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●常備薬
パキ、パリ。
…ごくん。
隆がキッチンで薬を飲んでた。
「どしたの?具合悪い?」
「うーん…。なんか頭痛くて。頭痛薬飲んだ」
ゆるゆると頭を振りながら、力無く言うから。おいで、と腕を広げると、擦り寄るように俺の懐におさまった隆。
しばらくモゾモゾと動いていたけど、収まりの良いところが見つかったようで、ピタリとくっ付いた。
(熱は…なさそうかな?)
抱きしめる身体は、いつもと同じように感じる。
「隆ちゃん、ベッド行く?少し寝たら?」
抱きしめたまま、腕の中の隆ちゃんに話かけたら。またゆるゆると頭を振った。
「ここがいい。」
「ん?」
「頭痛薬より、こっちのが、効く」
モゾ…と顔を上げて目が合う。
「イノちゃんの匂い」
隆の目と唇が、細い三日月のように弧を描く。
「治して?」
俺の方が、熱が出そうだ。
end
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