みかのり短編
南泉の憂鬱
「た、た、た、大変だにゃあ!!」
一文字の棟に南泉が駆け込んできた。
出かけている則宗以外の三人が何事かとそちらを見る。
毎度慌ただしい彼のことだから、また大したことは無いのだろうという面持ちだ。
南泉は「御前が!」と言ったところで勢い咳き込む。
「子猫よ、落ち着け。御前がどうかされたのか?」
些細な事柄ならともかく、則宗が関係しているとなれば話は別だ。山鳥毛は表情を曇らせた。
息を整えて、南泉は喋り出すが、
「ご…御前が…三日月と…」
そこで何故か言い淀む。
「どうした。」
日光がいぶかしげに問いかけると、南泉は意を決したように言った。
「せ…接吻してた…にゃ…」
ひといき間を置いて、姫鶴が「はあ?」と声を出した。勿論、「今更何を言っているんだ」という意味だ。
三人とも一様に頭に疑問符を浮かべる。
しばらく考えて、山鳥毛が思いついて言った。
「ああ、なるほど。確かに人目に付くような場所でそのような行動は控えていただかないと困るな。私から御前に進言しておこう。」
「そゆこと?だったら、みかちに言った方がいんでない?あのジーサン結構強引みたいだし。」
姫鶴の言に山鳥毛は「そうか」と納得をし、南泉に向き直る。
「私からお二人に言っておくから、心配するな。子猫よ。」
すると南泉は何故かワナワナと震え始めた。
「な…なんでみんなそんなに冷静なんだにゃ!?御前が!せ…接吻…してたんだにゃ!三日月を許していいわけないにゃ!!」
姫鶴が再び「はあ!?」と顔を顰めた。
「馬鹿にゃんこ。…お前、前も言ったけど…二人の関係は知ってるっしょ?」
「関係?にゃ?それは…恋仲だって聞いてるにゃ。」
「恋仲ってことは、そういうことするもんなの。わかる?」
「それは知ってるにゃ。恋仲の二人は恋愛感情が…にゃ!?」
そこで南泉は愕然とした。
「御前と…三日月が…恋…仲…?」
「だから、恋仲だって知ってたっしょ?」
「にゃ…でも…そんな…まさか…にゃ…」
「まさかも何も、前にお泊まりの迎えに行ったっしょ?」
「お…お泊まり…」
ふぎゃー!と威嚇する猫のように声を上げて、部屋の隅に掛けていき、縮こまった。
「嘘だにゃ!御前がそんな…そんな…いかがわしいことするわけないにゃ!したとしたら全部三日月が悪いに決まってる!にゃ!」
山鳥毛を筆頭に三人が代わる代わる話をしたが、どうやら南泉は二人が恋仲なのは知っていても、それが一般的な情事を伴う関係だとは思ってもみなかったようだ。則宗に対するある意味信仰めいた信頼が、恋慕だの情事だのを思考から排除していたという風だった。
三人の呆れたような反応を感じ取って、南泉はまた爪を立てるような威嚇をする。
「なんで知ってて放っておくにゃ!許しちゃダメだ!にゃ!」
「子猫、お前の気持ちも分かるが、すでにお二人は結ばれているのだから…」
シャーっと声を上げ、南泉はドドドドっと出口に走って行った。
「もうみんなは頼らないにゃ!!俺が御前を守るにゃー!!」
則宗が三条に向かって歩いていると、駆け足で追いかけてきた南泉が後ろから声を掛けた。
「御前!どこ行くにゃ!」
「なんだ子猫。暇なのか?」
「今から俺に付き合ってほしい、にゃ。」
「今から?…どうした、何かあったか?」
わざわざ追いかけてきたぐらいだから、急用なのだろうとしっかり立ち止まって南泉の方を向いた。
すると、南泉は「えーっと」と何を言うか考えている。
「…何かあったわけじゃないな?やっぱり、暇なんだろう。昼寝でもするか?」
ハッと思いついて「するにゃ!」と答える南泉。
「御前に膝枕してほしい、にゃ。」
則宗はパチクリと瞬きをして、笑った。
「どうした。そんなでは日光にどやされるぞ?」
「…だから、にゃ、見つからないところでお願いしたい、にゃ。」
「あっはっは。まあ、たまにはいいか。縁側は気持ちが良いしな。」
そう言って、則宗はまた三条に向けて歩き出す。
慌てて南泉が聞いた。
「ど、どこ行くにゃ?」
「向こうの縁側なら、滅多に日光はやってこないからな。見つからずに済むだろう?それに、茶菓子も食えるぞ。」
「あっちには三日月がいるにゃ!」
「気にするな。昼寝を邪魔するようなヤツじゃないぞ。」
三日月に会わせないようにしたいのに、かえってそちらに向かう理由を作ってしまった。南泉はしょんばりとしながら則宗の後ろに付いていった。
