長いお話・2 (ふたつめの連載)
目の前で、闇に攫われた二人の隆一。
あまりに唐突で、一瞬の事で。
差し伸べた手も届かなくて。
残されたメンバー達は呆気に取られていた。
二人の隆一が歌っていた場所には、確かにさっきは突如できた亀裂があった。
そしてその隙間からは深々とした闇が顔を覗かせていたのに。
黒い腕らしきものが隆一を引き摺り込んだ後。今は全く、何事も無かったかのようにヒビひとつ見当たらない。
「ーーー嘘だろ…。マジ…かよ」
誰かが放心した様な声で呟いた。
あまりの出来事に、皆、演奏の手は今や完全に止まってしまった。
静まり返ったこの場にいる全員の頭に響くのは。
二人の隆一の、恐怖で切羽詰まった声だけだ。
〈ーーーリュウ…が…〉
「今度は何なんだ‼隆はどこに連れて行かれちまったんだよ!!!!!」
誰かが叫ぶ。
「ーーー何とか追えないのか」
〈でもどうやって……あの二人が引き摺り込まれた隙間は…もう…〉
〈くそっ!完全に閉じてる。…せっかく、やっと再会できたってのに‼〉
「隆ちゃんっ…」
焦り、不安、苛立ち、絶望…
ここにいる全員を一瞬で包んでしまった、負の気持ち。
さっきまで演奏する事に希望を見出していた力強い気持ちは、こうも簡単に圧し折られてしまう。
「ーーーーー」
イノランは。…二人のイノランは。
ひと言も発さず、隆一の消えた地面を凝視して。
見かけは冷静そのものの、その表情の下には。
煮え滾る激情。
ーーーまた…手を離してしまった。
ーーーもう二度と、繋いだ手は離さないと誓ったのに。
ーーーどんな時も側にいると誓ったのに。
ーーー地の底の堕ちる時は一緒だと。…一緒なら、どこまでも堕ちても構わないと言ったのに……
ひと言でも声を出すと感情が爆発しそうで、イノランはただひたすらに唇を噛んで耐えた。
絶望を口にしたいのはイノランも同じ。
やっと再会できた手を掴んでやれなかった自分を責め倒したいのは、二人のイノラン共通の想い。
なんで手を掴んでやれなかった…っ…‼
なんでまた隆一にあんなカオ…恐怖に怯えるカオをさせてしまったんだ‼
一緒にいると誓ったくせ‼
側にいると誓ったくせに‼
嘘つきめ。
嘘つき…ウソつき…‼
悔しくて。
皮膚を突き破りそうなくらいに、ぎゅっと拳を握り締めた。
…ゴゴ…ゴォォ…ォ…
演奏と歌が止んでしまったせいだろうか。
それともメンバーの心も圧し折られたせいか。
音楽の力でどうにか食い止めていた闇が、急激に膨らんだ。
大きな風船のように膨張して、この神殿の風景をも飲み込もうと地面に、空間にも黒い腕を広げてきた。
ゴォォ…ォオオ…
熱いのか、冷たいのかもわからない風が、皆の間を吹き抜ける。
〈ーーーもぅ…駄目じゃね…?〉
また、誰かが呟いた。
今までどんな絶望的な状況に身を置かれても、諦めの言葉だけは言わなかったメンバー達。
言ってしまったら終わりだと、気持ちを奮い立たせていたのも事実だけれど。
二人の隆一が攫われて、どこにいるのかも、どう助けに行ったらいいのかもわからない今。
迫る闇と、タイムリミットに板挟みにされて。
ここにきて、初めてだった。
諦めと、絶望の言葉。
そしてそれを咎める事ができない程に、折れた皆の気持ち。
再び楽器に手を伸ばす事ができないメンバー達の姿を見て、イノランは、闇の生む風に髪を揺らしながら、思っていた。
ーーー闇なんて、こうも簡単に生まれるんだ。
ーーーさっきまで纏っていた光は消えかけて。
ーーー次の一歩先は真っ暗で。
ーーー諺にもあるもんな。一寸先は闇って。
ーーー世界を覆うこの大きな闇を生んだ人々の負の感情も、もしかしたらそんな一寸先は闇って感じのものなのかもしれない。
