season…《Winter》
仲間とか、親友とか。
そんな仲。
尊敬とか友愛とか、そんな繋がり。
でももしもその繋がりを越えて。
もっと違う、深い愛情で結ばれたとしたら。
今までの一日一日も、巡る季節も。
時には潤んで、滲んで、水彩画みたいにとけるように。
時には色濃く、燃えるように、鮮やかに。
そんな風に、見えるのだろう。
(あれ、?)
隆の後に続いて、俺もシャワーを浴びて。
タオルでがしがし髪を拭きながらリビングに向かうと。
いるはずの隆の姿が部屋の中に見当たらない。
さっきつけておいたテレビが夕方のニュースを映しているだけで、テレビ前のソファーは無人だ。
(…どこ行った?)
キッチンにもいないから、ちょっとばかり気持ちがざわめく。
もしかして幻?とか。
会いたい会いたいって思ってたから隆の幻と会話してた?…とか。
あり得ないと思いつつも、さっきよりも焦る気持ちを自覚しながら家の中を探す。
「隆?」
「りゅーう」
だめだな、隆のことになると。
気もそぞろだ。
つか、風呂上がり。
エアコン効かせたあったかいリビングなら良いけど。
廊下とか他の部屋はまだ冷える。
湯冷めとかしてなきゃいいけど…。
と、家中をぐるりと見渡してもう一度リビングに戻ってきたら…だ。
「っ…」
い、た。
いた。
リビングにかかるカーテンと窓の隙間。
パッと見わかんない。
姿はカーテンに隠れているから、ストンと落ちるカーテンの面の不自然な膨らみに気付かなければ難しい。
さっきは俺も気づかなかったけど、今はほんの少しだけどカーテンが揺れた気がしたから。
「ーーーーーりゅ…」
う、何してんだ?
シャッ!とカーテンを開けて声かけるのは簡単だけど。
でも、今はそれをぐっと飲みこんだ。
なんか、そうしない方がいい気がして。
こんなところに隠れている隆の気持ちを大事にしたいと思った。
だって考えれば、最初からだ。
今日隆と会った時から、ちょっと違っていた。
冷え込む玄関先で俺を待っていてくれた時から。
「ーーーーー」
だから。
驚かさないように、そっと。
「ーーー隆ちゃん、」
「っ…ぁ」
カーテンに包まれたまま、隆を抱きしめる。
ひゅっ…と息をつめるのがわかって、そりゃそうだよな、いきなり驚くよな、なんて。つい苦笑する。
でも隆はそうされたまま布の中で大人しくしていた。
暴れもせずに俺の腕の中にいてくれて、しばらくすると控えめな声で俺を呼んだ。
「ーーーーーイノちゃん…」
「ん?」
窓の外は薄く明るい。
降り続く霙は相変わらず。
まだ雪にはなっていないけれど。
寒い真冬日に、好きなひとを抱きしめる。
こんな幸せなことはないと。
そう思っていたのは、俺だけじゃなかったみたいだ。
「あのね、今日」
「ーーーん、」
「朝起きたら。すごく…寒い朝で」
「ああ、そうだったな」
「しゃりしゃりした雨で」
「ーーーそうだな」
「うん。ーーーでね、あんまり寒くて、仕事中も、帰り道も、雨がいまにも雪になりそうで。窓の外を何度も見て」
「ーーー」
「マネージャーの車を降りた後も、ぎゅっと身体を縮めて部屋に戻って」
「ーーー」
「ーーーひとりの部屋に帰ったら、もっと寒く感じて」
「ーーー」
「イノちゃん…どうしてるかなぁ…って。ずっと会えてないな、って」
「ーーー」
「イノちゃんにはいつだって会えたら嬉しいけれど。でも、こんな雪になりそうな日は…一緒にいられたらいいのになぁ…って、」
「ーーー」
「ーーー思ってしまって…」
「ーーー」
「ごめんね。連絡なしに、来ちゃった」
シャッ。
カーテンの布を解いて、今度は隆の身体を正面から抱いた。
謝らなくていいんだ。
だって会えて嬉しい。
俺だって、会いたかったんだから。
「同じ」
「ぅん?」
「俺も隆に会いたかった」
「っ…」
「こんな日は好きなひとと一緒にいるのがいいんだ」
「ーーー好き…な?」
「そうだよ」
こつん。
隆の頬を手のひらで包んで、額同士を擦り合わせる。
隆の目が睫毛で縁取られてきらきらしてる。
頬っぺたも薔薇色で、ちょっと驚いた顔で。
めちゃくちゃ可愛い、俺の好きなひと。
「隆とは季節ごとに約束を結んできたな」
「ーーー約束」
「その度に隆のこともっともっと知れるし、発見があるし。ーーーもっと、」
「ーーーん?」
「好きになる」
「っ…イノ、」
年末。
隆が熱を出してしまったクリスマス。
あの日はあの日で幸せな一日を過ごしたけれど。
「クリスマスの約束。今日…これから」
いいか?
