はじめまして

はじまり


俺は思う。



「あはは、やだなぁ~~、僕ただの平凡だってばっ!」


普通の、平凡な男子高校生が一人称で「僕」なんて使うはずがねえと。






俺は王道学園なる所で勉学に励む、一般的に言えばオタクなる趣味が少しある地味めの高校生。
だから王道学園が分からなければググって。決して面倒くさいからでは無く、文明の利器はこういう時に使うもんだと思うんだ俺は。
で、言わずもがな平凡な俺は、王道学園なる金持ち学校に普通は入れるはずが無いんだが、
幸か不幸か腐を拗らせた姉が医者と結婚。
キラキラお目目に耐えきれず受験し、特待生として合格してしまった。

不幸以外何物でもない。

そんなこんなで意外にも適応能力が高かったので、特筆することも別段なく1年が過ぎ、2学年にあがった。

春休みが終わり、今日は始業式。
寮で昼夜逆転の堕落した生活を送っていたからか、ガチでしんどい。超眠い。
体育館にて隣のチワワのうるさい声も聞き流し、遠く離れた壇上に立つくそイケメン生徒会長の話も聞き流しTwitterを触るも、眠気には勝てねえ。寝そう。いやもう寝よう。
特に何もないでしょ。
そうして俺は寝た。耳栓をして。

目が醒めると隣のうるさいチワワはおらず、周りを見渡すとまばらに人がいるくらいだった。

どんだけ熟睡してたんだよ、草生えるわ。

「まーた耳栓してたでしょ〜?」
肩を叩いて声をかけられたと思ったらやっぱお前か
「上野」

上野は去年クラスで仲良くなり、今年も同じクラスなので一緒に行動することになった俺と同じ特待生だ。といっても、上野はスポーツ推薦だが。
いつの間にか耳栓を抜き取られていたようで、上野は耳栓を持ち、手を軽く振っている。
その半笑いむかつくな。

「終わってどのくらい?」
「そんなたってないよ。5分くらいかな?」

流石チワワ動きが俊敏!
休み時間も減るしそろそろ行くか、と重い腰をあげて上野の横に並び、出口に向かった。

廊下を歩くといつもの熱い視線が。
熱い熱い、なんて感じるのは俺じゃなく隣。
隣を見上げながら改めて感じる。
上野は身長が高い。190近い。
それを生かしてバスケをしていて特待になれたらしい。栗色のさらさらした髪。極め付けに顔が良い。人生イージーモードかよ。

「見ー過ーぎー」
上野はそう言いながら片手で俺の顔を掴む。
思ったよりぼーっと見ていたようで見つかってしまった。

やれやれ、
「俺の顔はバスケットボールじゃないぜぃたたたたたたた!!!?!!!!?」

痛い?!!??!!

必死で強引に引き剥がし距離を取る。
いつの間にか爆笑してるあいつが憎い。

「ふぅ……呼吸困難になるかと思った〜」
「なってしまえ、こっちくんじゃねえ馬鹿力!」
「いやいやぁ、おれ優しいしあれ半分くらいの力だからね?」
「俺の頭が浜辺のスイカになるところだったのか……!」

信じらんねえ。ゴリラかよ。不覚にも優しいと思った俺は優しさに飢えてる。
今究極に日常系アニメが見たい。

ゴリラの手から逃げながら話しているとあっという間に教室に着いた。
俺の席は廊下側の後ろらへん。
ゴリラは────

斜め前だった。

これで今年も授業で暇しないな。

席に着き、教室内を見渡す。なんか、心なしか教室がざわざわしているような。
軽く話題として上野に振ることにした。

「なぁ、なんか今日あったっけ。」
「あれじゃない?転校生が来るって話」
えっ聞いてない。
「って言っても噂なんだけど。」
なんだ噂か。
「なんでも副会長が2人の見かけない子を職員室に連れてくのを見たんだってさ。」
「確実やん。」

2人ってどこのクラスかなーと話しているとチャイムが鳴った。
ふと隣を見ると席が空いている。
うわ、嫌な予感。




「初めまして。遠坂凛です。」

アウト。


凛ちゃん?!!?!?だと!!?!
両親もうちょい考えろよ男だぞ確信犯すぎるだろうがよ何にせよ残念すぎるお坊ちゃん学校だし俺くらいしか多分気づいてないだろうからまだマシか???そんなことを脳内でぐるぐる考える。


その後、冷静に考え直すと普通に過剰反応だったと1人で悶えた。ヲタクだからすぐに名前に反応しちゃうんだよ。許してくれ。

ちなみにわからない人はfate キャラでググってNE。



「2年からということでちょっとアウェーかと思いますが、これからよろしくお願いします。」
‭そう言って艶やかな黒髪を揺らし微笑み軽くお辞儀した。


口元しか見えないが。‬

やっぱマシじゃないね???
よくそんな堂々と挨拶できたねなんで顔覆ってんのまじで。ツッコミどころ多過ぎて俺耐えらんない助けてゴリえもん。
耐えるように机に伏せ、額を擦り付けた。


「いやいや、暖簾分けしたら超絶美少女顔かもよ?」
「……………。

俺より身長が高いのは少女に入らない…………。」
どうやら耐えきれず口から滑り落ちていたようで、ボールが返ってきてしまった。

「確かに。でもほら、顔だけなら?」
「キモい。

つか自分で言って寒くねえの?」


伏せていた体を起こして、肩を震わせて笑っている隣の黒暖簾を見た。




「ちなみにゴリえもんって?」
「前のこっち向いてにこにこ手振ってるあいつ」
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