ウォロセキ140字ssまとめ

【誘い水】

最初は啄むだけの口付けも次第に深くなっていった。ウォロはセキの唇を貪りながら慣れた手付きで髪留めを解く。しゅるり、解かれた髪からは香油と少し汗の匂いがした。喉が鳴る。それに気付いたセキは妖しく笑い、誘うように身体を後方へ倒した。首へと回した腕を伸ばし、徐にウォロの束ね髪をほどく。
「これで揃いだ」
ほどかれた長い髪はまるで天蓋のように二人を覆った。



【喫する君】

「ウォロちょっと屈んでくれ」
セキが徐に手招きをする。何事かと思いながらも素直にその言葉に従い少し前屈みになって彼の顔を覗き込んだ。すると、ぐい、とこちらの顎を引いて近付いた唇に吸い付く。ちう、と短く音を立ててすぐ離れた。一瞬の出来事を理解した途端、顔が熱い。……完全に不意打ちだった。
「いつもの仕返し」
そう言う彼は悪戯を成功させた子供のように笑った。




【百年河清を俟つ】

「アンタとなら心中してもいい」
彼らしくない言葉だった。意味を測りかねていると、酔いどれの戯言だよと眉を下げた。そう言う彼の手には徳利はおろか杯さえ無い。きっと言い訳なのだろう。
「ジブンはアナタと永遠を生きられます」
思わず取った手と口を衝いて出た言葉に互いに目を瞬かせる。一瞬だけ合った目線はすぐ伏して睫毛を揺らした。
「……あぁ、どうせならそっちの方がいいな」
そう小さく呟いたが伏したままの視線からは何も伺えなかった。


百年河清を俟つ…いつまで待っても実現する見込みのないこと



【gotcha】

ウォロに捕まった。いや、正しく言えば後ろから抱き締められているだけなのだが、体格差のせいでその腕の中に収められてしまっている。おまけに腕に込める力も強いから、表現としては間違っていないはずだ。
「セキさん、ちょっと細すぎません?抱き締めたら折れそうなんですが?」
「そう思ってんなら放せっていだだだだ」





【揺籃の唄】

先程まで夢現ながらも辛うじて返ってきていた返事が途切れ、今は穏やかな寝息が聞こえる。
身を屈め、腕の中で眠る彼の胸に顔を埋め深呼吸をひとつ。それからその左側に耳を当てた。とくん、とくん。規則的に刻まれる鼓動が心地好い。例えるならそれは幼い頃聞いた子守唄のようで、寝付きの悪い自分にとってまさにその通りだった。
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