目的の場所には、三日月だけではなく鶯丸や今剣、前田と平野もいた。
「南泉も一緒か。丁度良い。今日はかりんとうを沢山貰ってな。皆で食べていたところだ。」
「まだまだありますから、好きなだけ食べていいですよ?」
「あまり食べ過ぎて夕餉に差し支えるのは困りますが。」
聞けば、もとは粟田口で貰ったものらしいのだが、あまりに量が多かったためあちこちに配っているのだと言う。
南泉は立ったまま、差し出されてひとつつまんで口に入れる。と、則宗は三日月の隣に座ろうとしていた。
慌てて二人の間に滑り込む。
「な、なんだ子猫。」
「膝枕してくれるって約束にゃ!」
「反対側でいいだろう?」
「こっち側が寝心地がいいにゃ!」
「しかたのない奴だな。」
動こうとしない南泉に呆れながら、仕方なく距離を取って座る。
すると、三日月が立ち上がった。
「俺がここに居ては狭いだろう。そちらに移るか。」
そう言って、南泉とは反対側の則宗の隣に陣取る。
南泉は「フシャーッ!!」と威嚇するが、則宗に畳んだままの扇子で頭を叩かれた。
「まったく、お前さん今日はどうしたんだ?」
今剣がのぞきに来て「甘えんぼさんですねぇ」と南泉の頭を撫でると、流石に恥ずかしくなって顔を赤らめながら寝たふりを始めた。
それ以来、南泉は則宗にべったりで、とにかく三日月を邪険に扱った。
間に入り込む。会話を邪魔する。なるべく会わせないように用事を作る。夜も約束させないように先に約束を取り付ける。時折則宗が怒ってみせるが、それでも変わらなかった。
おかげで三日月と則宗は会話もままならず、確実に二人で過ごす時間が減っていった。
そんなある日、縁側でひとり茶を飲んでいる三日月のところに前田がやってきた。
「今日は神楽が見頃ですよ?」
三日月は首をかしげる。神楽が見頃とはどういうことだろう。神楽を舞う予定などなかったはずだ。
すると前田が笑った。
「ごめんなさい、変な言い回しをして。伏せる必要はないですよね。御前さんが、子猫さんの枕になってるんですけど、神楽堂の丁度真ん前なんです。子猫さんはぐっすり眠っているようですから、行ってみてはどうですか?」
南泉が何故か二人の邪魔をしている、ということは既に皆の知るところとなっていた。表立って関わらないのは、双方を気遣ってのことだ。とくに南泉に関しては、その行動の理由が全く分かっていないため、下手にどちらかに付くことができない。
「そうか。気を遣わせてしまったな。ありがたく受け取らせて貰う。」
「いえ。ゆっくり寝ていてくれるといいですね。」
三日月は神楽堂へ向かった。
前田の言った通り、その真正面の縁側で則宗は南泉に膝枕を貸していた。そしてもう一方の脚は膝を立て、そこに頬杖を突いている。呆れたような表情だ。
南泉を起こさないように、一歩引いて立ち止まり、小さく声を掛けた。
「菊。」
則宗は苦笑いを返す。
「どうにもわからなくてな。対処のしようがない。困ったものだ。うちの奴らに聞きたいのだが、それもこやつがいると皆気を遣うようで何も教えてくれんのだ。」
「メンツに関わるのかも知れぬな。」
「子猫のメンツか。まあ、しばらくは付き合ってやろうと腹をくくったが、こう続いては…。」
そう言って南泉を見下ろす目は不快なものではなく、むしろ愛しい眼差しだった。彼がよく言う『歪さゆえの美しさ』を見ているのかも知れない。
とは言え、疲れているのも事実。息抜きは必要だろう。
「今夜、抜け出てこれるか?」
則宗はフフッと笑った。
「そうだな、なんとか抜け出してみるか。」
その返事を聞いて、三日月は「ではな」と後ずさった。南泉の瞼がピクッと動くのが見えたからだ。
「にゃっ!…誰か…いたか…?にゃ?」
「誰も居ないぞ?静かなものだ。」
「ここは穴場だにゃ。昼寝に持ってこいにゃ。」
「そうだな。神楽堂があるから遊ぶには不向きだし、景色も遮られる。それこそ神楽堂を使うとき以外はあまり寄りつかんだろうな。」
太陽が傾いて空が色づき始めた。
「夕餉前に一回りするぞ。」
見回りと称した軽い運動だ。
「うす、にゃ。」
その夜、夕餉も風呂も済ませてあとは寝るだけなのに、なかなか着替えようとしない則宗を見て、南泉はピンときて詰め寄った。
「御前。…なんで着替えないにゃ…」
「ああ、そろそろ着替えようと思っていたところだ。」
