round and round (みっつめの連載)
二人の間の時間が止まったと思った。
一緒に過ごした過去の時間が、思い出が。
顔を合わせたたった一瞬の間に、懐かしく甦ったのだろう。
ぽろぽろと隆一の頬を涙が伝う。
声を出したいのだろうが、声がつかえて出せないようで。
やっと絞り出した声は、泣き噦る子供の…縋るような、そんな声だった。
「ーーー…っ…おじ…ぃ、」
「ーーーーーっ…」
「おじいさっ…ーーー俺…っ…」
「りゅ…」
「俺っ…ーーーだよ…!」
「ーーー…隆…一…か⁉」
「ーーーぅっ…う…っわぁあ…‼…」
〝隆一か?〟
そう、相手が呟いたのを聞くと。
隆一はこの目の前にいるひとが探し人に間違いはないのだと、そう確信したのだろう。
滂沱の涙とともに、崩れそうな身体。
そしてそれを、目の前の相手がしっかりと抱きしめたのだ。
「ーーーまた会えるなんてっ…隆一!」
「おじいさん!…おじぃ…さ…」
ーーーイノランは。
胸にぐっと込み上がる気持ちを自覚しながら、そんな様子を見守った。
今の瞬間だけは、この二人のものだから。
家族と、師弟と、同じ空の者としての…大切な瞬間。
隆一が願っていた再会の場面に立ち会えて、イノランも思わず目が潤むのを感じた。
煙突からの細い煙がくるくると輪を描いて空に消える。
庭先のハーブも、さわさわと音を立てて白と薄紫の小さな花びらを散らした。
感情の起伏でおかしな風が吹く。
ーーーこれは再会を果たせた隆一の起こした風だろうか…?
ぐすぐすと鼻を啜る隆一。
涙はようやくおさまってきたのだろう。
ごしごしと手の甲で目元を擦る隆一を、相手の人物が小さく諌めた。
「そんな擦るんじゃないよ。目が真っ赤だ」
「ーーーっ…はい」
コクンと素直に頷いて、隆一は微笑んで見せた。
それを受けて、よく来てくれたね。…と、相手も微笑んで。
側に立って見守っていたイノランに、隆一越しに視線を向けて。
初対面にも関わらず、穏やかな口調で。
「こんにちは。君は隆一の…」
「はじめまして。イノランです」
「はじめまして。私は清明(せいめい)と申します。ーーーありがとう」
「?」
「隆一と一緒にはるばるここまで来てくれたのだろう」
「っ…いえ、」
「本当にありがとう」
「こちらこそ、」
一生の中で、そうそう立ち会えるものではない、再会の場面に居合わせられた事に。
イノランもまた、心密かに感謝していたのだ。
清明は家の扉を大きく開け放つと、快く二人を招き入れた。
部屋の中は落ち着いた木の色と石造りがメインで。
庭先のハーブや花が部屋の出窓や棚の上に飾られて、外まで漂っていたいい匂いが室内には充満していた。
「どうぞ。片付けもしていないので雑然としていますが…」
そう言ってキッチンのある小さなリビングの椅子を勧めて、清明自身はヤカンで湯を沸かし始めた。
隆一はすぐに、おじいさん手伝うよ!と言って、駆け寄った。久しぶりの師弟…家族のひと時が嬉しくて堪らないのだろう。
イノランはそんな隆一を微笑ましく眺めながら、側にいる清明をも見た。
きっと随分高齢なのだろうけれど。(隆一の話では、隆一が子供の頃にはすでに白髪だったと言っていたし)
それにしても背筋はシュッとして長身で。長い白髪を後ろでひとつに束ねていて。青い長めのローブのような部屋着はどことなく仙人をイメージさせる。
本人は雑然としていると謙遜していたが、部屋も小ざっぱりとしていて落ち着いている。
初対面のイノランから見ても、清明はとても綺麗な歳のとり方をしている老人に思えた。
「ちょうど日課のパンを焼いている最中でね。…あと半時もあれば食べられるかな?」
「外まですごくいい匂いがしていたよ」
「お土産に良かったら持って行きなさい」
