ショートショート

(微エロ)

アレルヤとマリーの受難



 アレルヤとマリーは艦内でもすでに公認の仲となり、いつでもラブラブで幸せそうだ。

 しかし、そんな二人に、大きな悩みが出来てしまった。

 それは部屋で二人がいい雰囲気になったときのこと…。




「…マリー…。」
「…アレルヤ…。」

 アレルヤはマリーに口づけると、そっと彼女の体をベッドに横たえ、首筋にもキスを落とした。

「…ぁ…。」

 幽かな声で反応を示すマリーを可愛く思いつつ、首筋から胸にかけて唇を滑らせる。
 その時。

『よぉ、アレルヤ。』

 ぴくん、とアレルヤは動きを止めた。

『楽しそうだなァ。』

「ハレルヤ!?」

 つい、声を出して自身の片割れを呼んだ。
 マリーがきょとんと宙を見る。

『よぉ、アレルヤ、代われよ。俺にもやらせろよ。』
「な、何を言い出すんだ!ハレルヤ!」
『自分だけいい思いしてんじゃねーよ。なぁ、代われって。俺がお前の代わりに彼女を喜ばせてやるからよ。』

 ククッと楽しそうな笑い声を立てるハレルヤ。
 アレルヤは体を起こして宙に向かって言い返した。

「嫌だからね!邪魔だから黙っててよ!やりにくいだろ!?」
『ヤりにくいってか? ハハハハハ』
「そ!そういう意味じゃなくてっ!!」
『同じだろうが。ヤるんだろォ?今から。』

 そうだけど、と言いそうになって留まり、マリーの視線に気付いては苦笑いを見せる。

「ご、ごめん、ちょっと待ってくれる?」
「え…ええ…。」

 しっかりと体を起こしてしまったアレルヤに釣られ、マリーも体を起こした。
 頭の中ではソーマが溜め息を付いている。

『あの男だな…。』
 え?とマリーは心の中で聞き返した。
『あの、ハレルヤという人格だ。多分代われだの何だのと言っているのだろう。』

 見ればまだアレルヤは片割れと言い合っている。
 片手を頬に当て、マリーは俯いた。

 どうしようかしら…。
『一応アレルヤに期待してみるか。…望み薄だがな。』

「だからっ!黙っててって言ってるだろう!?彼女の恋人は僕なんだからね!邪魔しないでよ!」
『俺とお前は一心同体だろうが。どっちがヤっても同じだろう?』
「もうっ!ヤるとかそういう言い方やめてよ!!」
『お前だってさっき言ったじゃねーか、ヤりにくいって。…ククッ。』
「それはっ!!」

 くっと言葉を詰まらせるアレルヤ。
 返答に窮してしまったアレルヤを可哀想に思ったのか、ハレルヤは急に態度を変えた。

『しゃーねーなぁ、分かったよ。黙っててやるよ。』
「ホント!?ホントだね!?」
『ああ、ホントだよ。』

 その答えを聞いてホッとしたアレルヤは今一度マリーに向き合う。

「ごめん、もう大丈夫だから。」

 気を取り直して、二人がキスしようとすると…。

『黙って見ててやるよ。お前がどんな風に彼女を喜ばせるかってのを。しっかり観察させて貰うぜ?』

!!

「やめてよハレルヤ!!」
『仕方ねーだろうが、俺達一人なんだからよ。どうしたって俺はお前がヤるのを見てるしかねーだろ。嫌なら俺に代われ。アハハハハ。』


 また口論を始めたらしい二人(?)を放っておいて、ソーマがマリーに話しかけた。

『今日は駄目だな。』
…そうみたい。
『仕方ない…。今度から、こういう時は私がハレルヤを組み敷いて止めて置いてやる。』
 そんなこと出来るの?
『多分。脳量子波で絡め取ればなんとかなる。…ただし…』
…何?
『交換条件がある。』
…何?言ってみて。
『私が表に出たいと思うときに、いつでも交替してくれ。もちろん、普段はお前が表でいい。』

 マリーは暫し考えに入った。
 ソーマが外に出たいと思う時が、こちらが嫌だと思うタイミングだと困る。
 …しかし…この状況を改善して貰えるなら、それも止むを得ないか、と結論に至った。

…分かったわ。その条件でいい。
『了解。今度からアイツの事は任せておけ。』











 それから暫く、アレルヤとマリーは気まずくて中々そういう雰囲気にはなりそうになかった。
 何よりアレルヤが手を出そうとしない。
 やはり、見られている、という状況はかなり応えたようだ。

「やあ、マリー。」
 自販機の前で二人は顔を合わせて互いに苦笑いを見せた。
「あ、アレルヤ。元気?」
「うん、問題ないよ。…あはは…、同じ艦の中に居るのに、元気?って聞かれるのも変な気分だね…。」
「そ、そうね…。」
「うっ!」

