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獄寺としっししししし親友の話1
(ボス連載の夢主です)

 15年来の友人は、とにかく変わったやつだった。
 まず感性が一般的ではない。大多数の人間が好まないようなものでも自分が好きだと思ったら堂々と好きだと宣言し、誰に何を言われようとも自分がやると決めたことを貫き通す。
 例えば赤色にハマっていた学生時代。服やアクセサリーからバッグ、文房具に至るまでとにかく赤いグッズを集め身に着けていた。しかも赤いスカートに白いカーディガンを着て「見て見て! ショートケーキ!」などと今日日3歳児でも言わなさそうなことを教室のど真ん中で臆面もなく言ってのける太い神経を持っている。あのときの凍り付いた教室の空気は、さすがの俺でも感じ取った。
 他にも変わった話はあげれば枚挙にいとまがない。そもそも変わった話しか出てこない。それだけあの友人は自由奔放・唯我独尊を地でいく人生をひた走っていたし、俺はそれを止めるどころか追いかけるだけで精一杯だった。
 時折、俺が彼女の友人をやっているということに疑問を抱くこともあった。もちろん趣味嗜好は合う。性格も合う。一緒にいればお互いに楽しいし、ふざけた話題から真剣な悩みまで、なんでも話せる存在というのは俺には彼女だけ、彼女には俺だけしかいない。
 それでも何故彼女のような稀有な存在が、俺のような男を横に置いておくのか。
 直接聞いてみても、彼女も分からないと首をひねるばかりだった。
「えー、なんでだろ。隼人といると楽だし楽しいし」
「俺と他のやつらで何が違うんだ?」
「うーん……ちょっと分からないかな! でも私たち親友だし別に理由なんてなんでも良くない?」
「そ、そうだな! 俺たちしっししししし親友だからな!」
「そうそう! ところで今度フェスやるらしいんだけどさー」
 勇気を振り絞った問いかけをあっさりと流し、翌月のフェスの話を始めた彼女に抱いたのは安堵と、同じくらいの不安だった。
 親友という言葉を否定されなかった安堵。
 一切出てこないうえに考える気配すらない、友人である理由。
 ナンセンスだと言ってしまえばそれまでだ。きっと本来ならば、友人であることに理由などいらない。だが自分の方には、彼女を親友と呼ぶ明確な理由があった。だから彼女にも、同じものを求めている。
 彼女に負けず劣らず自分勝手な自身の思考に落胆しつつ、しかし不安を誰にも打ち明けられないまま年月は過ぎていった。中学校を卒業し、高校に入学し、卒業し――ついに念願のマフィアとしての仕事が始まってもなお、この小さなわだかまりはほどけることなく、胸の内に存在し続けている。ついでに気が付いたときには何故かヴァリアーに入隊していた友人のマイワールドは拡張を続けており、俺が敬愛するボンゴレファミリーとそのボスに、日々多大なる迷惑をかけまくっていた。

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