「なら、手伝うにゃ。」
「わかったわかった。もう少し本を読みたかったんだが…」
「夜更かしはダメにゃ。早く寝るにゃ。」
仕方なく部屋に入ると南泉がついてきた。
「子猫、お前さんはあっちだろう。」
「御前が寝るのを見届けるにゃ。」
「うはは。寝かしつける気か?子守のようだな。」
笑って見せても、南泉はジトッと則宗を見て訝しんでいる。
「着替えを手伝うにゃ。」
「お前さんだってまだ着替えていないじゃないか。僕はひとりで出来るから、お前さんももう休めよ。」
ささっと帯を解いて、寝間着に着替えると、南泉を押し出した。
「にゃ!」
「明日内番だろう?早く寝た方が良い。」
「御前が寝たら寝るにゃ。」
「はいはい。寝る寝る。おやすみ。」
そう言って今度こそ追い出してふすまを閉めた。布団に入って寝たふりをしていると、すーっとふすまが開いた。
間近に南泉の気配を感じて、パッと目を開ける。
「僕は寝るから、お前さんももう寝ろ。」
怒って見せると南泉は少しだけたじろいだ。
「う、うす。おやすみなさいっす。にゃ。」
やっと南泉が出て行ったことにホッとして、一刻やり過ごそうと則宗は目を瞑る。そのくらい経てば南泉も眠りにつくだろうと予想して。
少しうとうとしてしまい、ハッと目を開ける。このまま眠ってしまいそうだ。
則宗はなるべく音を立てないように起き出し、着替えてそっと居間に出た。
座卓の向こうに何か丸まっていることに気がついてギョッとする。南泉だ。あのあとそのままここで寝てしまったらしい。
眠っているのを確認して、そーっと通り抜ける。
無事部屋を出た、と思ったその時、裾を引かれた。
「!?」
「…御前…どこに行くにゃ…」
「南泉!?」
「なんで外に行こうとしてるにゃ!」
「ちょっと、散歩だ。眠れなくてな。」
「ならお伴するにゃ!」
しっかりと裾を握られていて逃げられない。
「お前さんは明日内番だろう!?早く寝ろ。」
「御前が寝たら寝るにゃ。」
「一回りしてきたら寝るから。離せ!」
掴まれた裾を解こうと膝の辺りを持ってグイッと引くが、南泉の手は当然緩まない。離せ、嫌だ、の応酬を繰り返していると、騒ぎに他の三人が起き出してきた。
「御前、お泊まり?」
姫鶴が悪気なく、あくびをしながらそう聞く。
そのせいで南泉は余計に逃すまいと手に力を込めた。
「ダメにゃ!行かせないにゃ!」
「姫鶴、余計なことを言うな。」
「あ、わり。ほら、にゃんこ、離しな。」
「嫌だにゃ!」
則宗が宥めようと「朝には帰ってくるから」と言うが、それには山鳥毛が苦笑した。
「御前、それは逆効果かと。」
「人間の子供でも数時間ぐらい我慢が利くだろうに。」
「少々事情が…いや、今はよしておきましょう。子猫よ。今日は諦めろ。」
「どら猫、その手を離せ。」
三人掛かりで南泉を捕まえ、手を離させる。
「裏切り者~!にゃ~!」
解放されたが、南泉の様子が気になって則宗は立ち去れずにいた。
「御前、どうぞ行ってください。子猫はこちらで宥めます。」
「そうか?…南泉、今日だけだ。許せ。」
そう言い置いて、外に出た。
則宗が出て行ったあと、南泉はむくれて丸まって、何を言われても噛みついていた。
「お頭も兄貴たちも裏切り者にゃ。もう知らないにゃ。」
「じゃさ、聞くけど?お前どしたいの?あの二人を別れさせるつもり?」
姫鶴が立ち上がって冷たく見下ろした。
「そうなれば一番いいにゃ。」
「ふーん?前にさ、みかちに脅し掛けたことあんだけど。御前泣かせたら潰すってさ。身内でも一緒だかんね?御前を泣かすようなことしたら、身内だって許さない。お前、あんだけ『愛』に拘ってる御前から、それを奪って平気なワケ?」
南泉はハッと顔を上げて首を横に振った。
「そ、そんなつもりはない、にゃ…」
「つもりはなくても、そゆことっしょ?」
「それは…」
ジッと俯いて考え込んでから、南泉は「でも」と顔を上げる。
「こうしてる間にも御前が…あんなことやこんなことされてると思うと!黙ってられないにゃ!」
パコンと姫鶴が南泉の頭を叩く。
「そゆことは考えないの!」
「子猫よ。」と山鳥毛がしゃがみ込んで声を掛けた。
「わたしたちも、別に平気なわけではないのだぞ?」
「にゃ?」
「平気ではないが、御前が幸せであれば、それには目を瞑ってもいいと思っているというだけだ。」
「平気じゃない…にゃ?」
