ティエ×ライ
好み
あの時のキスは何だったのか。
単にからかわれただけなのか…それとも、少しくらいは脈があるのか。
気になっているというのに訊くこともできないまま、数日が経ってしまった。
そして今、俺は何故かティエリアに呼び出され、テーブルをはさんで座っている。
手持無沙汰なのは飲み物も出されていないせいだ。
コイツ、自分は優雅に紅茶を飲んでいるくせに俺には何もなし。
呼び出したくせにこちらを見ようともしない。
当然会話もなしだ。
紅茶を飲みつつ端末を弄っているティエリアに、俺は話しかけた。
「…俺もなんか飲みてーんだけど…。」
ちらっとこっちを見て、まるで今初めて俺の存在に気付いたかのように「あぁ…」と声を出す。
ちょっと待て、さっき入ってきたとき声かけたぞ。
んで、返事しただろうが。
「そちらに置いてある。君が好きなものを自分で淹れればいい。」
はいはい、セルフサービスってやつですか。
立ち上がってポットの前に行き、どれを飲もうか思案していると、すぐ後ろに気配を感じた。
振り向くとティエリアがそこに居て、ドキッとしてしまう。
「紅茶を淹れるならこれもついでに頼む。」
「え…」
「作業効率を考えれば当然のことだろう。」
間近で見上げるティエリアにあっけに取られていると、カップを手渡されてしまった。
ティエリアはすぐに戻ってまた端末を見始めてるし。
ムッとして言い返す。
「…俺は珈琲を飲むんだ。自分で淹れたらどうだ?」
「そうか。なら好きにしろ。」
そう言ったきりまた黙ってしまったティエリアが怒っているのかと少し気になって、俺は結局紅茶を2杯淹れた。
何やってんだろ。俺…。
「ほいよ。」
差し出すと少し目を大きく開いてこっちを見た。
「珈琲じゃなかったのか?」
「気が向いたんだ。…つまり、作業効率を考えれば当然のことだろ?」
「なるほど?」
向けられた笑顔は勝ち気で妖艶で。
一瞬見惚れてしまった。
すると次にかけられた言葉は。
「ところで、ニール・ディランディーは越えられそうか?」
またムッとして見せると、ティエリアは視線を落とし、端末を片付けた。
「射撃のことを言っているのだが。」
射撃のことだろうが何のことだろうが兄さんと比べられるのは面白くない。
「まだ無理に決まってるだろう?俺は素人だぜ?」
「今すぐということではない。君は身体能力に優れているらしいからな。素人とは思えないとスメ…」
ティエリアは何故かそこで止まり、咳払いをして言い直した。
「…Missスメラギが言っていた。」
「甲斐被りだぜ…。」
そう答えながら、なぜ言い直したのかを考える。
コイツ、いつも彼女のことを何と呼んでいたっけか…。
スメラギさん、いや、見ている限り、誰のことでもフルネームで呼んでいるように思う。
スメラギ・李・ノリエガ、そう呼んでいたんじゃないか?
