土器土器体育祭

2



丸君が袋から弁当を2つ取り出して1つを鮎に渡した。

「ありがと!遅かったじゃん」
「並んだんだよ。お前が人気な奴選ぶからだろ」
親しげに会話をする2人に、本当に友達なのかと再認識して驚く。

椅子に腰を下ろした丸君が俺の方を窺い見た。
「すみません、借り物競走の時からこいつが迷惑かけっぱなしみたいで」
「迷惑ってなんだよ〜!」
鮎をスルー。
申し訳無さそうに眉を下げる丸君に慌てて手を振った。

「いや、それより丸君が鮎と友達だったのが意外だった」
「俺もそう思います」
真顔で頷く丸君。
お前も意外だと思ってんのかよ。

聞けば、色々無鉄砲な鮎を見かねて世話を焼いてるうちに2人で行動することが多くなり、今に至るらしい。

確かに、忙しない鮎としっかりした丸君は相性が良さそうだった。
弁当を開けて早速手を汚す鮎にティッシュを渡す丸君を見て思った。

2人を眺める俺達に気付いた丸君に「気が付かずすみません、こいつを気にせず皆さんもお昼をどうぞ」と声を掛けられ、それぞれの昼を取り出した。

「「「「「「いただきます」!」!」」」」
示し合わせた様に全員で食事の挨拶。

初対面の遠坂を丸君に軽く紹介した後、揚げ物を食べていた鮎が思い出した様に顔をあげた。
「そうだ。京平ってばユズくん知ってたのになんで言ってくれなかったんだよ」
「ヒントが"ゆずきさん"だけで分かるわけないだろ」
溜め息を吐く丸君。
そりゃそう。

弁当から俺に視線を向ける丸君。
「知ってたら止めてたんですけど…。」
謝罪モードになる丸君に安心させる様に笑いかけた。
「そんなの全然いいって、丸君は何も悪くないから」
それに、教室に来たの知ってたのに何も言わなかった俺も悪かったしな。

名乗るつもりは微塵もなかったが。

にしても、この気の使いようだと丸君が人払いでもしてくれたのか?
不思議に思い、クラスの皆は?と聞くと、あぁ。と丸君が「部活ある人は部活のメンバーの所に行って、親衛隊の人はそれぞれの人が見れる所で食べに行ってるみたいです」と答えた。

部活。

親衛隊。

上野と小森の方を見た。
上野は、それが?と言わんばかりに首を傾げて俺を見た。
小森は弁当を食べながら無言で見ていた携帯の画面をこちらに向けてきた。見ると、会長だけにピントが合い、豪勢な弁当を食べている映像。

「……動画?」
「中継」
怖すぎる。
役付きにプライベートは無いらしい。


「そういえば、なんでユズくんと京平が仲良いの?」
食べながらたまに丸君と授業の話をしていると、俺と丸君が会話するのを見て疑問に思ったらしい鮎が聞いてきた。
確かにそう思うのも無理ないか。

「去年図書室で勉強してた時に教えてもらってたんだよ」
「教えることは特に無かったけど、そこから他の人も交えて勉強会を今もやってる感じだな」
丸君と頷き合った。

「お世話になってます…。」
途端にしおしおし出す上野を見て笑う俺達。
丸君が上野から鮎に目を向ける。
「天海も今度する時来たら?お前化学よく分かってないし」
げぇ〜っと苦い顔を見せる鮎。
「え…いや…えぇ…機会がゴザイマシタラ…。」
この反応を見るに、上野と同じくらいテストや勉強は苦手らしい。
殆どが公式を覚えるくらいだし、分かると楽しいのに。

食事が進むにつれ、丸君と鮎が話すのに釣られて俺達もそれぞれの会話をする。

「上野惜しかったな」
見事に茶色一色の上野の弁当を見ながらリレーのことを話した。

「悔しい…。陸上部がいると強い…。」
眉をしかめて唐揚げをお箸で刺す上野。
お行儀。

「でもその中で2位って凄いよ!!」
見ていた中継から画面を変えたらしく、写真をこちらに向けながら目を生き生きとさせる小森。
いつ撮ったのか素晴らしい画質だこと。

「うん。それにかっこよかったよ」
朗らかに遠坂もフォローに回った。

明日は勝つから!と唐揚げを食べて息巻く上野に3人でそれぞれの言葉を掛けた。

そうだよな…明日もあるんだよな…。借り物競走のことを思うと不安になった。
はぁ…今日はまだ簡単だったけど明日はどうなることか。



「俺は明日の騎馬戦楽しみだな〜!」
「はいはい。頑張ってね天海」
「おれも頑張るから応援してね!柴!」
「焼肉も待ってるしな」
「頑張ってね上野君」
「この後のメインイベントの紅白応援合戦忘れてるな君達」
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