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●揺れる(海)
…………
朝起きてすぐ、ベッドの上で隆が呟いた。
「イノちゃん。海、行きたい。」
「うん?いいよ、今日オフだし。行こうか」
「うん。」
簡単に朝食を済ませて、家をでる。
隆はなんだか、ぼんやりしてるから。
手を繋いで駐車場まで歩く。
…今朝は口数、少ないなぁ。
珍しい。いつもは朝からフル回転なのに。
何か、あったのかな。
助手席に隆を乗せて、いつもの海岸まで、車を走らせる。
いい天気だ。風も、穏やかで。
海岸に着いて、車を停める。
ここは、砂浜に駐車スペースが何となくある感じのところだから、気楽だ。
「隆ちゃん着いたよ」
「ん…」
隆は眠っていたみたいで、何度か目を瞬かせて、ゆっくり顔を上げた。
やっぱり、何かあったのかな。
いつもなら、眠るなんてもったいない、なんて言うのに。
「ありがとう、イノちゃん」
「ん、いいよ。行こ?」
「うん」
手を繋いで、砂浜を進む。
今日は潮風も、穏やかだ。
波打ち際で、隆が足を止める。
止めた途端に、堰を切ったように、溢れ出した。
涙。
「隆ちゃん、」
「っ…」
「…どうした?」
「……っ、ぅ」
「…隆ちゃん。」
「…っ…」
「俺に出来る事ね、こんくらいなんだけど」
後ろから、抱きしめる。
「ここにいるよ?」
your place .
end
.