「勿論だ。」と日光も頷く。
「前に御前が目を泣きはらして帰ってきたときには殴り込もうかと思ったものだ。」
それを聞いた南泉は驚愕の表情を見せる。
「あれ三日月のせいだったにゃ!?」
「違うから、…いや、違わないけど、みかち悪くないから。勘違いで殴り込むのやめてよ。」
姫鶴のツッコミに「うす」と返事をして、また考え込む。
「みんな、御前のこと、大事に思ってるにゃ?」
「当たり前っしょ?」
「そか…。…でも…心配にゃ…」
はいはい、と姫鶴が南泉の頭を撫でる。
「明日、迎え、行く?付き合ってもいけど?」
「行くにゃ!」
早朝、まだ明け切らぬうちに南泉は起きてきた。
「姫鶴の兄貴、朝だ、にゃ。迎え、行くにゃ。」
「…早すぎ。下手するとまだ最中かもよ?」
ガーンとショックを受けたような顔をして固まっている南泉の頭をポンと叩いて、姫鶴は起き出した。
「だらしないカッコはやめなよ。一文字としてピシッとしな。寝癖直す。服整える。歯磨きと洗顔。眠い顔するぐらいならまだ寝てな。」
たっぷり一刻かけて準備をさせ、頃合いだと姫鶴はGOサインを出した。
「何があっても騒がない。どっしり構えな。」
「う、うす。…にゃ…なにかある?にゃ?」
「お前、キス見ただけで騒いだっしょ。あれやめて。」
「キ!……う、うす。騒がないにゃ。」
ぐっと拳に力を入れて真顔を作る。キリッとした顔を見せた。
「よし。」
三日月の部屋に行くと、姫鶴が声を掛けた。
「御前のお迎えに来ましたー。みかち、起きてる?」
しばらくの静寂のあと、奥のふすまが開く音がして、すぐに障子が開けられた。
「姫鶴…に、南泉も、早いな。」
三日月が少し眠そうにしながらそう言った。
「ゴメンね、いろいろあって。御前、帰れる?」
うーんと三日月は思案する。
「まだ眠っているのでな、出来ればもう少し寝かせてやりたいのだが。」
「そか。…待ってもい?」
ははは、と小さめに笑って、仕方ない、と招き入れた。
そのやり取りが聞こえていたのか、閨から則宗が声を掛ける。
「…何だ…?迎えか?」
まだ眠そうな声だ。
三日月が振り返ってふすま越しに返事をした。
「ああ、姫鶴と南泉だ。どうする?」
ふわあ、うーん、とあくびと伸びをしているような声が聞こえる。
「わかった。着替えるから待ってくれ。」
それを聞いて、南泉が一歩踏み出した。
「手伝うにゃ。」
ふすまに手を掛けようとしたところで三日月が遮った。
「南泉よ。閨にはみだりに入らぬものだぞ?」
「御前の世話をするのは当然のこと、にゃ。」
「ここは俺の部屋だ。従ってもらおう。手伝いが要るなら俺が引き受ける。」
姫鶴の方を見て、「よいな?」と念を押し、三日月はふすまの向こうに入っていった。
「にゃんこ。大人しく待って。みかちが正しい。」
「う、うす。」
しばらくすると、三日月に促されて則宗が出てきた。
「おはようさん…二人とも、早いな…」
「にゃんこが早起きしちゃったからね。」
「うす。」
姫鶴は前回のことを思い出して、則宗の身体を気に掛ける。
「だいじょぶ?行けそ?」
則宗はあくびをしながら答えた。
「ああ…大丈夫…眠いだけだ…」
しょぼしょぼする目を擦りながら姫鶴と南泉の横を通り過ぎようとすると、それを追うように三日月が則宗の髪を一房掬った。
毛先に口付ける。
その様子を則宗はボーっと見て、どうしてそんなに遠慮がちなのだろうと眠い頭で考えたが分からないまま、いつものように抱きついてキスをした。
「じゃあな、三日月。またあとで。」
柔らかい笑みで則宗が言うと、三日月は少々戸惑いながら、返す。
「あ、ああ。あとでな。」
歩きながら外の様子を見て、則宗は「本当に早いな。」と呆れたように言う。
「眠そだね。」
「まだ一刻しか寝てないからな。戻ったらもう少し寝たい。…ああ、先に風呂を使いたい。」
「了解。…にしても、さっきのみかちの顔、面白かったね。」
ん?と則宗は首をかしげた。
「キスされてびっくりしてたっしょ?あんなに表情に出るの、珍しくね?」
姫鶴の言ったことを頭の中で反芻して、ようやく思い出す。
二人の前でキスをしてしまったことを。
「…すまない。…寝ぼけていた…」
「…うす。にゃ。」
事前に騒ぐなと言われていた南泉は、辛うじて騒ぎ出したいのを堪えていた。
to next?→
「た、た、た、大変だにゃあ!!」