「うわぁ、ありがとう!」
「ありがとうございます」
「ーーーイノランくんは、何がいいかな?紅茶か、コーヒーか…」
「イノちゃんはコーヒーが好きなんだよ」
「はい」
先に言われてしまった。…と、イノランはクスッと笑う。
小さな事でも、今はなんでも話してあげられる事が嬉しいのだろう。隆一は初めてイノランにもらったミルクティーのエピソードなども話して聞かせていた。
コトン。
温もりのあるマグカップに注がれたコーヒーを、清明はイノランの前に置いた。
「どうぞ。ーーー何もありませんが」
「いえ、こちらこそ突然お邪魔したので。ーーーコーヒー好きなんで、嬉しいです」
いただきます。そう言って早速コーヒーを啜るイノランを眺めて、清明はにこりと微笑んだ。
「私もこの生活を始めて、初めて色々な…食べ物だったり飲み物だったり…。生活を彩る花々や…そう言ったものを楽しめるようになったんですよ」
「ーーー…」
「隆一と一緒にいた頃は、それこそサバイバルに近い…使命を全うする事を第一とした生活を選んでいましたもので…」
ーーー己に苦笑しながらも、傍にいる隆一の頭をそっと撫でる清明を見ながら。
イノランは、ああ…それでか。と、隆一とのこれまでの事を振り返って頷いた。
(コーヒーも、ミルクティーも。ワッフルも…ーーーそれから、)
(だからなんだな)
空の使命を全うする。
そこに込められた覚悟と責任。
一歩間違えれば、ひとの生命にも関わる、大切な使命。
それを実地で伝え受けていかなければならない、清明と隆一の日々の中には。
例えばミルクティーの柔らかな湯気や、ワッフルの甘い香りなんてものには。
手を伸ばしている余裕が無かったのかもしれない。
「イノラン君は…」
穏やかに話していた清明が、正面に座るイノランに、言った。
「隆一の事を、知っているのだね?」
ーーー隆一の事。
それは即ち、空の者であるという事知っているか?という、シンプルだけれどとても大切な問い掛けであった。
イノランはその言葉の真意を受け止めて、隆一と出会ってから今までの事を思い出しながら丁寧に話した。
「はい。ーーー隆と出会って、まだ一年も経っていないのですが」
「ほぅ、」
「ーーー大人になって、こうして出会う前に。実は子供の頃に既に出会っていた事がわかったんです」
「ーーー子供の頃に…?」
な?…そう、イノランは隆一に頷いてみせると。隆一も微笑んで、コクンと頷いた。
「隆が風使いだと知ったのは大人になって再会した後です。ーーーでも、子供心にも、当時出会ったあの子がとても不思議な子だと思ったのを覚えていた。思い出したら、会いたくなって…。大人になって、久しぶりに出向いた森の奥で。ーーー隆と、」
「イノちゃんと再会したんだよ。ーーーイノちゃんになら、良いって、思えたの」
互いをチラチラと見つめ合うように話す二人を見て。
清明は驚きと同時に、既に二人の間に芽生えている温かな気持ちに気付いていた。
隆一の、嬉しそうに微笑む様や。
イノランの、愛おしそうに隆一を見つめる様子が。
単なる上辺だけの気持ちじゃなく。
浅いところから、深く深くまで。
互いに知ろうと、関わり合おうとしていると感じたのだ。
「ーーーそうか、」
清明の相槌が、ホッとしたようなものに聞こえた。
隆一がここを訪ねて来た時に、喜び嬉しさ反面。
初めて顔を合わせるイノランの存在に、多少なりとも構えてしまったのも…事実だった。
それは隆一を思うが故の、親心…とでもいうのだろうか。
この人はどんな人柄なのか。
空の者である隆一を、どのように思っているのか。
真心を尽くして、隆一の側にいてくれているのだろうか。
ーーー隆一が独り立ちしたタイミングで姿を消した自分に、そんな品定めのような事をする資格も無いと思ったけれど。