 途端、アレルヤが自分の頭を押さえて前屈みになった。
 マリーが思わず支えようとアレルヤの腕に手をやると、アレルヤがニヤッと笑った。

「よぉ、ご機嫌いかがだ?カワイコちゃん。」
「ハ…ハレルヤ…?」
「おう。ご名答。どうだ?気の弱えアレルヤなんかやめて、俺に乗り換えねーか?」

『マリー!代われ!』

 ソーマの声に素直にマリーは自分の中に引っ込んだ。

「てぁあー!!」

 いきなり殴りかかった相手に驚きつつ、ハレルヤがヒョイッと避ける。

「テメ…ソーマ・ピーリスかよ。」
「そうだ!!」

 返事と同時にまた手拳を繰り出す。

 ヒョイッ、ヒョイッと避けてはいるが、ハレルヤはだんだんイラついてきた。

「…ふざけてんじゃねーぞ、ソーマ。女だからって手加減して貰えると思うなよ!?」
「そんなもの!こちらから願い下げだ!!」
「そうかよ! よく言った!女あ!」

 拳を作り、殴りかかろうとしたところにアレルヤが止めに入った。

『やめてよ!!マリーを傷つけたらただじゃ済まさないからね!!』
「るせー!コイツが手加減いらねーって言ったんじゃねーか!」
『とにかく!!マリーに暴力振るうのだけは絶対に許さない!!』
「コイツはソーマだ!」
『どっちでも同じだよ!!彼女の体だって一つなんだから!!』
「…ったく~…、しゃーねーなぁ~…。」

 ハレルヤとしても彼女がマリーであろうとソーマであろうと、傷つけるのは本意ではない。
 仕方なく逃げに転じた。

「待てっ! 逃げるのか!?臆病者!」
「アレルヤに言えってんだよ。」

 艦内を掛け回る二人は追いかけっこをする子供の様。
 皆が呆然と見送る。

「…ああ、ハレルヤ・ハプティズムとソーマ・ピーリスか。」
「…そのようだな。」

 ティエリアと刹那が大して興味もなさそうにそう呟いた。

「…しょうがない子たちねぇ…。」
「まあ、たまにはあの二人もはしゃぎたいんじゃないでしょうか。」
「ダブルでラブラブですぅ~♪」
「ったく…見せつけんなっての。」

 あちこち走りまわり、流石にハレルヤも疲れたのか閉じこもろうと自室に入った。

「そうはさせるかっ!」

 ドアを閉めようとした瞬間、ソーマは脳量子波を駆使してハレルヤに干渉する。
 一瞬だったがハレルヤは動きを止めた。
 その隙に部屋に入り込む。

「テメっ!ソーマっ!」
「覚悟はいいか!ハレルヤ・ハプティズム!」

 部屋に入るなり、ソーマはハレルヤにダイブするように襲いかかった。
 防御態勢を取る間もなくハレルヤは押し倒される。
 馬乗りになり、胸ぐらを掴んで引き起こすとハレルヤは後頭部を手で押さえ、顔を顰めた。

「…ってぇ~!…マジいい加減にしねーと…。」

 イラついて、もうアレルヤの制止なんか知るかっ、と思ったその時。

「!?」

 ソーマがハレルヤにキスをした。

『!?』『ソーマ!?』

 目を見開いているハレルヤを勝気な目で見返し、ソーマはそっと唇を離す。

「…おめぇ…。」
「お前はこのくらい手に負えない女の方が好みだろう。」

 フッとハレルヤは笑った。

「分かってんじゃねーか。いい度胸だぜ。」

 今度はハレルヤからキスをして、そのまま抱きあげてベッドに連れて行く。
 ソーマはされるまま身を任せた。

 横たわり、もう一度深くキスをしていると。

『…あ…あの…ハレルヤ?』

 ハレルヤが顔を上げて宙を見た。
 おずおずとしたアレルヤの声が聞こえる。

『まさか…するつもりじゃないよね?』
「はあ? 男と女が二人っきりでベッドに居たらやるこたー決まってんだろーが!」
『まままま待ってよ!!』
「うるせーな、黙ってろ!」
『だって!僕達、まだ、なんだよ!?』
「はあ? お初は自分たちでヤりてーって? 我儘ぬかしてんじゃねーよ。この間俺が邪魔した時は散々文句言いやがったくせに、俺達の邪魔するってのか?」
『だ、だって!』
「お前は黙って見てりゃいいんだ。な。」

 ニッと笑ってソーマに同意を求めると、彼女はきりっとしたまま「問題ない。」と答えた。
 ハレルヤは気を良くしてソーマの首筋に唇を当てる。

『ちょっとー!!』『待ってー!!』

 マリーも一緒になって声を上げ一種の混乱状態になると、部屋の中に脳量子波が充満して四人で会話状態に。

「だって、君が邪魔をしなければ、僕たちあの時…。」(アレ)
「ヤってたのにってか?」(ハレ)
「ヤってたって言わないでよ!」(アレ)

「ソーマ!私達のこと応援してくれるんじゃなかったの?」(マリ)
「ああいう時は手伝ってやると言っただけだ。私は私のしたいようにする。」(ソマ)

「とにかく!ちょっと待ってよ!納得できないよ!僕達!」(アレ)
「ええ、納得できないわ!」(マリ)

「うるせぇな。これは俺とソーマの問題だろうが。お前達はお前たちでヤりゃあいいじゃねぇか。」(ハレ)
「ハレルヤに同意だ。」(ソマ)

「だって!初めてなのよ!?」(マリ)
「私も初めてだ。」(ソマ)

「ほら見ろ。どっちかが先になるしかねーだろうが。早いもん勝ちだ。」(ハレ)
「そうだな。文句を言うくらいならあの時しておけばよかったんだ。」(ソマ)

「だからあれはハレルヤの所為で!!」(アレ)

「ハレルヤの言葉を無視できなかったアレルヤの責任だな。」(ソマ)
「お、いい事言うじゃねーか、ソーマ。」(ハレ)

 よし、と二人は頷き合って抱き合う。

『待ってよー!!』
『いや~!!』







「思いっきりヤるから覚悟しろよ?ソーマ。」
「望むところだ。かかってこい。」

『そんなムードのない~~~~~~』×2



 その後の事はご想像にお任せします。




fin.
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