耳元でそう問いかけると。
隆の指先が俺のシャツをぎゅっと掴んで。
こくん、と。
俺もそうしたかったの、と。
俺の腕の中で頷いてくれたんだ。
リビングの方があったかいから、ソファーに横たえようとしたら。
隆は緩く首を振って、寝室の方を指さした。
「寒くないか?」
「ん。だって…」
きっとすぐにあったかくなるよ。って、恥ずかしそうに言う。
そんな事言われたら我慢なんてできないから。
俺は隆を横抱きにして、抱き上げたまま寝室に向かう。
緩くつけたおいたエアコンのおかげで刺すような冷え込みはなく。
ちょっとひんやりするくらいで。
でも照明はまだついてないから寝室は薄い青い部屋で。
ベッドの横の窓から空が見える。…と。
よく見ると、空から降るのは白い…
「ーーーぁ、雪」
「ほんとだ。雪になったな。とうとう」
「ん、」
ベッドに降りた隆はシーツの上にぺたんと座って空を見る。
まるで猫がじっと外を見てるみたいに、綺麗な目で。
そんな姿を見せられたら、堪らない。
背後からぎゅっと抱きしめて、顎を掬い上げてそのまま唇を重ねた。
「っ…ん、ん…」
ちゅ…っ…ちゅく、
「ーーーりゅ…」
「ふ…ぁ、」
「ーーー隆とキスするの好きだから…これだけでも幸せだけど」
「…ん、?」
「ーーーけど、」
ぴちゅ…っ…ちゅ…
「…んっ…んん…」
「ーーーやっぱり…足りない」
横向きのままのキスは次第に向きを変えて正面から。
隆の両手も俺の襟足に絡んで、俺も隆の首筋を撫でながらシャツのボタンを片手で弄る。
最後のボタンを外してシャツを肩から滑り落とすと、目の前に露わになる隆の鎖骨や胸、白い肌。
思わずごくり…と喉が鳴ってしまう。
薄い胸は、それでも滑らかで、ほんのり柔らかくて。
手のひらで緩く揉んで乳首を摘んで転がすと、ふっくらとピンク色に染まる。
「ーーーーーっ…ノ…っ…イノ」
「気持ちいい?ここ」
「…っ……わ……かん…な…っ…ぁ」
「勃ってる」
舌先で先端を突いて、そのまま口内で舐める。
シャツを引っ掛けたままの隆の両手が、ぎゅうっと俺の背に回ってしがみ付く。
気持ちいいって、思ってくれているからだと自惚れることにして。
「ぁ…っ…ゃあ、ぁ」
「ーーーやば…隆…」
「ーーーーー…っ……」
「可愛い」
俺のする事でこんなになってくれる隆が心底愛おしい。
もっと触れたくて、愛してあげたくて。
俺も服を放って、素肌で隆を抱きしめる。
肌同士が触れ合って、鼓動がはっきり伝わる。
どくどく、どきどき、すごい音で。
ふたりして同じなんだって、嬉しくなる。
「ーーーここも、もうこんなだ」
「…ぁ、」
びくんっ…と、肩を震わせる。
隆のものは、もう先端を濡らしてる。
それが恥ずかしいのか、ぎゅっと唇を噛んで俯くから。
違うよ、俺もそう。
隆だけじゃないんだよって伝えたくて。
目を見て、微笑んで頷くと。
隆の後孔を傷つけないように指先で触れる。
ベッドサイドに置いておいたローションを指先に垂らして、少しずつ解していく。
痛みで萎縮させたくないし、緊張も解いてあげたいから。
隆の身体の隅々を愛撫しながら指先を埋めていく。
くちっ…くちゅ…
「っ…ん…く」
「痛い…か?」
指先を噛んで、ふるふると、涙を散らしながら首を振る。
大丈夫って、教えてくれる。
「隆…」
「…んっ…」
「ーーーっ…好きだよ」
「っ…ーーーーーっ…も、」
〝俺 も〟
「ーーー……っ…き…ぃ、」
〝す き〟
埋めていた指先を抜いて、横たわる隆に覆い被さる。
隆の頭を抱えるように、髪を撫でて、手のひらを重ねて指先を絡ませて。
お前が好きだと、言葉でも態度でも伝えて。
「ぁっ…イ…ノちゃ…」
「…りゅ、力抜いて」
「はっ…ぁ、」
何度も角度を変えて、唇と舌先を絡ませて。
めちゃくちゃに胸を揉んで、脇腹を撫でて。
隆の脚の間を割って、ソコに勃起した俺自身を押し付けると。
見せてくれた隆の微笑みは、心臓が抉られそうになるくらい綺麗で。
「ーーーりゅ…うっ…」
「…ぁ、」
繋がって、最奥で隆と結ばれて。
うわごとみたいに名前を呼んで、それでも足りなくて抜き挿しを繰り返す。
熱くて柔らかくてきつい隆の中。
初めて聴く隆の声。
気持ち良すぎて止まらない。
「隆…っ…りゅう…りゅう」
「ぁ…んっ…く……ぅ」