それも、離れても尚。隆一を大切に思ってきた清明の親心なのだろう。
(ーーーこりゃぁ、なんだかな、)
清明はフト気が付いて、ひとりで苦笑を漏らす。
(そうか…。私は血の繋がりもない、育ての親のような存在だけれど。ーーー世間の父親というものは…)
例えば娘を嫁に出す時の心境は…こういうものなのかもしれない…と。
嬉しさ、安堵。…反面。
何とも切ない気持ちになるものなのだな…。
清明は、重なる視線上で微笑み合う二人を見て。
密かにそんな気持ちになっていた。
「ーーーーーね、おじいさん」
ちょっと遠慮がちに、隆一が清明に声掛ける。
じっと窺うように見つめてくる隆一に、清明はハテ?と首を傾げて。
「どうした?」
先を促した。
「ーーーん、と…」
言おうか、言うまいか。
ーーーというか、どう訊こうか?と隆一は迷っているのかもしれない。
はるばるここまで、会えるかどうかもわからない自分を探しに来てくれた動機があるならば。
隆一が今切り出そうとしている事がそれなのだろうと、清明は察した。
「遠慮はいらない。せっかく会いに来てくれたんだから、何でも訊きなさい」
「っ…ぅ、ん」
「隆。ーーーほら、訊きたい事…いっぱいあるんだろ?」
二人に後押しされて、隆一はようやく口を開いた。
「ーーーあのね?おじいさん、」
ザザ…ザ…ン
ーーーザ…ザ…ン。
双子のような灯台は、すでに夕闇に包まれていた。
双子…の片割れ。隆一の家の前のものとそっくりのこの灯台の壁に寄りかかっているのは、隆一。
ーーーイノランは、そんな隆一の姿を少し離れた側で見守っていた。
ザザ…ン。
波が少し高くなっている気がした。
風も、陽が落ちて少し肌寒い。
イノランは手元の紙袋に入った小包を、ぎゅっと抱え直した。
(まだ、ちょっとあったかいな)
これは帰りがけに清明が持たせてくれた焼きたてのパン。天板いっぱいに乗せられた丸いパンを、清明はほとんどの数を持たせてくれたのだ。
そこに感じる優しさに、イノランはそっと笑みを浮かべて…ーーー
けれども側の隆一の背中を見ると、笑みを溶かして切なげに見つめた。
あの後、隆一はずっと訊きたかっただろう事を、清明から話してもらって。
そのひとつひとつに、真剣に頷いて。
それを訊いて、思う事が、たくさんあるのだろう。
「ーーー…」
清明が、風使いという立場を手離した事。
隆一はずっと、その理由が知りたいと思っていた。
〝おじいさんは、空の守り人という立場でもあったのに。ーーー風使いをやめたのは…どうしてなの?〟
それは別に清明を責めたいと思った訳ではなく。
隆一の、純粋な疑問だった。
真摯に向き合ってきた空の仕事を手離す程の何かがあったからでは?と、隆一は思っていたから。
そして隆一もまた、空と音楽という隙間で揺れている自分があるから、ただただ訊きたかったのだ。
空ではなく、人としての道を選んだ清明の話を。
ザザ…ザ…ン。
ちゃぷ、
隆一の足先を海水が濡らした。
僅かに身動いだ隆一を、イノランはじっと見つめて。
ぎゅっと膝を抱えて顔を埋めた隆一の姿に。
清明の言葉を、思い返していた。
清明は、愛するひとがいたのだ。
空を飛び回る日々。
空を中心とした生活。
隆一という血の繋がりこそ無いものの、実の子と何ら変わりのない存在を大切に育てる日々。
努力家で、誠実で。
その日々の中で、清明はひとりの女性と出会った。
彼女は同じくらいか…少し下の歳で。
出会った頃から、身体が丈夫ではなかった。
それでもそっと佇むように清明を見つめ、清明が辛い時には寄り添う。そんな彼女を、清明はいつしか愛し始めていた。
ーーーけれども、清明もまた揺れ動いた。
空か、愛するひとか。
選ぶべきなのか、共にあってもいいものなのか。