一文字の棟に南泉が駆け込んできた。
出かけている則宗以外の三人が何事かとそちらを見る。
毎度慌ただしい彼のことだから、また大したことは無いのだろうという面持ちだ。
南泉は「御前が!」と言ったところで勢い咳き込む。
「子猫よ、落ち着け。御前がどうかされたのか?」
些細な事柄ならともかく、則宗が関係しているとなれば話は別だ。山鳥毛は表情を曇らせた。
息を整えて、南泉は喋り出すが、
「ご…御前が…三日月と…」
そこで何故か言い淀む。
「どうした。」
日光がいぶかしげに問いかけると、南泉は意を決したように言った。
「せ…接吻してた…にゃ…」
ひといき間を置いて、姫鶴が「はあ?」と声を出した。勿論、「今更何を言っているんだ」という意味だ。
三人とも一様に頭に疑問符を浮かべる。
しばらく考えて、山鳥毛が思いついて言った。
「ああ、なるほど。確かに人目に付くような場所でそのような行動は控えていただかないと困るな。私から御前に進言しておこう。」
「そゆこと?だったら、みかちに言った方がいんでない?あのジーサン結構強引みたいだし。」
姫鶴の言に山鳥毛は「そうか」と納得をし、南泉に向き直る。
「私からお二人に言っておくから、心配するな。子猫よ。」
すると南泉は何故かワナワナと震え始めた。
「な…なんでみんなそんなに冷静なんだにゃ!?御前が!せ…接吻…してたんだにゃ!三日月を許していいわけないにゃ!!」
姫鶴が再び「はあ!?」と顔を顰めた。
「馬鹿にゃんこ。…お前、前も言ったけど…二人の関係は知ってるっしょ?」
「関係?にゃ?それは…恋仲だって聞いてるにゃ。」
「恋仲ってことは、そういうことするもんなの。わかる?」
「それは知ってるにゃ。恋仲の二人は恋愛感情が…にゃ!?」
そこで南泉は愕然とした。
「御前と…三日月が…恋…仲…?」
「だから、恋仲だって知ってたっしょ?」
「にゃ…でも…そんな…まさか…にゃ…」
「まさかも何も、前にお泊まりの迎えに行ったっしょ?」
「お…お泊まり…」
ふぎゃー!と威嚇する猫のように声を上げて、部屋の隅に掛けていき、縮こまった。
「嘘だにゃ!御前がそんな…そんな…いかがわしいことするわけないにゃ!したとしたら全部三日月が悪いに決まってる!にゃ!」
山鳥毛を筆頭に三人が代わる代わる話をしたが、どうやら南泉は二人が恋仲なのは知っていても、それが一般的な情事を伴う関係だとは思ってもみなかったようだ。則宗に対するある意味信仰めいた信頼が、恋慕だの情事だのを思考から排除していたという風だった。
三人の呆れたような反応を感じ取って、南泉はまた爪を立てるような威嚇をする。
「なんで知ってて放っておくにゃ!許しちゃダメだ!にゃ!」
「子猫、お前の気持ちも分かるが、すでにお二人は結ばれているのだから…」
シャーっと声を上げ、南泉はドドドドっと出口に走って行った。
「もうみんなは頼らないにゃ!!俺が御前を守るにゃー!!」
則宗が三条に向かって歩いていると、駆け足で追いかけてきた南泉が後ろから声を掛けた。
「御前!どこ行くにゃ!」
「なんだ子猫。暇なのか?」
「今から俺に付き合ってほしい、にゃ。」
「今から?…どうした、何かあったか?」
わざわざ追いかけてきたぐらいだから、急用なのだろうとしっかり立ち止まって南泉の方を向いた。
すると、南泉は「えーっと」と何を言うか考えている。
「…何かあったわけじゃないな?やっぱり、暇なんだろう。昼寝でもするか?」
ハッと思いついて「するにゃ!」と答える南泉。
「御前に膝枕してほしい、にゃ。」
則宗はパチクリと瞬きをして、笑った。
「どうした。そんなでは日光にどやされるぞ?」
「…だから、にゃ、見つからないところでお願いしたい、にゃ。」
「あっはっは。まあ、たまにはいいか。縁側は気持ちが良いしな。」
そう言って、則宗はまた三条に向けて歩き出す。
慌てて南泉が聞いた。
「ど、どこ行くにゃ?」
「向こうの縁側なら、滅多に日光はやってこないからな。見つからずに済むだろう?それに、茶菓子も食えるぞ。」
「あっちには三日月がいるにゃ!」
「気にするな。昼寝を邪魔するようなヤツじゃないぞ。」
三日月に会わせないようにしたいのに、かえってそちらに向かう理由を作ってしまった。南泉はしょんばりとしながら則宗の後ろに付いていった。
