season…《Winter》










かじかむ手の指先。
白い息。

雪混じりの雨。

真冬の空。
冷たい空気を思い切り吸い込むと鼻の奥がツン…とした。




そんな四季が巡る中で。
真冬のいま、君を想う。


















season…winter.•*。❄︎
















クリスマスを過ぎて、新年を迎えて。
初春や迎春の文字が溢れる世の中だけれど、気候的にはこれからが寒さ本番な日々。
あったかいコートやダウン、巻き付けたストールに鼻先を埋めて。
仕事で立ち寄ったスタジオの帰り、道ゆくコンビニのコーヒーなんかでついつい暖をとってしまう。




トポポポ…

セルフのコーヒーを注ぐ間、俺はぼんやり店内の音楽に耳を傾けていた。
ラジオなのかも。冬の定番曲がちょうど終わったところで、パーソナリティの語りがちょこっと入る。
寒さのこと、雪の話、あったかい食べ物 の話。
寒い日の休日はどうお過ごしですか?
…リスナーへの問いかけ。

 





(ーーー寒い日の休日ね、)






部屋から一歩も出ないでぬくぬく過ごす。

(いいね)

買い物がてらカフェでコーヒー。

(うん、それも好き)

この際思い切り寒さを堪能する。

(ウィンタースポーツとか?)

温泉〜。

(ああ〜それ最高。行きたいよ)





その間に。

トトト…。
コーヒーが注ぎ終わって、コーヒーメーカーが鳴り出した。
出来上がりですよ。
据付の蓋を被せながらさあ行こうと出口に向かう時。
ラジオの語りが最後にこう言った。





〝一年中そうですけど、特に寒い季節は、好きなひと、大切なひとといたいですね〟



「ーーー」







ありがとうございましたー


そんな店員の声を背中で聞いて。
コンビニの軒下でコーヒーをひとくち。




「…あつ。…美味」



ほわっと白い湯気。
カップを持つ手がじん…と温まって、気持ちもゆるっと解れる感じ。





「ーーー…」




ふぅーっと息を吐いては、ごくんとコーヒーを啜って。
そんな俺の目の前の風景は雪混じりの…雨。
今は昼過ぎだけど、これから日が暮れてきたら完全に雪になるかもしれない。
そしてこの勢いのまま降り続いたら明日にはそこそこ積もるかもしれない。




(明日…は、)



明日の予定を頭の中で思い浮かべた。オフではないけれど、慌てて済まさないければならないものでは無い。
出掛けることが出来なくても自宅で進める事もできるから、どうにかなるだろう。




ふぅーーー……
こく、ごくん




こんな冬の日。


(ーーーーーー……好きなひと…)

(大切な…ひと。…)



一緒にいたいのは。
俺にとっては、きみなんだ。




「今日は隆は、どうしてるかな」










最後に隆とゆっくり一緒にいたのはクリスマスだ。
照れ臭いけど、しっかり恋人同士のクリスマスを準備して、その日を迎えたけれど。
隆はその日熱を出してしまっていて。
クリスマスの最中でそれに気が付いた時、隆はえらく落胆していた。
せっかくのクリスマスなのにごめんね、と。
隆が肩を落とす様子を見ながら、残念な気持ちはもちろんあったけど。
でも俺は嬉しくもあった。
残念に思ってくれる隆の気持ちも、体調崩している時にこそ側にいてあげられることに。
優しくしてあげたい気持ちが自分で驚くくらい溢れて、そんな発見も、嬉しいものなんだ。
…と、そんなクリスマスの数日後には隆の体調もすっかり回復して。
年末年始会えたらいいね、なんて電話で話していた俺らだったけど。
年末年始なんてのはお互い多忙の極みで会えるどころか電話もままならない状態で。
あっという間に年始を迎えて、それから約一週間。
会いたい気持ちもだいぶ限界に…




「ーーーのタイミングでこの天気」



日々強まる寒さ。
冷え込む朝夕、真っ白な空。
加えて今日はこのまま雪になりそうな。




「会うしかないでしょ」



だって隆は、こんな寒さの時にこそ一緒にいたい俺の好きなひとなんだ。

















〝ーーー…のおかけになった電話番号は現在電波の届かない所にいるか電源を……〟





無情にも流れる機械音声。
絶対に繋がる…とは思っていなかったけど。
隆も忙しい身だから繋がったら幸運、とかも思っていたけれど。




「今日も仕事なのかなぁ…」



事前に連絡してた訳じゃないから仕方ない。
仕事でなくとも、スタジオに篭っている可能性もある。
創作の真っ最中なら、それを邪魔することはしたくない。

昼を過ぎて、ここから夕方に向かう時間。
雨脚は依然としておさまらない。
降って来るシャリシャリした雨は粒が大きくなったみたいだ。



「これはほんとに雪になりそうだな」



ひとまずは帰ろう。
そして帰ったらまた連絡をとってみよう。
さした傘にぽとぽと落ちる雨音を聞きながら、俺は自宅への道を足早に進んだ。












◻︎◻︎◻︎ ◻︎ ◻︎








「…!!?」





帰り着いて、俺はドアの前の光景を見つけた途端に思わず荷物を落っことしかけた。




「ーーーーーり、」

「ん?…ぁ、」




だってそこにいたのは。
この今にも雪に変わるだろうって冷え込む午後の玄関先にいたのは。
帰路につく間もずっと会いたい会いたいと思っていたそのひと、隆じゃないか!
俺の気配に気がついたのか、顔を上げてふにゃりと笑ってイノちゃーん、なんて俺を呼ぶ…

や。会えて嬉しいけど。
それにしたって!



「りゅ…お前っ、」

「おかえりなさい」

「何やってんだ、こんな…!」




風邪ひくっての!!!




















雨風凌げる玄関先だろうと、こんな真冬日(しかも雪になりそうな)午後の日暮れを迎える時間なんて寒いに決まってる。
何してんだ!とか、なんで来てるって連絡寄越さないんだ!とか。
風邪ひいたらどうする!とか、いつからここにいんの!?っていう堰を切ったら止まらなくなりそうな問いかけはグッと抑えて。(合鍵も速攻で渡すことに決めた)
ひとまず冷え切った身体をあっためないとと、隆の手を掴んで部屋に引っ張ってそのままバスルームに押し込むことにする。
今からダスタブに湯を張ると時間かかるから少しだけリビングであったまってるか?と訊くと、隆は目を丸くしたあとにっこり笑って。



「ありがとう、シャワーでじゅうぶんだよ」














ざあああああ






「隆、」

「んー」

「バスタオルと着替え置いとくよ」

「ありがとー」




湯気に包まれた隆の声が聴こえて、俺は脱衣場の棚にタオルを置く手が止まってしまった。
ーーー我に返ったというか、今の状況をやっと自覚したから…だと思う。
帰宅からあまりにバタバタとしてたからなんだろうけれど。




「ーーーそっか、」

「いまこの家の中には、俺と」

「隆と」



ふたりきり。


コンビニのラジオをこんな時に思い出す。



〝一年中そうですけど、特に寒い季節は、好きなひと、大切なひとといたいですね〟



「ーーーーーーーー」




好きなひと
大切なひと



「ーーーーーこれは、」

「音楽の神様か誰かがこの状況をプレゼントしてくれたのか」


だとしたら…





がらっ



「あ、」

「ーーー隆」

「お風呂、ありがとう。あったかかった」

「ーーーそっ…か」


そうだろうよ。冷え切ってたんだから。


「イノちゃんも入るの?」

「俺?」

「気持ちいいよ?」

「ーーーああ、」




そうだな、俺も入ろう。






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