ーーーある日突然の絶望。一瞬後の後悔。そこからずっと続く悲しみ。責め続ける自分。ーーーそれでも、もう届かない光。
「ーーーそっか…。だからなんだ」
〈え、?〉
「強いわけだよな…。この闇…」
〈ーーー…〉
「今の俺たちと同じだ」
〈ーーー同じ?〉
「同じ匂いがする。ーーー絶望の匂い。今の俺たちとおんなじ気持ちが固まって出来ているんだって、すげえわかる。ーーーなんで?どうして?なんであの時…、そうしなかった⁈、悔しい、悲しい、ごめんね、ごめんなさい…って。そんな想いって、国境なんて関係ないもんな」
〈っ……!〉
今の自分たちだって、このまま闇の一部になってしまっても不思議ではないのだ。
同じ匂いだとわかってしまったから、融けてしまうなんて簡単なのだろう。
ーーーけれど。
「それじゃ、ダメだよな」
言い放ったイノランの声は、呆然としていたメンバー達の顔を上げた。
「音楽を止めちゃダメだ」
そうでなければ二人の隆一は、帰る場所を失くしてしまう。
そうすれば永遠に、もう出会う事は出来ないのだ。
音楽は止めない。
たとえ何が起ころうとも。
「うぁ…っ…あ!」
〈隆一‼〉
あまりに眩しくて、思わず目を瞑った。
目を開けていられない程の眩い光。
それから…胸の内の熱が解放される、快感。
バサッ…という大きな羽音がすぐ側で聞こえたと思った次の瞬間。
隆一は、自身の足元の浮遊感に気が付いた。
「ーーーっ…ぇ、あ?」
下を向くと、自分の靴の爪先が見えるけれど。
それが地面から離れて、ふわふわと浮かんでいた。
〈隆一…!〉
リュウイチの、興奮気味の声。
そんな彼が指差すのは、隆一の背。
〈わかる?すごいよ!〉
「ーーーーーえ、?」
〈真っ白…!きらきらした…純白の、綺麗な翼だ〉
「‼」
言われて初めて、隆一は自身の背を振り向き見た。
するとそこには純白の大きな翼。
細かな七色の光の粒子を振り撒きながら、照らす事も困難だった濃い闇の中でも負ける事なく輝いている。
「っ…わ、ぁ…」
〈天使からもらった翼だ。本当に翼になった!やっぱり隆一が、持つべき者だったんだ!〉
「ーーー持つべき…」
〈そうだよ!〉
「…でも、それはリュウイチもだよ」
〈ーーーえ、?〉
「リュウイチのお陰だもん。俺ひとりじゃ、こんなに綺麗な翼は持てなかった」
〈隆一…〉
「リュウ、ありがとう」
にっこりと、沁み入るように微笑む隆一。
それを見たら、今のこの隆一の姿は必然なんだとリュウイチには思えた。
「ーーーそれにしても…すごいや。身体が軽い。こんなに大きな翼なのに、全然重さも感じないし」
〈特別な翼だからね。きっと隆一を助けてくれるよ〉
「ーーーこれなら…行けるね。俺たちが堕とされた、この闇の天井へ」
〈うん、急ごう!皆んなすごく心配してるよ〉
「ん!」
手と手を繋いで、闇に覆われた上を見据えて。
トッ…と、地面を蹴ると。
たったそれだけの助走で、高く高く身体が舞い上がる。
「すぐに行けそう!これなら」
〈うん!〉
地上にいる、メンバー達を思い描いて。
きっと心配させてしまっている、彼らの元へ…
〝アノ歌ガ邪魔ダ…〟
「っ…⁉」
〈‼〉
飛び立つ二人の足元。
闇に同化した地面から、力無く伸ばされる黒い腕。
聞こえる蠢く声。
〝ーーー邪魔ダ…歌ガ…コノ光ガ…〟
しかし伸ばされる無数の腕は、二人をここへ引き摺り込んだ時とは違う、力無いもので。
ーーーその声も、絞り出すようにか細い。
翼の振り撒く光に圧されているのだと、二人にはわかった。
「ーーーーーこの光に弱いんだね」
〈うん。…腕を伸ばす力も、もう無いみたいだ〉
二人は、宙に浮いたまま闇を見据える。