「っ…イイ…よ、隆」
「ーーーっ…ん…んっ…」
「…ココ、」
ぐっぐっ…
「…ひあっ…ぁ、ゃあっ…ぁん…」
「ーーーっ…」
隆の最奥に自身を擦り付けると隆は仰け反って喘ぐ。
その声をもっと聞きたくて、突き上げながら隆のものを愛撫すると。
隆はいっぱいに両手を伸ばして起き上がって、俺の膝の上に跨った。
さらに奥まで俺を咥え込んだ隆が、その瞬間に僅かに眉を寄せたのを見逃さない。
「大丈夫か?」
「ぅ…ん、」
「ーーーゆっくりで、」
「ん…ーーー」
痛みを逃せたらと、腰を撫でて小さなキスを幾つも散りばめる。
間近で視線が合うと、涙を溢しながらにこっと笑う。
自らも揺れて、俺を求めてくれる。
そんな隆がいじらしくて、愛おしい。
目の前に晒される濡れた隆の唇や色づいた胸に再びキスをして。
想いの丈を込めて愛したら。
「ぁんっ…あん、イノちゃ…っ…もぉ…」
「ーーーーーっ…隆…」
「…っ……ぁあっ…」
ふたり一緒に真っ白になって。
気付いた時は、余韻を惜しむように、夢中で唇を重ねていた。
外が静かだ。
きっと雪が降り続いて、積もり始めているんだろう。
ベッドに横になったまま窓の外を見ると、白くぼんやりと明るく見える。
しんしんと降り積もる雪。
こんな日は一緒にいるのがいいんだと、その言葉通り。
俺と隆はあれからずっと離れない。
「…ん、」
「隆?」
抱きしめている俺の腕の中で、隆がもそもそと身動いだ。
微睡んでいた時間はほんの少しだろう。
寒いのかな、と。俺はもっと隆の身体を包み込む。
「寒い?」
「ーーーイノちゃん…」
「シャツ羽織るか?」
「…ぅうん、大丈夫」
「ーーー」
「あったかい」
ふふっ、と微笑む気配を胸元の辺りで感じて。表情を見たくてそっと隆の顔を覗き込むと、隆もこっちをじっと見つめている。
はにかんで、柔らかな雰囲気を纏ったその姿を見たら。
それはいつか、初めて隆とキスをした時と同じだと思った。
ライブのパフォーマンスではなく、気持ちと想いを重ねて口付けた。
色鮮やかなふたりの季節が始まった、あの時の雨の日の隆に。
「ね、イノちゃん」
「ん?」
「約束叶ったね」
いつか触れたいと、季節ごとに交わした約束。
身体を重ねたいま、信じられないくらいに愛おしくて、好きだという気持ちが溢れてる。
そのせいか、俺はもっと欲深くなる。
「もっと触れたい」
「っ…」
「これから、もっと。お前を愛していきたい」
「イノちゃん…」
「巡る季節の中でさ」
シーツの上で隆の手に手を重ねて指を絡ませた。
隆からの返事は、握り返してくれたあたたかな指先だった。
.
end…?
↓
翌朝になると街は雪景色だった。
いつもより白く反射して明るい朝の風景を、隆はベッドの上に座って窓から熱心に眺めている。
ーーーほぼ全裸の格好で…。
「隆ちゃん、風邪引くから。せめて何か羽織らないと」
「いいの、大丈夫」
ベッドヘッドに掛けておいた俺のガウンを引っ張って隆の肩に羽織らせようとするのに、当の本人は首を振って嫌々する。
そりゃ寝室の中も暖房でだいぶあったまってきたから震える寒さは無いけれど。
ーーーつか、寒さもそうなんだけど。
それだけじゃないんだよ。
そこら辺をいまいち察してくれない隆に俺は苦笑するしかない。
「好きなこが側で無防備な格好でさ」
「ーーー?…」
「わかる?」
「…ぅん?」
ーーー…わかってなさそう…。
はぁ…。
思わずため息ついて笑ってしまったら。
外を眺めていた隆が、シーツの上でよじよじと四つん這いで寄ってきて(…ちょっと…目の行き場に困…)
「…待ってたの」
「ーーー…ぇ」
「だってこんな冬の日に一緒にいて、側にいられて、」
「ーーー」
「…イノちゃんともっと…その…。……えっち…したいから。ーーー抱きしめて…くれるの…」
「っ…」
「ーーーーー待って…た…の」
キシッ…!
「ーーーーーー…ぁ…」
「…隆……っ…」
朝の寝室でもう一度隆をベッドに沈めたのはすぐ後のこと。
今日はもう思う存分愛し合おう。
そうだな。
あとでひと息ついたら、一緒にテラスの窓をそっと開けようか。
今年初めての雪を君の手のひらに乗せるために。
end
.
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