隆一を育てながら、清明は苦悩したのだろう。
風使いは、たった一度だけ。
その身の振り方を決められる時がある。
そのタイミングがいつなのか。いつ来るのか。
それはその時にならなければわからない。
けれども清明は。唐突にやって来たのだ。
ーーーその決断の日が。
隆一が間も無く独り立ちを迎える頃。
反対側の海で、大きな嵐が来る報せが届く。
通常自身の管轄エリア以外の事は関わる事が少ないものだが、こうした非常事態の場合は別だった。
特に清明は空の守り人という称号も持ち合わせていた為、こういった場合には率先して出向く事が多かった。
嵐は来た。
海の水は飛沫をあげて、雲は後から後からゴウゴウと流れていく。風は清明すら制御不能に陥りそうな程に荒れ狂い、激しい雨粒は痛いほどに皮膚を打った。
しかしどんな嵐が来ても、自然現象を大きく変える事は禁忌だった。
空の者ができるのは保守に徹する事。
背後に控える森や街をなるべく守れるように動く。
清明もまた、森や山や街を守るべく懸命に働いた。
一歩間違えればたくさんの生命が危険に曝される。
持てる力を最大限に出し切って、その守りの風のお陰か。
嵐が去る頃、被害を受けた場所は最小限で済んだ。
ーーーしかし、この時清明の愛するひとは。
別の意味で生死の境を彷徨っていたのだ。
病を抱えた彼女。
急変した容体にあった時、そこに清明は不在で。
けれども清明の持つ使命を承知の彼女は助けを呼ぶ事もしなかった。
ーーー重荷になってはいけないと。
ーーー邪魔になってはいけないと。
ひとりでじっと、病の波が治まるのを耐えたのだ。
その事を、帰り着いて知った清明は。
もう、身の振り方を躊躇っている猶予は無いのだと。
ここから先の人生を、彼女の為に…
そう、決断したのだ。
ザザン…ザ…
ザ…ン。
「ーーー…」
空の全てを棄て、ひととしての人生を選んだ清明は。
それから約数年間をあの煙突のある家で彼女と過ごし。
彼女の最期の瞬間まで、寄り添ったのだという。
〝隆一〟
全てを聞かせた清明は。
いつしか涙で頬を濡らす隆一に、こう言った。
〝お前もいつか必ず、決断の瞬間が訪れる。それは空の風使いの宿命でもある〟
〝それは重圧に感じる事もあるし、煩わしく思うかもしれない。ーーーけれども避けては通れない事だ〟
〝ーーーその時に何が必要か。どんな選択、どんな判断。それは隆一が決める事だが…〟
〝ひとつ、判断基準になりそうな事を教えてあげよう〟
〝この際自分勝手でも、自分本意でも、それでもいいからーーーーー〟
「ーーー何より幸せだと思えるもの…か、」
それを選べばいいと、清明は微笑んでいた。
言葉通り、清明はもしかしたら周りの仲間に迷惑をかけたのかもしれない。
突然の離職願い。
しかも空の守り人が、その瞬間から一名不在になるのだから。
ーーーしかし、それを選んでいいのだと。
清明は、自らの愛弟子に助言した。
風の使いだって、ひとりの感情あるひとなのだから。
一生に一度くらい、我儘になってもいいんだよ。…と。
〝いいか、隆一。絶対にしてはいけないのは後悔する事だ。行動しないで後悔するのは一番いけない事だ。ーーーそれを忘れないで、これから先を進んで欲しい〟
帰りがけの戸口で、清明はイノランに微笑んだ。
言葉はなかったけれど、その微笑みに全て凝縮されていると感じて。イノランも返事の代わりに、清明に笑って頷いた。
〝隆一を、どうかよろしく〟
〝幸せにしてみせます。ーーー絶対に〟
「…隆には聞かせらんねぇよな…」
そんな…父親と新郎の会話みたいなの…。照れくさくって。ーーーそうイノランは呟いて。
灯台の麓で膝を抱える恋人を、後ろからぎゅっと抱きしめた。
「ーーー隆、」
「…ん、イノ…」
「帰ろう?」