光の粒子がきらきらと落ちていくそばから、闇は光を吸い込んで、やがてチカチカ明滅して消えていった。
闇が消えた部分には、本来のものであろう物質の違う地面が顔を出した。
〝ーーー邪魔…ダ…。邪魔…コノ光…コノ歌…〟
〝苦シイ…苦シ…カッ…タ…〟
「え?」
〝歌…歌……光…〟
〈…なんか、辛そう?〉
「うん、それに…。ーーー何か言いたそうにしてる…」
〝ーーーコノ…歌、ト光…〟
〝邪魔…邪魔……邪魔ジャマ…邪魔…ジャ…ナ…イ…〟
〝ーーー本当…ハ……〟
〝邪魔…ダト…思う、まえに…ーーーーー出会いたかっ…た……〟
「リュウイチ…っ!」
〈ん、!〉
「闇の声が、今ーーーーー」
目の前の闇がいっぱいの光を吸い込んで消える前に聞いた声は。
それは蠢く声なんかでは無くて。
悲しみと、それから解放される安堵の声で。
連鎖されるように、二人が堕とされた空間の闇が一気に晴れると。
その後に降り注いだのは。
綺麗になった闇から降る、涙の雨で。
生命の存在しなかったこの場所に、小さなひとつの緑を芽吹かせた。
誰もが絶望など望んだりしないだろう。
不安も、悔やみも、憤りも、深い悲しみも。
できれば避けて通りたいと願うだろう。
ーーーでもそれは不可能なこと。
何故なら生きているから。
生身の人間で、心があるから。
今この世界を覆う闇の〝本心〟とも言うべきものに触れた二人の隆一は。
これまで忌み嫌うものとばかり思っていた闇の存在の見方が、少しだけ変わってみえた。
「ーーーいつだったか、初めてリュウイチが皆んなの前に出てきてくれた事があったでしょう?ほら、俺の身体を借りて…」
〈うん、覚えてるよ。イノちゃんの家で、今回の事の真実を話した時だよね?〉
「そう、あの時。ーーーなんかさ、皆んな〝神様〟に異論を唱えたじゃない」
〈え?〉
「闇を完全否定するだけじゃダメだ…みたいにさ。闇は皆んな持ってて当然!否定だけじゃなんの解決にもならない…とか、熱く語ってたじゃない?」
〈ーーーああ、そうだったね。ーーー懐かしい〉
「ふふっ、ね?ーーーでね、今まさにこの状況ってさ。ーーーあの時皆んなが言ってた事の…そのままだな…って」
〈…そのまま?〉
「うん。ーーー人の負の感情の集合体。それがこの闇の核になってる…ってことは。そうなってしまう前の、闇に融ける前の人々の心だって、まだちゃんと残ってるんだって、確信できた」
〈ーーー〉
「さっき、消えてしまう前に聞こえた声。綺麗な声だったもんね。恐らく本来の声。浄化されて、最後に自分を取り戻せたんだ」
〈ーーーあの、小さな芽も〉
「闇の呪縛から解放されて、生命が存在しなかった場所に生命が息を吹き返したんだね。…きっと」
テレビの映像で観た、あの死の景色。
無機質な世界。
その恐ろしさに、震える夜も過ごしてきたけれど。
こうして目の前で、小さな緑に生まれ変わった闇の姿を見ると。
もう大丈夫としか思えなくて。
早く、今すぐに皆んなに会いたくて堪らなくなった。
「行こう、リュウイチ!」
〈うん!〉
隆一は白い翼を広げると、リュウイチと共に、今度こそ一気に上へと舞いあがった。
歌を失った地上では。
天使の領域ごと、完全に闇に包まれていた。
再び暗闇の中。
音も光も通らない空間で、イノランはギターを抱えたまま目を瞑っていた。
「…」
シン…と、何も聞こえない。
あの秒針だけの時計の音も、今は無い。
演奏ができる唯一だったこの場所も、完全に闇に堕ちたということだろうか。
「ーーー隆」
しかしそんな時でも、イノランをしっかりと奮い立たせるのは隆一の存在。
ここで挫かれるわけにはいかないと、ギターのネックをぎゅっと掴んだ。
ーーー助けに行くにはどうすればいい?
