ショートショート
(ギャグ・グラハム×エクシア・バレンタイン企画)
チョコよりも君が欲しい
「バレンタインだねぇ。あてはあるかい?グラハム。」
ビリーがそう聞いてくるまで、私はバレンタインのことなどすっかり忘れていた。
「…そうか、バレンタイン…か。」
「その様子じゃあ、あてはなさそうだねぇ。僕と同じだ。」
ビリーは苦笑いをして見せたが、お陰で私はいい事を思い付いた。
「あてがないなら作ればいいじゃないか。ビリー、出撃準備だ。」
「出…撃…するのかい?」
「ああ、愛しの君に会いに行ってくる。」
やはりビリーは流石だ。
私のことを、よく心得てくれている。
私が出撃だと言ったら、すぐにガンダムの出没ポイントを予測してくれた。
そして、見つけた。
しかも、最初に出会った奴だ。
「今日は逃しはしないぞ、ガンダム!」
この位置ならギリギリ取り付けるっ!
「でぃやあー!!」
凄まじい衝撃音と共に、私のフラッグはガンダムに接触した。
接触回線で呼び掛ける。
「ガンダム! 今日はどうしても言わなくてはならないことがあって来た!」
返事がない。
しかし、こちらが武器を出してないからか、攻撃の様子もない。
「聞こえているか!ガンダム!」
『こちらに話はない。戦う意思がないなら帰れ。』
なんと!
子供の声じゃないか! しかも可愛らしげな少年の!
こんな子供の操縦で私を翻弄していたのか、ガンダム!
「素敵だ…。」
『は?』
あ、いかんいかん。目的を忘れるところだった。
「今日が何の日か、知っているか?」
『…知らない。』
「今日はバレンタイン! 想いを寄せる男性にチョコを贈る日だ!」
『それが…どうかしたのか…?』
「だから、それを貰い受けに来た!」
『…どうして…?』
どうしてって、それはもう、
「私が男でチョコを受けとる側だからだが。」
『…さっき、想いを寄せる相手、と言わなかったか?』
「私は君に心奪われた。私たちの間には充分過ぎる程の想いがあるぞ!」
『こちらにはないが…』
「今日出会えたのは運命だ!」
『…どちらにしても…、チョコは持ってない。帰れ。』
「チョコなど無くても構わない! 私は君が欲しい!!」
おっと、いけない。あまりの興奮で誤解を招く言い方になってしまった。
『……声で分かると思うが、オレは男だ。』
「失礼した。いつもこのコクピットからガンダムに語り掛けているのでね。つい、パイロット君の存在を忘れていた。」
『…今まで誰と話していると思っていたんだ…』
それはもちろん、
「ガンダムに決まっている!」
『ガンダムに会話機能は…』
ん?どうした?
『…つまりさっきのは、この機体が欲しい、ということか?』
「ああ! その通…ぅおあっ!!」
危ないっ!
「酷いじゃないか、いきなりビームサーベルを突き立てたりして。」
もう少しで愛機を貫かれるところだった。
「っと、パイロットとしては当然の行動か…。」
避けるために離れてしまった。
“…お前、変。わけわかんない。”
あ、光通信。
光通信でこの口調。
なんとお茶目な。
「よし、私も光通信で返そう。」
“つれないな。初めて会った時はあんな鮮烈なアプローチをしていったのに。”
“身に覚えが無いが。”
“イナクトを倒した時だ。あれで私は君に心奪われた。責任を取ってもらいたいな。”
おお、なんだか恋人とのメール交換のようだ。
新鮮じゃないか。
ガンダム。
“…責任?”
“そうだ。責任を取って、私の物になれ。”
“やだ。”
か、可愛い。
“ではパイロット君、キミがその機体を手放すのが惜しいと言うなら、キミも込みでこの私が貰い受けよう。”
どう返ってくるだろう。
“…バカ?”
おお!
なんと端的な!
「素敵だ。」
この感動を伝えるには、もうこれしかあるまい。
“さあ!思い切って私の胸に飛び込んで来たまえ!”
「ああぁ~!!待て! 返事も無しにサヨナラはないんじゃないか!?」
折角、フラッグの両腕を広げて受け止め体制バッチリにしたのに…。
「もう、あんな彼方に…。…素敵なスピードだ。」
やはりフラれてしまったな。
分かってはいたが。
しかし…、
「この上ない収穫を得た気分だ。これはホワイトデーにお返しをせねばなるまい。」
楽しみにしていてくれ、ガンダム。
必ず馳せ参ぜよう。
fin.
