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●スターライト










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朝起きて、びっくりした。


寒っ…
なんて寒い日なんだ‼
雨は、まぁ…いまさらもう驚かない。
天気予報でも数日前から言ってたし。
ファンの子達だって、ライブの雨対策は慣れっこだろう。

雨じゃない。…問題は、すっごく寒いってこと。急な冷え込みは、誰だって体調を崩すキッカケになるでしょ。

今回のライブは、いつものライブ以上に、声のひとつひとつ。呼吸のひとつひとつ。
繊細な部分まで、すべて伝わるライブ。


( 気、ますます抜かないようにしよ。 )


出掛けにクローゼットからストールを取り出して、首元にクルリと巻く。
ジャケットを着込んで、ふっ…とひと息。


「さてと。」


行くとしますかね!










*・゜゚♪・*:.。.☆.。.:*:.。.♬ .。.:*・゜゚・*♪


会場に着くと、もう他のメンバーは集まっていて。和やかなムードはもう、このイノランチームの最大の強み!今日も良いライブになりそうと、今からわくわくする。





リハを終えて着替えを済ませて、俺は葉山君と控え室でいつもの談笑。とりとめのない話をして、葉山君の語り口でリラックスモード全開!
良いなぁ…葉山君。彼の人柄も、ピアノの旋律も。どうぞこれからもよろしくね!



そんな事を考えていたら、テーブルに置いた葉山君のスマホが、ピロリン♪と鳴った。
スマホに手を伸ばす葉山君を眺めていたら。



「あ。隆一さんだ」


俺の動きが止まる。


「え。隆?」

「はい。隆一さんからラインです。そっち、どう~?って」

無邪気に画面を俺に見せてくれる葉山君。
ありがと、ってそうじゃない。
俺には来ないの⁇
気づかなかっただけ?と思って、自分のスマホも確認してみるも…。


「…………。」

「…あの…イノランさん?」


なんか変な空気を察したのか、困惑気味に葉山君が俺を覗きこんでくる。


「…俺には来てないよ…?…」


俺の言葉で全てを理解したらしい葉山君は、慌てた様子でフォローしまくった。


「や…。違います!隆一さんはそんなんじゃないですって!イノランさんには、きっと俺のより長いメッセージを作成中なんですよ!」

「……」

「文字打ちの最中に誰か来ちゃったとか!」

「……」

「…電話かかってきちゃったとか」

「……」

「…充電……切れたとか…」

「……」

「…」



完全に黙ってしまった俺に、葉山君のフォローも小さくなって消えてしまった。
…ごめんね。大人気ない…。

でも、恋人だから。隆のこと大好きだから。
まず俺に…って思うの、間違ってないよね…。


「葉山君、ごめんね」

その内来るかもしんないし!と鼓舞する自分の声が、情けない声になっているのがわかる。
あ~ぁ…。カッコ悪い、俺。
隆の事になると、だめだ。


あまりのしょんぼり具合に、葉山君が明るい声で、コーヒー淹れましょうね!と席を立った。

その時。


pipipi♪

俺のスマホが鳴り響く。
ディスプレイには。


《隆一》‼


‼‼‼ 瞬時に俺から発された‼‼な空気に。
葉山君は、またまたすぐに全てを察したようで、ジェスチャーで、隣の控え室行ってます。と、にこやかに出て行った。

ありがとう…葉山君…




「隆ちゃんっ?」

『イノちゃんお疲れ様!今ヘイキ?』

「もちろん!電話ありがとう!めちゃくちゃ嬉しい‼」

『もぉさ、タイミング悪くって』

「え?」

『葉山っちにライン送って、イノちゃんに電話しようと思ってたらね?来客があって、マネージャーから電話かかって来ちゃうし、挙句充電切れちゃうし。…ごめんね、遅くなっちゃった。』


なんだ?なんかさっき聞いた話だぞ。
葉山君…すごいよ。
俺と隆との、長い付き合いの為せる技かな。


『イノちゃん?』

「聞いてるよ?そんな色んな事乗り越えて電話くれたんだね」

『大袈裟!』

「あはは!…でもホント嬉しい。もっと頑張れる。ありがと隆ちゃん」

『ふふ、あのね。今日さ、雨だし、寒いけどね?』

「?うん。」

『雨と冷たい空気のお陰で、ものすごく綺麗だと思うよ?』

「ん?」

『ステージからの夜景』

「!!」


隆の楽しそうな声が、耳元で響く。


『楽しんでね?』

「うん。ありがとう」


隆の声と、これから見られるだろう景色に、心地よく浸っていたら。

囁くように聞こえた。隆の甘い声。



『今夜イノちゃんの歌声が、星の光みたいにキラキラ輝きますように』

「ーーー…」

『…じゃあ、またね?』


どこか名残惜しげに告げられる、しばしの別れの言葉の後に。聞こえたのは、電話越しの隆からのキス。






通話が切れて、しばらく余韻に浸る。
スマホを持つ手が震えてる。
自分のことなのに可笑しくて。

顔が熱い。
嬉しくて…嬉しくて。



「俺ホントに、幸せだ…」







今宵。
最高のメンバーと、音楽と。星明りみたいな、キラキラした夜景と。
君からもらった、極上の愛。

これから始まるライブで、もっともっと幸せなエネルギーを大きくして。
君に届けるよ。


「隆ちゃんありがと、大好きだよ」




…そして





「音楽、最高!」






end



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