その事が、イノランの頭をいっぱいにさせる。
歌がなければ…という思いももちろん。
今度こそ、もう二度と。伸ばされた手を掴み損ねないように。
「イノラン」
イノランは、もうひとりの自分を呼んだ。
この濃い闇の中、他者同士には届かない声も、もうひとりの自分には届く事は実証済み。
ーーーそう、初めてこの暗がりで自身に出会い、会話をした時もそうだったから。
「聞こえるか?そこにいるだろ、イノラン」
〈ーーーいるよ。聞こえてる〉
途端に仄かな光を纏ったもうひとりのイノランが姿を見せる。
その微かな光に、イノランは心底ホッとした。
「…いいな、お前」
〈ん?〉
「光ってるからさ。…なんかこうゆう時って」
〈電球じゃねぇんだけど〉
「くくっ、いいじゃん。電球」
〈あ?〉
「ーーー灯、光って必要なんだよ」
〈ーーー〉
こんな時こそ見た目にも、心にも。
真っ黒な中に灯るもの。
「自惚れじゃないけど、世界にとっては、今この瞬間俺たちなんだ。きっと」
〈え、?〉
「真っ黒になった世界の中にちっちゃく灯るもの。この曲を携えた、俺たちだ」
〈ああ、〉
「ーーーだから俺らがへし折られてる場合じゃねぇ…な?」
〈そうだよ 〉
「ん」
〈タイミングから見ても最後の攻めだ。リュウの誕生日が過ぎたら、出せる歌の力も半減しちまうんだろ?〉
「ああ。ーーーとにかくメンバーと合流したい。音の通らないこの空間だけど、そんな事もう言ってらんない。ありったけのパワーで演奏する。これ以上ないって力を出せば、きっと何か糸口が見つかる!」
そうだ。
今までだってそうして来た。
どんな天災に見舞われても。
セットが倒壊しても。
バンドが休んでも、止まっても。
その度に、持てる力を最大限に発揮して乗り越えて来たのだから。
「イノ、手」
〈手?〉
「すり抜けちまうけど、手。繋ぐぞ」
〈ーーー〉
「ライブっつったら、これだろ?お前も知ってるだろ。ジャンプする前の、あの手繋ぎの一体感」
〈ーーーああ、知らないヤツら同士なのに〉
「な、すげえよな? きっと、今必要なのって、ああいう…」
〈共通の想いか〉
ーーーどうかまた、青空を…
「アイツらと合流して、隆を…!」
〈ああ!〉
どこにいるかわからない皆に呼び掛ける方法なんて、それこそわからないけれど。
これしか無いのだろう。
掻き毟る音ではなく。
重低音の地を這う音でもなく。
鋭利なナイフのように、ギターを鳴らす。
二人のイノランは、音に込める。
ーーー俺たちはここだ。
ーーーここにいる。
ーーーお前らは無事か?
ーーーどこにいる?
