日記(fragment)のとても短いお話






7/7今夜はIRで七夕のお話。
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「一年に一度しか会えないとかさ、」

「ん?」

「ーーーありえねぇ。俺は無理だ」

「ああ、織姫と彦星ね」






夜の散歩道。
いつものコンビニの帰り。
俺はサイダーのアイスキャンディー、イノちゃんはコンビニのアイスコーヒー。(チョコ買ってくれたけど)

溶けないうちに、温くならないうちに。
歩きながら、アイスとコーヒー。






「ーーーエロいんですけど…」

「…ふぇ?」



なに?
急にガラリと変わった話題に、俺はぽかんと多分間抜けな受け答え。
(だって七夕のお話がなんで急にエロい…とかになるの⁈)

スティック状のアイスキャンディを口に入れたままイノちゃんの方を見たら、イノちゃんってばため息ついてんの。




「…はぁ、。」

「(む)…はんはほ?(何なの?)」

「だからエロいっての。隆ちゃん、そのアイスの食い方…」

「んむ?」

「誘ってんの?って思うだろ。いいの?帰ったら襲うよ?」

「ふぇ…ふぇぇぇ⁈」

「ほら!そーゆうのも!マジで俺以外の前ですんなよ⁈隆はいちいちいちいちする事が可愛いしエロいし目ぇ離せなくって困るんだよ!」

「っ…ふにぇ⁇」

「気が気じゃなくてひと時も離れらんねぇんだよ!」



ぴちょ。



あ、アイス…。
あんまりびっくり、あんぐり口開けてぽかんとしたら落っこちちゃった。
口の端からタラ…と溶けたサイダー味のアイスが溢れてるのがわかる。



「もぅ、変な事言うからアイス溢しちゃったじゃん!」

「俺もアイスコーヒー温くなったじゃんか」

「俺のせいじゃないもん!イノちゃんが、」

「なに」

「っっ変な事…」

「全然。変な事じゃないだろ?」

「ぇ、?」

「隆が好きって言っただけ」

「!」

「好きじゃなきゃこんな事言わないだろ」




イノちゃんは残ったコーヒーを一気に飲み干して。温…とかブツブツ言いつつ、俺に手を伸ばして夜道の真ん中で抱きしめた。





「帰るまでは我慢するよ」

「っっ…!」

「あ。今でもいいよ?」

「や、」

「ん?」

「やだ、よ。ーーーここじゃ、」

「はいはい。ーーーじゃあ、今はせめてさ」



そう言って、にっと笑ったイノちゃんは。
俺の唇から溢れたアイスを、ぺろ。
舐めてくれて。
もちろんそのまま終わりじゃなくて。
キスが始まる。




「…ん、」



ぎゅっと、イノちゃんの襟足で手を絡ませた。
一瞬で気持ちよくなったから、もっと側に寄りたくて。





「ーーーりゅ、」

「ぁ…ーーーン…んっ…」



「ーーーーー帰っ…て、な?」




「っ…ぅ、ん」







帰るまで我慢できるかわかんなくなっちゃったけど。
ぼんやりした頭で見上げたい空には、ふたりの恋人達。




ちょっと意地悪だけど、見せつけたくて。






「…大好き、イノちゃん」





俺は愛の言葉を彼に囁いた。



end






07/13の日記

00:47
のど飴
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のど飴。










「ーーーいる?」

「…ぅん。」

「ん、」

「ーーーありがとう」



イノちゃんが俺の手のひらに乗せてくれたのは、のど飴。
琥珀色の、楕円の宝石みたいな。




「………」



手のひらにコロンと乗ったそれを、すぐに食べないでじっと見た。
そしたらイノちゃんは、いつまでも食べない俺にため息をついて。俺の手のひらからヒョイと飴を摘み上げると。



「ベタベタになるぞ。早く食べないと」



ーーーって。



「っ…」


俺を正面から抱きしめた。






「泣くなよ」



「ーーーっ…なん、」

「何でって?」

「…なん、で」

「わかるさ」



すり…。

イノちゃんの片手が(もう片手は飴持ってるから、) 俺の後頭部に指先を滑らせて。
髪を洗うみたいに弄ぶ。
そのまま引き寄せて、ぎゅっとくっ付いて。
俺がイノちゃんの胸に顔を埋めているから、俺の水分は全部、イノちゃんのシャツに吸い込まれていく。




