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「ねぇイノちゃん。あそこ、ほら見える?」

「ん?ーーーああ、ほんとだ」

「なんかちょっと嬉しいね」

「前の場所が名残惜しくもあるけど、同じものが近くにあるとな」

「ふふふっ、ね?」



俺たちは引っ越しをした。
前のところからすげぇ離れてるわけじゃないけど、新しい住所、新しい住まい。
それが新鮮で楽しみな反面、前の場所が名残惜しくもあり。
だってさ、隆とふたりでつくってきた思い出の地を離れたわけだから。

通い慣れた道も、気に入りの店も。
ふたり手を繋いで何度も潜った玄関も。
もう、この瞬間には思い出だから。

ーーーでも。




「ここにも同じコンビニ!」

「また通えるな」

「あのコンビニのプライベートブランドのお菓子も!」

「ははっ、また買ってあげる」

「うん!」


新しい部屋のバルコニーから見える、見慣れた看板。
変化の中に、ささやかな慣れ親しんだもの。
新しい場所にも継続していく俺達の思い出が、なんか嬉しい。



「手繋いで、」

「ぅん?」

「また夜散歩でさ」

「!」

「行こうな、隆」



クッと、隆の肩を抱いて。
新調したカーテンの陰で。

ここからまたふたりの物語を…と。

そんな誓いと願いを込めて。



俺は隆にキスをした。





end



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