ーーー聞こえたら鳴らしてくれ。
ーーー微かでも感じたら音を届けてくれ。
ーーーひとりも欠ける事無く。
ーーー音を。
キ…ィン…
そんなイノランの音が、重ったるい空間を裂いた。
ステージの何倍…何十倍も通らない音。
けれども怯まずに、ふたりのイノランの音が暗闇を揺らした。
「ーーーーーあ、?」
イノランは目を凝らした。
何か光った気がしたからだ。
一瞬、音を聞きつけたメンバーの誰かかと思ったけれど…そうでもないようで。
ギターを弾く手は止めずに、ジッと闇の先を見つめる。
「ーーーイノ」
〈ん?〉
「なんかさ。見えない?ーーーあそこ、ずっと向こう…」
〈え?ーーー向こう?〉
「ーーーそう。…何だろう?なんか…星みたいな…。ほら、どんどん増えてる…星空みたいだ」
〈星空?ーーーーーああ…本当だ〉
ふたりの視線のずっと先に、点々と光るごく小さな光。
それは次々に増えていって、ふたりの視界いっぱいに広がるまで大して時間もかからなかった。
その光景は夜空いっぱいに散らばる星のようで。
よく見るとそれは、ひとつひとつがゆらゆらと揺れていた。
「ーーー俺、見覚えあるかも。こんな風景」
〈うん…俺も〉
「毎回いつも感動する。ーーーこれってさ」
〈せーの、で言う?〉
「いいよ?」
〈間違えんなよ〉
「お前こそ。ガッカリさせんなよ?ーーー皆んなをさ」
不敵に笑う顔を突き合わせて、ふたり一緒に声を揃える。
せーの!
「皆んなが照らしてくれる光!」
〈ファンの皆んなの光‼‼〉
言い回しは違えども、同じ答えに気持ちも高まって。
こうしてる間にも増えていく光の粒に、暫し魅入ってしまう。
ライブでメンバーを呼ぶときの、客席から生まれる光。
今回は葉山の提案で広まった、光の激励。
各々スマホのライトを掲げて緩やかに振る、その光は。
どんな状況であれ、変わる事無く闇を照らす。
待っているよ。
応援してるから。
音楽を止めないで。
最後の力が湧いた気がした。
「すっげえ‼ステージからの景色そのままじゃん」
背後から軽快な声がして、イノランは振り返った。
暗闇に薄ぼんやり見えるのは真矢だ。
側にはもうひとりの真矢もいる。
「真ちゃん!」
「イノ無事かー!良かったよー会えて!」
朗らかな真矢に安堵していると、次々聞こえてくるのはあとのメンバー、Jとスギゾーだ。
「すごいね…この光景。感動どころじゃないね」
「さすが」
「俺らのファン?」
「そうだよ。ーーーね、これで証明できたよね」
「ん?」
「音楽ってすごい」
「めちゃくちゃ力が出る」
互いに姿が見えなくても、繋がっていると信じられれば、もう負ける気はしない。
(隆っ…隆一! あとはお前たちがいればいいんだ!こっちは大丈夫だから。準備はできてる。お前たちの歌があれば…ーーーもう)
「隆一っっっーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
イノランは叫んだ。
これ以上ないくらいに声を張り上げて。
ばさっ…
羽音が聞こえた。
どこからかはわからないけれど、確かに。
それから程なくして、足元に…
ピシッと言う亀裂音と共に、ひび割れる地面。
割れた亀裂は白く輝いて、眩しくて目を瞑ってしまう。
ふたりの隆一が黒い腕に攫われた隙間に似ているけれどこれは違っていて。
その辺りを眩しく照らすのは…
「お待たせ!皆んな無事⁇」
〈ごめんね、心配かけて〉
「ーーーえ、」
聞き慣れた声。
ーーー焦がれた声。
暫し全員呆気にとられてしまったが。
にっこりと微笑むその姿に、見惚れもしたのだ。
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