チョコよりも君が欲しい
「バレンタインだねぇ。あてはあるかい?グラハム。」
ビリーがそう聞いてくるまで、私はバレンタインのことなどすっかり忘れていた。
「…そうか、バレンタイン…か。」
「その様子じゃあ、あてはなさそうだねぇ。僕と同じだ。」
ビリーは苦笑いをして見せたが、お陰で私はいい事を思い付いた。
「あてがないなら作ればいいじゃないか。ビリー、出撃準備だ。」
「出…撃…するのかい?」
「ああ、愛しの君に会いに行ってくる。」
やはりビリーは流石だ。
私のことを、よく心得てくれている。
私が出撃だと言ったら、すぐにガンダムの出没ポイントを予測してくれた。
そして、見つけた。
しかも、最初に出会った奴だ。
「今日は逃しはしないぞ、ガンダム!」
この位置ならギリギリ取り付けるっ!
「でぃやあー!!」
凄まじい衝撃音と共に、私のフラッグはガンダムに接触した。
接触回線で呼び掛ける。
「ガンダム! 今日はどうしても言わなくてはならないことがあって来た!」
返事がない。
しかし、こちらが武器を出してないからか、攻撃の様子もない。
「聞こえているか!ガンダム!」
『こちらに話はない。戦う意思がないなら帰れ。』
なんと!
子供の声じゃないか! しかも可愛らしげな少年の!
こんな子供の操縦で私を翻弄していたのか、ガンダム!
「素敵だ…。」
『は?』
あ、いかんいかん。目的を忘れるところだった。
「今日が何の日か、知っているか?」
『…知らない。』
「今日はバレンタイン! 想いを寄せる男性にチョコを贈る日だ!」
『それが…どうかしたのか…?』
「だから、それを貰い受けに来た!」
『…どうして…?』
どうしてって、それはもう、
「私が男でチョコを受けとる側だからだが。」
『…さっき、想いを寄せる相手、と言わなかったか?』
「私は君に心奪われた。私たちの間には充分過ぎる程の想いがあるぞ!」
『こちらにはないが…』
「今日出会えたのは運命だ!」
『…どちらにしても…、チョコは持ってない。帰れ。』
「チョコなど無くても構わない! 私は君が欲しい!!」
おっと、いけない。あまりの興奮で誤解を招く言い方になってしまった。
『……声で分かると思うが、オレは男だ。』
「失礼した。いつもこのコクピットからガンダムに語り掛けているのでね。つい、パイロット君の存在を忘れていた。」
『…今まで誰と話していると思っていたんだ…』
それはもちろん、
「ガンダムに決まっている!」
『ガンダムに会話機能は…』
ん?どうした?
『…つまりさっきのは、この機体が欲しい、ということか?』
「ああ! その通…ぅおあっ!!」
危ないっ!
「酷いじゃないか、いきなりビームサーベルを突き立てたりして。」
もう少しで愛機を貫かれるところだった。
「っと、パイロットとしては当然の行動か…。」
避けるために離れてしまった。
“…お前、変。わけわかんない。”
あ、光通信。
光通信でこの口調。
なんとお茶目な。
「よし、私も光通信で返そう。」
“つれないな。初めて会った時はあんな鮮烈なアプローチをしていったのに。”
“身に覚えが無いが。”
“イナクトを倒した時だ。あれで私は君に心奪われた。責任を取ってもらいたいな。”
おお、なんだか恋人とのメール交換のようだ。
新鮮じゃないか。
ガンダム。
“…責任?”
“そうだ。責任を取って、私の物になれ。”
“やだ。”
か、可愛い。
“ではパイロット君、キミがその機体を手放すのが惜しいと言うなら、キミも込みでこの私が貰い受けよう。”
どう返ってくるだろう。
“…バカ?”
おお!
なんと端的な!
「素敵だ。」
この感動を伝えるには、もうこれしかあるまい。
“さあ!思い切って私の胸に飛び込んで来たまえ!”
「ああぁ~!!待て! 返事も無しにサヨナラはないんじゃないか!?」
折角、フラッグの両腕を広げて受け止め体制バッチリにしたのに…。
「もう、あんな彼方に…。…素敵なスピードだ。」
やはりフラれてしまったな。
分かってはいたが。
しかし…、
「この上ない収穫を得た気分だ。これはホワイトデーにお返しをせねばなるまい。」
楽しみにしていてくれ、ガンダム。
必ず馳せ参ぜよう。
fin.