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幻寂SS

こっそりと、彼のスウェットを拝借した。
眠りにつく時には互いに暖めあっていたので大変に心地よい温度であったが、夜中の三時に目覚めると外気はひんやりと小生に襲いかかった。すやすやと寝息をたてる彼を起こさぬようにそうっと布団から出て、足音をたてぬようにリビングに行くと昨日の彼が着ていた紺色のスウェットが椅子の背もたれに無造作にかけられていた。
自分の和装をしっかりと着込む気にはなれず、何の気なしにその布に手を伸ばした。いや、これは言い訳だ。本当のことを言うと、小生は自分の中にはっきりと下心を感じ取っていた。
おずおずといったポーズをとり、そわそわと、わくわくと頭から被る。すっぽりとその中に収まった小生は、彼に抱きしめられているようなふわふわとした気持ちになり寒さによって縮こまっていた血管がやんわりと拡がるのを感じる。拡張した血管にポンプが熱を送り込む。
随分と余ってしまった袖を掴み、頬が緩む。
さてそろそろ、貴方の隣に帰りましょう。貴方は目を覚ました時、こんな小生を見てどう感じるのでしょうね。可愛い、なんて思ってくれれば僥倖なのですが。
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