「ーーー隆のもの、一滴だって誰にもやらないよ」

「…イ、ノ」

「あのな、隆?」

「ーーーん、」



「隆」

「イ、」




「 。」





「ーーー…イノちゃん」




「わかった?」

「ーーーイ、ノ…」

「ほら、食っちまえよ。のど飴」

「っ…ん、」

「ーーーほら、」



かろん…。


のど飴と一緒に唇に触れたのは、イノちゃんの唇。
甘さと柔らかさと、温もりに。
俺はすぐにとらわれる。
何も考えられない。




ぼぅ…とし始める俺の頭の中で、イノちゃんの言葉を思い出す。








「隆のどんな声も好き」






嬉しくて、新しい涙が溢れた。

イノちゃんのキスは、のど飴みたい。







end






07/14の日記

02:20
キス
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「内緒」




「俺らの秘密だよ?隆ちゃん」



「…っ…ぅん」







頷いたのは、俺も好きだから。










《キス》













楽屋で。(二人きりの時はもちろん、皆んないても彼はへっちゃら。皆んなの隙をついて悪戯っぽく笑う

車で。(俺の車でも運転席とられちゃう。彼が運転の時、俺は助手席。俺も運転好きだから最初はちょっと物足りなかったけど、今では彼の助手席が心地良い。ーーーそんな隙に、いつも…だ)

外で。(これこそもう、不意を突かれて色んな場所で。街角の死角、夜の街路樹の陰、ショッピングモールの屋上庭園、コンビニの帰り道、それから海、海、海…)

…家で。(…キスだけじゃもう済まないよ)





好きだよって伝え合う前から、戯れ合いみたいなキスはしてたけど。
(ステージのパフォーマンスは別として、)
想いを込めて一度深く重ねてしまったら、もう戻れなくて。今では気持ちも身体も元気になれる、そうゆうものになっている。








「あのねぇ、イノちゃん」

「ん?」

「覚えてる?」

「ーーーなに?」

「俺たちの、一番最初の」

「ーーー」

「キス」




映画館の隣り同士の席で。
俺はフト、そんな事をイノちゃんに呟いた。
別に今目の前の画面がラブシーンの真っ最中ってわけじゃない。どっちかというと戦闘真っ最中。SFアクションものの洋画。
上映中は私語慎みましょうって言われそうだけど、曜日と時間のせいか人が少ない。(だからまぁ、いいかなって)

ーーーそんな時にこの呟き。
なんで?って?

だってね、好きなひとと映画ってどきどきするでしょう?
薄暗くって、密やかで。
そっと手を重ねたら映画どころじゃない。



「覚えてるよ」

「ん、」

「忘れろって言われても忘れらんないでしょ」

「ぅん」

「ーーーなに、」

「ぇ、?」

「思い出してたのか?今」

「ーーーーーまぁ、」

「くくくっ、ふぅん?」

「ーーーなに?笑って、」

「や、可愛いなぁって」

(む)

「そんなんだからだよ」

「…なに」

「隆のこと果てが無い」

「っ…ーーーだって、」





恥ずかしい事言ったかもって。
イノちゃんから顔をそらして俯いたら。


「…!」


クッと。
イノちゃんの手が伸びて、俺の顎を掬い上げた。
ーーーイノちゃんの顔は映画の忙しない光を浴びて鮮やかだけど。(きっと俺も)
その表情は、戯けたものじゃなくて。

ーーー多分、俺だけに見せてくれる、恋人の顔。



「ーーーそんな事言うから」

「…ぇ」

「隆が悪い」

「!」

「ーーーーーしよ」

「イ、」

「どうせ誰も見てねぇよ」



「ーーーーーぅ、」

「隆」

「ーーーっ…ん、」




ほら、こんな場所でも。
キスしてる時間は、俺たちは無敵だ。
画面はイノちゃんで塞がれて何も見えないけど。




ドカーンッッ‼︎
ドンドンッ!
ドーンッッッ…‼︎


画面の向こうで大砲が放たれて大騒ぎでも。
俺たちはキスに夢中。





end






07/15の日記

22:38
愛する
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手を伸ばした。
俺より少し低い位置にいる、綺麗な髪に。
ステージの照明を受けて、いつもの黒髪の天辺に金色の輪を描く。



手を伸ばした。
触れたくて。
その艶やかな髪を撫でてあげたくて。



ーーーでも。






「あ!」


彼の明るい声は、俺ではないものを見つけて歓喜を帯びる。
側にいる俺じゃなく、もっと向こうの。
ステージの下手側からゆったり歩いてくる、俺と対のギタリスト。



「ーーー」



スルリと俺の側をすり抜けて駆けていく彼。
伸ばした俺の手は、彼に触れる事なく宙を彷徨う。

たたたっ!
軽やかな足取りは、走る度に星屑を撒き散らしているようで。
それが今の彼の感情を映しているようで。


嬉しい!
来てくれた!
大好き!


