自由な歌














ーーー俺にとってイノちゃんは大切な存在

ーーーその音色も表情も姿も全部。佇まいも想いも全部

ーーー俺を弱くも強くもさせてくれるひと

ーーー俺のすきなひと














ぽた…ぽたん…



「ーーーっ…ぅ…」





ーーーずっとこれからも彼の音色に歌声を添わせたいと願う。手を繋いでいたいと思う




視界が涙で霞む。
ゆらゆらと景色が揺らいで、今ここが何処なのかもうよくわからなくなって。



「…ふっ……ぅ…っ…」






隆。
終わりにしよう、俺達。






「ーーーーーっ…い…の……」



ひとりきりの駐車場で、隆一はその場に崩れ落ちた。
がくんと膝をついて、もうなりふり構っていられずに。




「…うっ…ぅうっ…ふっ…ぇ…」

「ぅあ…っ…わぁああああぁっ…!!………」





声をあげて泣きじゃくって。
自分にとって心底大切なひととの恋が終わったのだと、ぐちゃぐちゃになった胸の内をおさめられずに。
ただひたすらに隆一は泣いた。




























「俺はね、隆がめちゃくちゃ気持ちよさそうに歌ってるのが本当に好きなんだ」

「…っ……ぇ…」

「隣でギター弾いてて、そんなお前の姿見せつけられてさ。……マジで、」

「ーーーう…た?……っ…」

「愛おしく…て、」

「ーーーーーぁっ…ん…っ…」

「幸せ…で、たまんない…っ…」

「ん…んっ…ぁん…っ……」




いつかの寝室で。
ライブの終えたその夜に。
疲れているだろうから早く寝かせてあげたいけれど、互いに求め合う指先はそんな遠慮も取り払って重なって。
風呂上がり、どこか夢心地でふんわりした雰囲気の可愛い隆一を、イノランはたまらずにベッドの上で組み敷いた。
ぱさりと黒髪がシーツに散って、薄い寝間着のシャツを早々にはだけさせて、始まりの小さなキスを身体中におとすと隆一は喉を鳴らした。
自分の愛撫で鳴く隆一の声がイノランを興奮させる。
ステージでの歌声とはまた違うその声はイノランにしか引き出せないばかりか、イノランしか聴けない極上の声で。
隆一を弄る愛撫の手は止まる事を知らない。




「ーーーここ、隆の好きなトコロ」

「…ぁん、やっ…」

「や、じゃないだろ?こんな…めちゃくちゃ可愛いよ」



こりこりと指先と舌先で乳首を弄られて、隆一は背をしならせて喘いだ。
それを見て嬉しそうにイノランは舌舐めずりすると、更にソコを甘噛みして先端を穿る。



「んぁっ…や…ゃあっ…やだっ…も…」

「いいよ、一度イッて…ほら」



ぴちゃっ、ちゅっ…


「ぁっ…あ、ぁ…っ…気持ち…ぃ…ィノ…ちゃ…」

「ーーーもっ…と…気持ちよく…」




ちゅくちゅくと口内で乳首を転がして強く吸うと、下腹部の隆一自身がはち切れそうに先端が濡れ出して。
胸を愛撫しているから、そこから手を離さずにイノランは自らの勃ち上がったそれで隆一のものを刺激する。
先端を少し擦り上げただけで隆一は一度達して、溢れた白濁はイノランのものを濡らした。
荒い呼吸の隆一にたくさんのキスを降らせながら、イノランは隆一の脚を開いて秘部に自身を押し付けた。



「ーーーひぁ、イノっ…」

「ーーーーーっ…お前の…声で、」



くちゅっ…



「…ぁんっ…ぁ……」

「おかしくなり…そ、」

「ーーーっ…んっ…ふぁ…」



唇を深く、何度も角度を変えて。
隆一から溢れる声を全て飲み干すようにキスを交わす。
キスをしながら隆一の奥へ挿入をしたイノランのものは、隆一の全てに包まれて熱さと大きさを増した。





ギッ…キシ、キシ…



「隆…隆っ…隆……っ…」

「…ぁん…あっぁん、あんっ…ゃっ…」

「ーーーイイ…よ、隆…可愛いっ…」

「ぁあっ…ん…ぁ…ノちゃ…の、もっ…欲し…」

「もっと…奥…っ…あげる…よ」



涙を溢しながら幸せそうに強請る隆一に、イノランは抉られるような愛情を感じながら恋人の最奥を貫いた。


「ぁっ…ぁあん…っ…」


そこをイノランの先端で突かれて、隆一は強すぎる快感をどうにもできなくてイノランに抱きついて。絶頂が近く激しくイノランに愛されて、ふたりは同時に放った。


















もう日付は変わってた。

イノランの胸に抱かれたまま眠ってしまったようだ。
ふと目が覚めたのは、ほんの少し気を失ったあと。
月明かりを背にした恋人があまりに格好良くて、隆一は目を細めて彼を見つめた。




