の勇姿を見たい人も身内にいると思ってね」
「へえ」
確か、家柄の付き合いがあるって言ってたし、身内が知っていてもおかしくない話だ。
遠坂につられて俺もなんか記念に撮っておくことにしようと携帯を取り出した。
姉ちゃんと小森にでも送っておいてやろう。
静かな親衛隊により順調に演技は終了し、クラブ対抗リレーが始まる。
気合の入った上野を送り出して競技が始まるのを携帯を構えて見ていると、校庭の真ん中の待機場所に意外な人物がいた。
上着のジャージの前を開け、ウェーブのかかった髪がふわふわと風に揺れている。
眼鏡に光を反射させた、加賀屋先輩だ。
文化部も走るし、そういや加賀屋先輩は写真部部長だったな。俺の中では写真部の単語が消えていたから、普通に仲が良さそうに他の部員らしき生徒と話しているのに驚いた。
なんだ、普通に先輩してるんだな。
意外に思っていると、自然と俺と目を合わせてきた。そのままウインク。おまけに指ハート。なんなんだお前は。
気付いた数名が歓喜の声を上げるのが解せない。
チベスナ顔になり目を逸らした。
俺は上野を応援するのに忙しい。
精々頑張るんだな。
クラブ対抗リレーは4人で走り、形式はスウェーデン。一番手、二番手は選出メンバーで、基本的には最終コーナーの三番手、四番手のどちらかが部長副部長なのが伝統らしい。
上野が言ってた。
4人だけが走る中で選抜されたのは確かに凄いと思う。特に運動部でバスケ部は学校でも力が入ってるから人数も多いしな。誇らしげに話してたのにも納得だ。
立ち位置に居た他の部活が走り出し、次に走るために立ち位置に着く上野。真剣な表情に、一度だけ観に行ったことのあるバスケの試合での一幕と被った。
その時かっこいいと思ったし、やっぱりこう見ると綺麗な顔をしてる。
パシャ、と1枚撮った。
前に走っていた部活がゴールでテープを切り、拍手が送られる。
走る番が来たバスケ部を見ていると、ピストルの乾いた音が鳴った。それからはあっという間で、分かりやすい頭の野球部との接戦で上野はギリギリ2番目に三番手の生徒にバトンを渡した。
走り終え、白線の内側で同じ二番手で走っていた生徒と笑い合っているのを見て青春だなぁ…と他人事にそう思った。
部活に入ってるってだけでそう思う。
俺は部活に入る選択肢無かったけどな。
だって金かかるし。
でも、学生で部活って物凄く限られた時間でしかできない…って考えると、やっぱ良いもんだよな。
そういえば、とポンポンを持って校庭を眺める遠坂を見た。
遠坂は入学してから部活とか委員に入るような素振りが微塵も無かったけど興味なかったのか?
「なぁ、遠坂は部活とか入る予定ないのか?」
「え?ん〜〜。」
考える素振りを見せる遠坂。
「同好会も色々あるけど」
同好会…と呟いて動かしていたポンポンを止めた遠坂。
傾けていた首を元に戻し、「うん。やっぱり僕は良いかな!」と言った。
「普通に学生生活送れるのが1番僕は楽しいよ」
「そ、っか。俺もそれには概ね同意」
頷く俺に、ね〜。と頷き返した遠坂。
いや、今まで普通に学生生活送ってなかったわけ…?
突っ込みそびれた言葉は胸の内に仕舞った。
それから、夏目副委員長と話していた美人文化部部長達への熱い声援。
それはもう、野太かった。
「ただいまー!負けちゃった!」
「お疲れ〜頑張ったな」
「惜しかったねぇ」