そんな素直な感情。
それを全て向けられる〝彼〟が、時折たまらなく羨ましく思う。




「イノちゃん!」

「隆、歌ってたんだ?」

「うん!」

「向こうまで聞こえたよ、隆の歌」

「ふふっ」



俺らの中心、音楽を語りながらも。
二人の重なる視線はこの上なく優しい。
他愛ない会話の端々にも、想い合う愛情が溢れる。
触れたいと手を伸ばすばかりの俺と違う。
二人は自ずと互いに手を伸ばす。
指先で触れる。
薄紅の頬に、綺麗な髪に。
ギター弾きの欠けた爪の指先で。





「ーーーーーーーー」




俺は踵を返す。
近くにいたスタッフからギターを受け取って。



「スギゾーさん、戻りますか?」

「ああ、楽屋で弾いてるよ」



軽く手を挙げて、笑みを残して。
俺は彼らを置いて背を向けた。





「ーーーーー敵わないな」

「ああゆう場面ではさ」

「隙がねぇじゃん」



入り込む隙間。
あの空気はあの二人だけのものだ。






「あーあ…」





俺は彼が好き。
もちろん、彼の彼も。
ステージの上以外場所で、可愛いって、好きだって触れてた時期は、もう来ないんだ。
ステージから降りれば、今はもう俺の手は届かない。
彼はアイツのものだから。




「ーーーーー俺は、そうだな」





ひとりの楽屋で、ほっと息をついて。
俺はギターを奏でる。
まだ見知らぬ、新しいメロディー。


「俺にできるのはさ、」


このメロディーを君に。
君が誰よりも輝けるように、メロディーを贈る。



「好きだよ、隆」



これが俺の君の愛し方。



「これくらいは許せな、イノ…」








end






07/19の日記

02:23
外せない離せないもの。
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「…これって、ホントに外せるようにできてるのかなぁ」

「ん?」

「知恵の輪~。もぅどう頑張ってもできない気がする…」

「外せないもの商品にしないだろ」

「…イノちゃん、そんな…みもふたも…」

「こーゆうのって、ちょっとの事で出来たりすんだよな」

「~~~でも難しいよ!イノちゃんやって」

「えー、いいけど。ーーーどれ、」

「イノちゃんギタリストだから手先器用そうだよね」

「それってあんま関係ない気もするけど…



カチャ。



「あ、」

「お、取れた。ーーーほら、隆ちゃん」

「すごーい!イノちゃんすごい!」

「そんなお褒めいただいて、」

「だってすごいもの!この知恵の輪はねぇ、最難関のなんだって!それなのにすごいね!これが出来ればイノちゃんに外せない知恵の輪は無いんじゃない?」

「ーーー外せない?…」

「うん!」

「ーーーうー…ん、ーーーーーでもさ、」

「ん?」

「知恵の輪じゃないけど、外せないものはあるよ」

「ふぇ?そんなのあるの?なぁに?」

「んー、とね、」





ぎゅ。




「ぅあ、手…」

「隆ちゃんとこうやってさ、手を繋ぐだろ?」

「ん?ぅ、うん」

「そーすると、ほらもう無理」

「ぇ、?」

「手、離せない」

「っ…ぁ、」

「愛おしくって、離したくなくなるよ」








end






07/27の日記

02:23
ユニット
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「ねぇ、葉山っちー」

「はい、なんでしょう?」



両手に自販機で買ったであろう飲み物をいっぱい抱えて。
のんびりした口調で僕を呼びながらとことこ来るのは隆一さん。
スタジオのテーブルにそれらをゴトゴト置きながら、もう一度、ねぇねぇって。




「見なかった?どこ行ったか知ってる?」

「ーーーえっと、」

「イノちゃん」

「イノランさんですか?さっきちょっとそこまでって目の前のコンビニ行ったと思いますけど」

「そうなの⁈どのくらい前のこと⁇」

「でもついたった今です。ーーー五分前くらいですかね」

「っ…行ってくる!」

「隆一さんもコンビニですか?」

「ぉ、俺も買いたい物思い出したの!アイスティー飲みたかったんだ!だから行くね!」

「はい、行ってらっしゃい」




じゃね!ありがとう!って、隆一さんはばたばたと忙しなくスタジオを飛び出してった。やれやれ…と思っていたら、またばたばたと戻って来て、テーブルいっぱいの飲み物を指差して。