目的の場所には、三日月だけではなく鶯丸や今剣、前田と平野もいた。
「南泉も一緒か。丁度良い。今日はかりんとうを沢山貰ってな。皆で食べていたところだ。」
「まだまだありますから、好きなだけ食べていいですよ?」
「あまり食べ過ぎて夕餉に差し支えるのは困りますが。」
聞けば、もとは粟田口で貰ったものらしいのだが、あまりに量が多かったためあちこちに配っているのだと言う。
南泉は立ったまま、差し出されてひとつつまんで口に入れる。と、則宗は三日月の隣に座ろうとしていた。
慌てて二人の間に滑り込む。
「な、なんだ子猫。」
「膝枕してくれるって約束にゃ!」
「反対側でいいだろう?」
「こっち側が寝心地がいいにゃ!」
「しかたのない奴だな。」
動こうとしない南泉に呆れながら、仕方なく距離を取って座る。
すると、三日月が立ち上がった。
「俺がここに居ては狭いだろう。そちらに移るか。」
そう言って、南泉とは反対側の則宗の隣に陣取る。
南泉は「フシャーッ!!」と威嚇するが、則宗に畳んだままの扇子で頭を叩かれた。
「まったく、お前さん今日はどうしたんだ?」
今剣がのぞきに来て「甘えんぼさんですねぇ」と南泉の頭を撫でると、流石に恥ずかしくなって顔を赤らめながら寝たふりを始めた。
それ以来、南泉は則宗にべったりで、とにかく三日月を邪険に扱った。
間に入り込む。会話を邪魔する。なるべく会わせないように用事を作る。夜も約束させないように先に約束を取り付ける。時折則宗が怒ってみせるが、それでも変わらなかった。
おかげで三日月と則宗は会話もままならず、確実に二人で過ごす時間が減っていった。
そんなある日、縁側でひとり茶を飲んでいる三日月のところに前田がやってきた。
「今日は神楽が見頃ですよ?」
三日月は首をかしげる。神楽が見頃とはどういうことだろう。神楽を舞う予定などなかったはずだ。
すると前田が笑った。
「ごめんなさい、変な言い回しをして。伏せる必要はないですよね。御前さんが、子猫さんの枕になってるんですけど、神楽堂の丁度真ん前なんです。子猫さんはぐっすり眠っているようですから、行ってみてはどうですか?」
南泉が何故か二人の邪魔をしている、ということは既に皆の知るところとなっていた。表立って関わらないのは、双方を気遣ってのことだ。とくに南泉に関しては、その行動の理由が全く分かっていないため、下手にどちらかに付くことができない。
「そうか。気を遣わせてしまったな。ありがたく受け取らせて貰う。」
「いえ。ゆっくり寝ていてくれるといいですね。」
三日月は神楽堂へ向かった。
前田の言った通り、その真正面の縁側で則宗は南泉に膝枕を貸していた。そしてもう一方の脚は膝を立て、そこに頬杖を突いている。呆れたような表情だ。
南泉を起こさないように、一歩引いて立ち止まり、小さく声を掛けた。
「菊。」
則宗は苦笑いを返す。
「どうにもわからなくてな。対処のしようがない。困ったものだ。うちの奴らに聞きたいのだが、それもこやつがいると皆気を遣うようで何も教えてくれんのだ。」
「メンツに関わるのかも知れぬな。」
「子猫のメンツか。まあ、しばらくは付き合ってやろうと腹をくくったが、こう続いては…。」
そう言って南泉を見下ろす目は不快なものではなく、むしろ愛しい眼差しだった。彼がよく言う『歪さゆえの美しさ』を見ているのかも知れない。
とは言え、疲れているのも事実。息抜きは必要だろう。
「今夜、抜け出てこれるか?」
則宗はフフッと笑った。
「そうだな、なんとか抜け出してみるか。」
その返事を聞いて、三日月は「ではな」と後ずさった。南泉の瞼がピクッと動くのが見えたからだ。
「にゃっ!…誰か…いたか…?にゃ?」
「誰も居ないぞ?静かなものだ。」
「ここは穴場だにゃ。昼寝に持ってこいにゃ。」
「そうだな。神楽堂があるから遊ぶには不向きだし、景色も遮られる。それこそ神楽堂を使うとき以外はあまり寄りつかんだろうな。」
太陽が傾いて空が色づき始めた。
「夕餉前に一回りするぞ。」
見回りと称した軽い運動だ。
「うす、にゃ。」
その夜、夕餉も風呂も済ませてあとは寝るだけなのに、なかなか着替えようとしない則宗を見て、南泉はピンときて詰め寄った。
「御前。…なんで着替えないにゃ…」
「ああ、そろそろ着替えようと思っていたところだ。」
「なら、手伝うにゃ。」
