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【泪の理由は】

ぽろり、彼女の頬を涙が伝った。咄嗟に伸びた指がそれを掬う。
「どうしたの」ようやく捻り出した言葉は動揺のあまり少し裏返った。格好悪い、いやそうじゃなくて。私はまた何かやらかしてしまったのかな。
「ううん、違うのよ」「私、今すごく幸せだなぁって思っただけなの」
彼女はまだ潤んだままの瞳で笑った。 
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