…本人に何か言われたのだろうか…。
「彼女はきちんとデータに基づいた意見を言っている。甲斐被りとは考えにくいな。」
「運動神経には自信はあるけどな。」
彼女に対して何か思うところがあるのだろうか。
そう思って話題を変えてみた。
「…そ~いやぁさぁ。彼女、超絶美人だよな。グラマーだし。」
ピクンと片眉が上がった気がした。
「誰が?」
「え?だから、彼女。ス…Missスメラギだよ。」
なんとなく呼び方をティエリアに合わせてみた。
「なるほど。君はああいうのが好みなのか。」
動いたはずの眉は元の無表情に戻り、何の動揺も無く紅茶を飲んでいる。
自分で振った話題だが、思わぬ展開にこっちが動揺してしまう。
「い、いや、そうじゃなくて、ほら、…一般的に言って、だ。」
「ふうん?」
ティエリアはカップを置くとゆっくりと立ち上がり、メガネをはずして近付いてきた。
間近に立つと、俺の座る椅子の両方のひじ掛けに手を付く。
緋色の大きな瞳に見降ろされ、ドキッとする。
緋色に射抜かれ動けずにいると、艶めかしい唇がゆっくりと動いた。
「それで?…君の好みは?」
あの時のキスは何だったのか。
単にからかわれただけなのか…それとも、少しくらいは脈があるのか。
気になっているというのに訊くこともできないまま、数日が経ってしまった。
そして今、俺は何故かティエリアに呼び出され、テーブルをはさんで座っている。
手持無沙汰なのは飲み物も出されていないせいだ。
コイツ、自分は優雅に紅茶を飲んでいるくせに俺には何もなし。
呼び出したくせにこちらを見ようともしない。
当然会話もなしだ。
紅茶を飲みつつ端末を弄っているティエリアに、俺は話しかけた。
「…俺もなんか飲みてーんだけど…。」
ちらっとこっちを見て、まるで今初めて俺の存在に気付いたかのように「あぁ…」と声を出す。
ちょっと待て、さっき入ってきたとき声かけたぞ。
んで、返事しただろうが。
「そちらに置いてある。君が好きなものを自分で淹れればいい。」
はいはい、セルフサービスってやつですか。
立ち上がってポットの前に行き、どれを飲もうか思案していると、すぐ後ろに気配を感じた。
振り向くとティエリアがそこに居て、ドキッとしてしまう。
「紅茶を淹れるならこれもついでに頼む。」
「え…」
「作業効率を考えれば当然のことだろう。」
間近で見上げるティエリアにあっけに取られていると、カップを手渡されてしまった。
ティエリアはすぐに戻ってまた端末を見始めてるし。
ムッとして言い返す。
「…俺は珈琲を飲むんだ。自分で淹れたらどうだ?」
「そうか。なら好きにしろ。」
そう言ったきりまた黙ってしまったティエリアが怒っているのかと少し気になって、俺は結局紅茶を2杯淹れた。
何やってんだろ。俺…。
「ほいよ。」
差し出すと少し目を大きく開いてこっちを見た。
「珈琲じゃなかったのか?」
「気が向いたんだ。…つまり、作業効率を考えれば当然のことだろ?」
「なるほど?」
向けられた笑顔は勝ち気で妖艶で。
一瞬見惚れてしまった。
すると次にかけられた言葉は。
「ところで、ニール・ディランディーは越えられそうか?」
またムッとして見せると、ティエリアは視線を落とし、端末を片付けた。
「射撃のことを言っているのだが。」
射撃のことだろうが何のことだろうが兄さんと比べられるのは面白くない。
「まだ無理に決まってるだろう?俺は素人だぜ?」
「今すぐということではない。君は身体能力に優れているらしいからな。素人とは思えないとスメ…」
ティエリアは何故かそこで止まり、咳払いをして言い直した。
「…Missスメラギが言っていた。」
「甲斐被りだぜ…。」
そう答えながら、なぜ言い直したのかを考える。
コイツ、いつも彼女のことを何と呼んでいたっけか…。
スメラギさん、いや、見ている限り、誰のことでもフルネームで呼んでいるように思う。
スメラギ・李・ノリエガ、そう呼んでいたんじゃないか?
…本人に何か言われたのだろうか…。
「彼女はきちんとデータに基づいた意見を言っている。甲斐被りとは考えにくいな。」
「運動神経には自信はあるけどな。」
彼女に対して何か思うところがあるのだろうか。
そう思って話題を変えてみた。
「…そ~いやぁさぁ。彼女、超絶美人だよな。グラマーだし。」
ピクンと片眉が上がった気がした。
「誰が?」
「え?だから、彼女。ス…Missスメラギだよ。」
なんとなく呼び方をティエリアに合わせてみた。
「なるほど。君はああいうのが好みなのか。」
動いたはずの眉は元の無表情に戻り、何の動揺も無く紅茶を飲んでいる。
自分で振った話題だが、思わぬ展開にこっちが動揺してしまう。
「い、いや、そうじゃなくて、ほら、…一般的に言って、だ。」
「ふうん?」
ティエリアはカップを置くとゆっくりと立ち上がり、メガネをはずして近付いてきた。
間近に立つと、俺の座る椅子の両方のひじ掛けに手を付く。
緋色の大きな瞳に見降ろされ、ドキッとする。
緋色に射抜かれ動けずにいると、艶めかしい唇がゆっくりと動いた。
「それで?…君の好みは?」