「ーーーイノ…」

「ん?」

「眠れない…の?」

「…ん、お前に、」

「ぇ、?」




ギシッ…




「可愛くて、見惚れてた」



何言ってんの!と、隆一が照れて抗議する前に。
イノランは一瞬の間に覆い被さって、指先がぎゅっと重なって絡み合う。


ちゅくっ…



「…んっ、」

「ーーー隆…っ…」

「ーーーぁ…はぁっ…んっ…ふ、」


ぴちゅ、ちゅっ。



「…ぁんっ…イノちゃ…」

「隆…隆っ…好きだよ…」

「んっ…ん…っ…すき…好きっ…」

「ーーーお前の…全部、」





飽きることなく抱きしめて、愛を告げて
その想いが音への原動力になれ
どうか愛しいひとが自由に音に身を委ねて
幸せに笑ってくれるように

それが願い






















幾度となくその願いを重ね続けた。
だからこそ、願いとはまるで真逆の隆一の今の状態は、辛すぎた。
それが自分の隆一への想いが原因なのだと悟った以上。
それを打開する為に、イノランは隆一と離れる事を選んだのだ。
















……………………………






「何やっているんですか、イノランさん」




隆一と別れたあと。自宅に車を置いて、しばらくは部屋で腑抜けていたイノランだった。
正直あの後どんな気持ちを抱えて家まで辿り着いたのかおぼろげで。夕暮れ時になって部屋に電気をつけていないことに気がついて、ここでようやく立ち上がったのだ。

ーーーくぅ…と、腹が切ない気配。

イノランはがしがし頭を掻いて苦笑した。




「…すげぇな…こんな時すら腹減るんだ…」



夜の気配が漂い始めた頃、イノランが呼び出したの葉山だった。
行きつけのバー。
葉山君、飯でもどう?と、メールしたら、割とすぐに返信が来た。
ちょうど仕事から帰るところで、夕飯を思案していたらしい。






ポーカーフェイスは得意なほうかと(昔は)思っていたが。
近年はどうやら不向きらしい。
葉山は隆一も交えてユニットのメンバーだ。
余計な心配はさせたくないと今日のことは言わないつもりが(でも葉山を誘った時点で話す気はあったのだろう)
葉山と会って、速攻ばれた。





頼んだものが届く間に、何やっているんですかと言われて。
イノランは絶句。




「ーーーそんな…何故わかる」

「僕を誰だと」

「葉山君」

「そうです。あなたと隆一さんとずっと一緒にいさせていただいている僕ですよ」

「…そ、だよな」

「誤魔化せませんよ。ーーーイノランさん」

「ーーーうん」

「隆一さんを泣かせたんですか?」

「ーーーーー」




すぐに返事が出来なかった。
あの駐車場で別れを告げたあと、隆一はイノランの車に乗る事を拒んだ。
心配だったし、せめて家までとも思ったけれど。
隆一の気持ちもわかる、別れを告げられたあとも平気でいられる自信なんてなかったから。

また、レコーディングで。


それだけ告げると、イノランは静かに車を走らせた。
ーーー後ろ髪は…もちろん引かれまくりで。
ミラーに映る、次第に小さくなる隆一の姿を最後まで見つめて。
車が見えなくなるまでは、隆一もきっと気丈にしていたのだろうけれど。
泣いただろう。
ひとりきりで、涙が枯れるまで。

泣かせたのは俺だ…と。
イノランは苦しげに誰も座っていない助手席を見た。









無言は肯定だと思ったのだろう。
葉山にしては珍しく、少々声を尖らせて。





「そんなものだったんですか?」

「ーーー」

「側から見ればこれ以上ない絆で結ばれて見えるおふたりなのに。そんなに簡単に離れてしまうんですか?」

「ーーー」





コトン、と。
頼んだグラスが目の前に置かれる。
春らしい透明なライムグリーンのカクテル。
きらきらした氷の粒と、ソーダの泡が綺麗だと。
以前に隆一を連れてきた時にえらく喜んでいたのを思い出す。
隆一はいつだって、嬉しい美味しい楽しい幸せと、喜びを惜しげも無く見せてくれていたと。

届いたグラスをただじっと見つめるイノランに葉山は小さなため息をついた。
そして同じように置かれた、こちらは琥珀色のカクテルを。
葉山はグッと半分ほど勢いよく飲むと、また葉山らしからぬ少々強めの口調で言い放った。






「だったら僕が奪ってしまいますよ」

「ーーーーーぇ、」

「隆一さんを」



















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