「今喫煙コーナーの自販機で買ってきたの。葉山っちも好きなの飲んでてね!」



じゃ!って、またまた素早い動きで駆けてった。
相変わらず元気だなぁ。
ーーー再び僕は、やれやれ。
でもせっかくだから、テーブルに無造作に置かれたペットボトルから一本頂戴することにする。
まだ結露で濡れた冷え冷えのペットボトル。
どれにしよう…と眺めていると。
ーーー僕は見つけてしまった。





「ーーーぁ、」






〝ぉ、俺も買いたい物思い出したの!アイスティー飲みたかったんだ!だから行くね!〟






「クッ、」



それを見つけた途端、僕はひとり笑いが込み上げて止まらなくなってしまった。
意地悪な笑いじゃないですよ?
なんてゆうか、もう。
可笑しくって、愛おしくって。
そんな笑いです。





「アイスティー…」




あるじゃないですか。
さっき自分で買われた、冷え冷えのが。





「ふふふっ、」




そんな慌ててしまう程…なんだなぁ。
上手く取り繕う暇も何も無いくらい。





「好きなんだなぁ」




二人とも、相思相愛。

ーーーそして僕も。





「好きだなぁ。そんなふたりが」






end






07/29の日記

03:16
夏の花。
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スタジオの窓。
音楽にどっぷり浸かった一日を過ごしていて、ふと外を眺めると。
外はもう、夕闇。

エアコンの効いた部屋にいたからイマイチ実感が乏しいけれど、今日も暑かったんだろう。






「隆ちゃん」

「ん、あ。イノちゃん」

「ここにいたんだ?もうみんな帰り支度済んだよ」

「そっか、わかった」

「ーーー何見てたの?」




イノちゃんは朗らかに微笑みながら、俺が張り付いていた窓辺に並んで。視線で、空だよって教えてあげた、その同じ空をイノちゃんも見上げた。



「今日も暑かったなー。日中コンビニ行った時ヤバかった」

「そうだよー。照り返しがすごいんだよ」

「夏好きなんだけど、こう酷暑が続くと耐えらんないな」

「ね、秋冬が恋しいね」




顔を見合わせて、ふふふっと笑う。
そうこうしているうちにも、一度落ち始めた陽は落ち切るのも早くて。あっという間にあたりは夜の気配。
ーーーそうだ、向こうの部屋では葉山っちが帰るの待ってるんだ。




「帰ろっか」

「ん、そうだな。葉山君待ってるし」

「ご飯食べて帰る?」

「いいね!」



また、ふふふっって笑い合った。
その時。






ドォン

ぱちぱちぱち







「あ、」

「ーーーーー打ち上げ花火…か」




ドン!

ドーン…





「すっかり忘れてたね。今日は花火大会だ」

「スタジオに篭ってるとな」

「うん」

「ーーーーーちょっと遠いけど、良かったな」

「ん?」

「花火。見られてさ」

「ーーーぅん」




思いがけず、花火。
これを見ると、夏を嫌いになりきれないんだ。
汗だくになった後にシャワーを浴びてサッパリする爽快感や。
水や氷の冷たさに有り難みを感じる瞬間や。
濡れた肌とシャツの隙間を通り抜ける夏風が心地いい瞬間や。

そうゆうのがいちいち愛おしくもなる。






ドーン

ドォン




「ーーーーー」

「ーーーーーーね、」

「ん?」

「葉山っちも一緒に見る?呼んでこようか」

「いいね、三人で花火。ーーーユニットで夏越しってかんじで」

「うん」



「ーーーーーーーでも、ちょっと、」




え?と、思ってる間に、イノちゃんの手が俺の指先を絡める。
クッと、軽く手を引かれると、俺はイノちゃんの胸にトン…と止まる。




「イ、」

「シー…。ちょっとだけ、」

「…ノ…」

「隆、」




キスさせて。

耳元で聴いた、イノちゃんの内緒話。
不意打ちで、思わず肩を震わせたのを合図に。


馴染んだ唇が。





「…っ、」

「目、」

「…ん、」

「ーーー閉じろって、」







ドド…ドォン

パリパリパリ…



ドーン






「ぁ、っ…」


「…りゅ、」





ドォン






「…っん…ぁ…」






ドーン、

ドド、



ドォンッ…





あぁ、綺麗だなぁ…




















「遅いなー。隆一さんとイノランさん」


「花火始まったし、」


「ーーーでも、まぁ」


「もうちょっと待ちますかね。ーーー今お二人に声掛けに行くのは…」





ドォン、




「野暮ってもんでしょ」









end


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