蟻ニル
フェイント
夜半過ぎになっても帰らない恋人を待ちくたびれて、ニールはベッドに入った。
特に何があるわけでもなし、多分アリーはどこかで飲んでいるのだろう。明日は休みだからと少し待ってはみたが、興味のあるTV番組も終わってしまったし、いつ帰るとも知らぬ相手を待つには暇すぎた。
うとうととし始めてすぐ、ドアの音が聞こえた。半分眠りに入った状態で恋人の帰りを把握するものの、覚醒するだけの気力はなく、ニールは眠りに落ちていきそうになる。
ガチャ。
部屋のドアの音にもピクリと指が動いただけだ。気配が近付くのさえ気づかない。
「なんだぁ?もう寝ちまったのか?」
声が降ってきたかと思えば同時に体に重さが加わる。
「…ン…アリー?」
やっと薄目を開けて相手を見れば、アリーはいつになく酔っぱらいの風体だ。珍しく飲みすぎたらしい。
「寝ちまうのかよ。」
言いながら、軽いキスを落とす。
そのキスを、はむっと噛むように受けて、ニールは薄目のまま笑みを見せた。
「あんたがその気なら、付き合うけど?」
チュッとまたキス。
「その気ってどの気だよ。」
ニッと笑った顔は、悪戯めいたいつものもの。
どう返すのが正解か一瞬考えてから、商売女のようなセリフを言っては興ざめだろうとはっきりと返す。
「やるんならって話。嫌なら寝るけど?」
「寝かせねえ。」
また唇をふさがれ、体には武骨な手が這う。その心地よさに身を任せていると、あっさりと着ているものをはぎ取られてしまった。
「…アリー…。」
名を呼んで抱きつこうと腕を回すと。
途端、アリーは隣に転がって寝息を立て始めた。
「…え…?…おい、アリー?」
呼んでももう眠りに落ちている。
「おいこらっ!」
体を起こして耳元で大きな声を出しても、唸るだけで起きる気配はない。
「てめ…、人を裸にしといてそれはないだろ!?」
ペシンと頭を叩く。いつもなら噛みつく勢いで怒るところだろうに、無反応だ。
「ちくしょう、どうしてくれるんだよ。」
ぷーっと膨れて、それでも今更起き出してパジャマを着なおすのも面倒で、ニールはそのままアリーにくっつくようにして眠った。
朝の光と体への愛撫でニールは目を覚ました。
「ン…もうっ…やめろよ、朝っぱらから。」
アリーの体を押し返そうとすると、目の前にはニヤアっとした嬉しそうな顔がある。
「こんな恰好で誘っといて、やめろはねえだろうが。」
「誘ってねー!!」
「そんなに欲求不満だったのか?」
「ちげーよっ!あんたが脱がせたんだろ!?」
「知らねーな。」
知らないふりをしているだけかもしれないが、忘れているとしたらまた腹立たしい。
簡単に落ちてやる気になれず、ニールはじたばたと抵抗した。
「やめろっ!」
「やだね。」
もう圧し掛かられて逃げようがない中での抵抗は遊びみたいなもの。アリーは手慣れたもので、ニールを大人しくさせる方法は心得ている。
ぷーっと膨れたニールの顔を、またアリーは楽しげに見下ろした。
fin.
夜半過ぎになっても帰らない恋人を待ちくたびれて、ニールはベッドに入った。
特に何があるわけでもなし、多分アリーはどこかで飲んでいるのだろう。明日は休みだからと少し待ってはみたが、興味のあるTV番組も終わってしまったし、いつ帰るとも知らぬ相手を待つには暇すぎた。
うとうととし始めてすぐ、ドアの音が聞こえた。半分眠りに入った状態で恋人の帰りを把握するものの、覚醒するだけの気力はなく、ニールは眠りに落ちていきそうになる。
ガチャ。
部屋のドアの音にもピクリと指が動いただけだ。気配が近付くのさえ気づかない。
「なんだぁ?もう寝ちまったのか?」
声が降ってきたかと思えば同時に体に重さが加わる。
「…ン…アリー?」
やっと薄目を開けて相手を見れば、アリーはいつになく酔っぱらいの風体だ。珍しく飲みすぎたらしい。
「寝ちまうのかよ。」
言いながら、軽いキスを落とす。
そのキスを、はむっと噛むように受けて、ニールは薄目のまま笑みを見せた。
「あんたがその気なら、付き合うけど?」
チュッとまたキス。
「その気ってどの気だよ。」
ニッと笑った顔は、悪戯めいたいつものもの。
どう返すのが正解か一瞬考えてから、商売女のようなセリフを言っては興ざめだろうとはっきりと返す。
「やるんならって話。嫌なら寝るけど?」
「寝かせねえ。」
また唇をふさがれ、体には武骨な手が這う。その心地よさに身を任せていると、あっさりと着ているものをはぎ取られてしまった。
「…アリー…。」
名を呼んで抱きつこうと腕を回すと。
途端、アリーは隣に転がって寝息を立て始めた。
「…え…?…おい、アリー?」
呼んでももう眠りに落ちている。
「おいこらっ!」
体を起こして耳元で大きな声を出しても、唸るだけで起きる気配はない。
「てめ…、人を裸にしといてそれはないだろ!?」
ペシンと頭を叩く。いつもなら噛みつく勢いで怒るところだろうに、無反応だ。
「ちくしょう、どうしてくれるんだよ。」
ぷーっと膨れて、それでも今更起き出してパジャマを着なおすのも面倒で、ニールはそのままアリーにくっつくようにして眠った。
朝の光と体への愛撫でニールは目を覚ました。
「ン…もうっ…やめろよ、朝っぱらから。」
アリーの体を押し返そうとすると、目の前にはニヤアっとした嬉しそうな顔がある。
「こんな恰好で誘っといて、やめろはねえだろうが。」
「誘ってねー!!」
「そんなに欲求不満だったのか?」
「ちげーよっ!あんたが脱がせたんだろ!?」
「知らねーな。」
知らないふりをしているだけかもしれないが、忘れているとしたらまた腹立たしい。
簡単に落ちてやる気になれず、ニールはじたばたと抵抗した。
「やめろっ!」
「やだね。」
もう圧し掛かられて逃げようがない中での抵抗は遊びみたいなもの。アリーは手慣れたもので、ニールを大人しくさせる方法は心得ている。
ぷーっと膨れたニールの顔を、またアリーは楽しげに見下ろした。
fin.
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