「ーーーっ…ぅん」
今夜は離れたくないと、二人は同じ事を思っていた。
帰りは夜間飛行だ。
帰りがけの空。
隆一の目元はいまだ涙で濡れていたけれど。
話す調子は、どこか晴れやかだった。
清明にもらった助言が、イノランと共に導き出した答えと重なって。気持ちの燻りが解けたのかもしれない。
これでいいんだ、と。
自ら手を伸ばして、選んだ道を進めばいいのだと。
そこに幸せだと思える気持ちがあれば、それは決して間違いではないと。
手を繋いで、空を行く最中で。
行って良かったと、改めてイノランは思って。
そして…ハッとした。
「そういえば隆のお手製ランチ…っ…!」
「え、?あー…そう言えば…忘れてたねぇ」
「いいよ、これからでも食おうよ。隆のじいちゃんがくれたパンと一緒にさ」
「ふふふっ、いいね!そうしよっか」
顔を見合わせてくすくす笑うと。
イノランは、じゃあさ?…と、隆一の耳元に唇を寄せた。
「ーーーうち、来ないか?今夜は」
「えっ…?」
「隆の家には度々お邪魔してるけど…。うちは来た事無いよな?ーーーん、テラスにはあるか」
「ぅ、うん…」
「じゃあ、」
「ーーーいい、の?」
「りゅーう」
「ん、」
「お前だから、いいの。お前じゃなきゃ…」
「ん!ーーーうん、」
「お前じゃなきゃ意味ないからな?」
「ーーーっ…はい」
初めから。
今夜は初めから、思っていた。
離れたくない。
一緒にいたいと。
思っていたから。
繋いだ手をぎゅっと。
今日掴んだものは、とても大切で、失くしてはならないもので。
今すぐに、それを確かめ合いたくて。
〝おやすみ〟をいう意味はどこにも無かった。
「ーーーっ…ん、イ…ノ、」
「隆ちゃんっ…」
初めての彼の家。
暗い玄関を潜るなり、性急に求め合った。
靴を脱いですぐに隆一を抱きしめて。イノランは手探りで廊下の電気をつけると、そのまま隆一を抱き上げて薄暗いリビングのソファーに横たえた。
覆い被さって、口づけを交わす。
最初から深く唇を絡ませた。
「んっ…ぁん、ん…」
「はぁっ…」
隆一の漏らす吐息すら愛おしい。
空の上にいる時から、早くこうしたくて、堪らなくて。
隆一がイノランの首元に手を絡ませると、もう止まらなかった。
「…ふっ…ぁん」
「りゅっ…りゅ、う…隆、」
「ーーーっ…は、ぁっ…」
キスをしながら、隆一の服ははだけさせてしまった。
隆一も夢中だったから、気付かなくて。
白い肌にイノランに唇を付けられて初めて気が付いた。
「ーーーあ、ゃあっ…」
「だめ、」
「ん…んん、イノちゃん!」
「今夜はだめ。止まんない」
「っ…あ、」
「好きだって、」
「ーーーん…っ、」
「お前が好きで好きで堪んないって、再確認したから」
これ以上無いってくらいの愛の言葉を告げられて。
隆一は胸がきゅうっ…となって。
それはこっちの台詞って。イノちゃんが好きで好きで堪らないってイノランに囁いたら。
剥ぎ取るように服を脱がされて。
イノランも、もどかしげに服を脱ぎ捨てて。
どきどきと苦しいくらいの鼓動を重ねて、視線を重ねて。
余すところが無い程に、隆一の肌に舌を這わせた。
「あっ…ぁん、ああっ…」
「隆っ…」
弄るように隆一の身体に触れると、いつしか部屋の中に緩く風が流れ始める。
まるで、気持ちいいって。もっともっとって、誘われているように思えて。
隆一の脚を開くと、最奥まで自身を突き挿れた。
「ーーーっ…イノ…ちゃ、」
「ーーーんっ…りゅ…」
「だっ…ぃ、好…っ…」
「隆一っ…ーーーっ…ーーーお前…を、」
「ぁっ…あ…ーーーん、」
「ーーーしてみせるっ…から、」
ーーー幸せに。
誰よりも。
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