「わかったわかった。もう少し本を読みたかったんだが…」
「夜更かしはダメにゃ。早く寝るにゃ。」
仕方なく部屋に入ると南泉がついてきた。
「子猫、お前さんはあっちだろう。」
「御前が寝るのを見届けるにゃ。」
「うはは。寝かしつける気か?子守のようだな。」
笑って見せても、南泉はジトッと則宗を見て訝しんでいる。
「着替えを手伝うにゃ。」
「お前さんだってまだ着替えていないじゃないか。僕はひとりで出来るから、お前さんももう休めよ。」
ささっと帯を解いて、寝間着に着替えると、南泉を押し出した。
「にゃ!」
「明日内番だろう?早く寝た方が良い。」
「御前が寝たら寝るにゃ。」
「はいはい。寝る寝る。おやすみ。」
そう言って今度こそ追い出してふすまを閉めた。布団に入って寝たふりをしていると、すーっとふすまが開いた。
間近に南泉の気配を感じて、パッと目を開ける。
「僕は寝るから、お前さんももう寝ろ。」
怒って見せると南泉は少しだけたじろいだ。
「う、うす。おやすみなさいっす。にゃ。」
やっと南泉が出て行ったことにホッとして、一刻やり過ごそうと則宗は目を瞑る。そのくらい経てば南泉も眠りにつくだろうと予想して。
少しうとうとしてしまい、ハッと目を開ける。このまま眠ってしまいそうだ。
則宗はなるべく音を立てないように起き出し、着替えてそっと居間に出た。
座卓の向こうに何か丸まっていることに気がついてギョッとする。南泉だ。あのあとそのままここで寝てしまったらしい。
眠っているのを確認して、そーっと通り抜ける。
無事部屋を出た、と思ったその時、裾を引かれた。
「!?」
「…御前…どこに行くにゃ…」
「南泉!?」
「なんで外に行こうとしてるにゃ!」
「ちょっと、散歩だ。眠れなくてな。」
「ならお伴するにゃ!」
しっかりと裾を握られていて逃げられない。
「お前さんは明日内番だろう!?早く寝ろ。」
「御前が寝たら寝るにゃ。」
「一回りしてきたら寝るから。離せ!」
掴まれた裾を解こうと膝の辺りを持ってグイッと引くが、南泉の手は当然緩まない。離せ、嫌だ、の応酬を繰り返していると、騒ぎに他の三人が起き出してきた。
「御前、お泊まり?」
姫鶴が悪気なく、あくびをしながらそう聞く。
そのせいで南泉は余計に逃すまいと手に力を込めた。
「ダメにゃ!行かせないにゃ!」
「姫鶴、余計なことを言うな。」
「あ、わり。ほら、にゃんこ、離しな。」
「嫌だにゃ!」
則宗が宥めようと「朝には帰ってくるから」と言うが、それには山鳥毛が苦笑した。
「御前、それは逆効果かと。」
「人間の子供でも数時間ぐらい我慢が利くだろうに。」
「少々事情が…いや、今はよしておきましょう。子猫よ。今日は諦めろ。」
「どら猫、その手を離せ。」
三人掛かりで南泉を捕まえ、手を離させる。
「裏切り者~!にゃ~!」
解放されたが、南泉の様子が気になって則宗は立ち去れずにいた。
「御前、どうぞ行ってください。子猫はこちらで宥めます。」
「そうか?…南泉、今日だけだ。許せ。」
そう言い置いて、外に出た。
則宗が出て行ったあと、南泉はむくれて丸まって、何を言われても噛みついていた。
「お頭も兄貴たちも裏切り者にゃ。もう知らないにゃ。」
「じゃさ、聞くけど?お前どしたいの?あの二人を別れさせるつもり?」
姫鶴が立ち上がって冷たく見下ろした。
「そうなれば一番いいにゃ。」
「ふーん?前にさ、みかちに脅し掛けたことあんだけど。御前泣かせたら潰すってさ。身内でも一緒だかんね?御前を泣かすようなことしたら、身内だって許さない。お前、あんだけ『愛』に拘ってる御前から、それを奪って平気なワケ?」
南泉はハッと顔を上げて首を横に振った。
「そ、そんなつもりはない、にゃ…」
「つもりはなくても、そゆことっしょ?」
「それは…」
ジッと俯いて考え込んでから、南泉は「でも」と顔を上げる。
「こうしてる間にも御前が…あんなことやこんなことされてると思うと!黙ってられないにゃ!」
パコンと姫鶴が南泉の頭を叩く。
「そゆことは考えないの!」
「子猫よ。」と山鳥毛がしゃがみ込んで声を掛けた。
「わたしたちも、別に平気なわけではないのだぞ?」
「にゃ?」
「平気ではないが、御前が幸せであれば、それには目を瞑ってもいいと思っているというだけだ。」
「平気じゃない…にゃ?」
「勿論だ。」と日光も頷く。
