土器土器体育祭

体育祭前日



バトンパスも完璧。それぞれの競技においての作戦の最終調整も終え、チアボーイズが大技を完成させたのにクラスメイトが拍手を送った本日、体育祭前日である。

いつもの様に惶と晩飯を食べている時だった。明日が体育祭であることもあり、ふと思い浮かんだことを聞いてみた。

「体育祭なんだけどさ。去年参加人数結構少なかったけど、Zクラスって今年も体育祭出んの?」
片眉をあげて俺を一瞥すると、箸を止めた。
「"出んの?"ってなんだ」
あ。言い方間違えた。慌てて手を振る。
「いや、Zクラスって色々あるから行事ごとに大人しく出るのかちょっと…。」気になったというか…。もぞもぞと口の中で付け加える。
言ってから気付いたけど、ちょっとというか結構失礼な事を言ったわ。
不躾な質問を自覚して目を泳がせた。
やっぱなんでもない。そう言おうとする前に素気無く惶が「あぁ…」と、何やら納得したらしい。
「塩島が"問題を起こさず競技に出たら何個か単位をくれる"様に学校に交渉したらしい。だから今年は大半が出んじゃねェか」
へえ。成る程。

……Zクラスの生徒…単位が足りないんだな…。

納得する俺から目を離して箸を動かしながら話を続けた。
「あとはレンさんが…」
レンさん…。Zクラスのリーダーの人か。
「あ、ピアス?」
中間テストの時に聞いたことを思い出して、そう口を挟むもスルーされた。違うかったらしい。
恥ず。誤魔化す様に味噌汁をぐるぐる混ぜてみた。気にしてなかったが。

「やる気無ェからって手抜いて競技で坊ちゃんに負けるとかダセェことするなら、負けた写真撮って負け犬の回覧つくってあげる、つってた」
「へ、へぇ…。」
煽るぅ。
にしても、テストの時もそうだったけど、レンさんとやらは"ダセェ"ことが嫌な、男らしい人の様だ。

漢!!って見た目してんのかな。去年はレンさんで言うダセェことをしてたし、誰がどうとか興味なかったから見た目を知らない。明日は小森にでもどの人か聞いてみるか。
そう考えながら味噌汁を啜っていると、皿の上を綺麗にさらい終え、お茶を飲んでいた惶が、ふと「柚木」と声をかけてきた。
「ん?」
「お前のとこに写真部の胡散臭い奴から連絡来てるか?」
胡散臭いで俺に思い当たる節は1人のストーカーだけだったが、もしかしたらまだ他に胡散臭い人がいるかもしれない。なんなら写真部全員胡散臭いかもしれん。

とりあえず、「加賀屋って人?」と聞いた。
「あぁ。それだ」
これだったらしい。

あれから連絡が来るって……。毎日10件はゲームのこととか、どうでもいいことをラインしてくるけど、惶と関連したっつったら………あ、そういや。
「特には来てないけど、もしかして惶も聞いてたのか」
聞けば、少し前に風紀室で塩島委員長と話していたタイミングでたまたま会い、「期待してるねん!また連絡するからよろしく、オオワシくん!」と軽く声をかけられたらしい。

オオワシくんってなんだ。
「オオワシくんってなに?」
「…名前覚えてねェだけだろ」
アレがそんなことあるか??と、鳥の名前で風紀室で聞いた何かを思い出した気がするけどもう一度封印しておいた。特に困る気がしない。

「それにしても…明日が体育祭なのに連絡ないってなんなんだろうな」
「さァな」
あんなにドヤ顔で言ってた割に何もわかってなかったりして。脳内に浮かんだパーマ眼鏡を鼻で笑った。

それと、惶のこの様子だと俺のストーカーなのは知らないっぽい。
知られたからってどうというわけでも無いけど、何となく、あんま知られたくないなって思った。



「Zクラスってチアガール出んの?」
「居ると思うか?」
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