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【漫ろ雨】

「雨は嫌い」そう零した言葉と裏腹に、瞳は降り止まない雨と鈍い色をしたままの空を見つめていた。何処か寂しいその色を、酷く悲しいその色を――私は知っている…そう、よく知っているのだ。かと言って掛ける言葉がある訳がなく、ただ茫然とその横顔を見つめるしか出来なかった。
…嗚呼、雨は嫌いだ。
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