「前に御前が目を泣きはらして帰ってきたときには殴り込もうかと思ったものだ。」
それを聞いた南泉は驚愕の表情を見せる。
「あれ三日月のせいだったにゃ!?」
「違うから、…いや、違わないけど、みかち悪くないから。勘違いで殴り込むのやめてよ。」
姫鶴のツッコミに「うす」と返事をして、また考え込む。
「みんな、御前のこと、大事に思ってるにゃ?」
「当たり前っしょ?」
「そか…。…でも…心配にゃ…」
はいはい、と姫鶴が南泉の頭を撫でる。
「明日、迎え、行く?付き合ってもいけど?」
「行くにゃ!」
早朝、まだ明け切らぬうちに南泉は起きてきた。
「姫鶴の兄貴、朝だ、にゃ。迎え、行くにゃ。」
「…早すぎ。下手するとまだ最中かもよ?」
ガーンとショックを受けたような顔をして固まっている南泉の頭をポンと叩いて、姫鶴は起き出した。
「だらしないカッコはやめなよ。一文字としてピシッとしな。寝癖直す。服整える。歯磨きと洗顔。眠い顔するぐらいならまだ寝てな。」
たっぷり一刻かけて準備をさせ、頃合いだと姫鶴はGOサインを出した。
「何があっても騒がない。どっしり構えな。」
「う、うす。…にゃ…なにかある?にゃ?」
「お前、キス見ただけで騒いだっしょ。あれやめて。」
「キ!……う、うす。騒がないにゃ。」
ぐっと拳に力を入れて真顔を作る。キリッとした顔を見せた。
「よし。」
三日月の部屋に行くと、姫鶴が声を掛けた。
「御前のお迎えに来ましたー。みかち、起きてる?」
しばらくの静寂のあと、奥のふすまが開く音がして、すぐに障子が開けられた。
「姫鶴…に、南泉も、早いな。」
三日月が少し眠そうにしながらそう言った。
「ゴメンね、いろいろあって。御前、帰れる?」
うーんと三日月は思案する。
「まだ眠っているのでな、出来ればもう少し寝かせてやりたいのだが。」
「そか。…待ってもい?」
ははは、と小さめに笑って、仕方ない、と招き入れた。
そのやり取りが聞こえていたのか、閨から則宗が声を掛ける。
「…何だ…?迎えか?」
まだ眠そうな声だ。
三日月が振り返ってふすま越しに返事をした。
「ああ、姫鶴と南泉だ。どうする?」
ふわあ、うーん、とあくびと伸びをしているような声が聞こえる。
「わかった。着替えるから待ってくれ。」
それを聞いて、南泉が一歩踏み出した。
「手伝うにゃ。」
ふすまに手を掛けようとしたところで三日月が遮った。
「南泉よ。閨にはみだりに入らぬものだぞ?」
「御前の世話をするのは当然のこと、にゃ。」
「ここは俺の部屋だ。従ってもらおう。手伝いが要るなら俺が引き受ける。」
姫鶴の方を見て、「よいな?」と念を押し、三日月はふすまの向こうに入っていった。
「にゃんこ。大人しく待って。みかちが正しい。」
「う、うす。」
しばらくすると、三日月に促されて則宗が出てきた。
「おはようさん…二人とも、早いな…」
「にゃんこが早起きしちゃったからね。」
「うす。」
姫鶴は前回のことを思い出して、則宗の身体を気に掛ける。
「だいじょぶ?行けそ?」
則宗はあくびをしながら答えた。
「ああ…大丈夫…眠いだけだ…」
しょぼしょぼする目を擦りながら姫鶴と南泉の横を通り過ぎようとすると、それを追うように三日月が則宗の髪を一房掬った。
毛先に口付ける。
その様子を則宗はボーっと見て、どうしてそんなに遠慮がちなのだろうと眠い頭で考えたが分からないまま、いつものように抱きついてキスをした。
「じゃあな、三日月。またあとで。」
柔らかい笑みで則宗が言うと、三日月は少々戸惑いながら、返す。
「あ、ああ。あとでな。」
歩きながら外の様子を見て、則宗は「本当に早いな。」と呆れたように言う。
「眠そだね。」
「まだ一刻しか寝てないからな。戻ったらもう少し寝たい。…ああ、先に風呂を使いたい。」
「了解。…にしても、さっきのみかちの顔、面白かったね。」
ん?と則宗は首をかしげた。
「キスされてびっくりしてたっしょ?あんなに表情に出るの、珍しくね?」
姫鶴の言ったことを頭の中で反芻して、ようやく思い出す。
二人の前でキスをしてしまったことを。
「…すまない。…寝ぼけていた…」
「…うす。にゃ。」
事前に騒ぐなと言われていた南泉は、辛うじて騒ぎ出したいのを堪えていた。
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