短編集・2

















雨の日デートは特別なんだってさ。

雨の日に新しい服を着て、好きなひとと雨の日に出掛けたら。
特別で、素敵な事があるんだって。












◽◽◽ Rainy day. Valentine day.
……IR……










窓の外はどんより曇ってる。
朝だっていうのに、薄ら暗い。
コーヒー飲みつつ、朝番組を眺めつつ、シャツを被りつつ…。僅かな時間も無駄にしないように、朝の身支度をせかせかと進める。
ーーーオフだから、そんな急ぐ事ないじゃんって言われればそうなんだけど。
出掛ける予定があるんだ。
これから。
その事を考えて、想像すれば。
ゆっくりのんびり支度してる場合じゃないって、わかってもらえると思う。

そうだよ。

隆とデート。
今日これから。



「…デートとかいうとちょっと気恥ずかしいけどさ、」



今年もこの季節、この日。
2月14日。
世間の波に乗って、街に溢れるハートに埋もれるのもこの時ならではだと思うから。
ーーーちょっと気恥ずかしくても、この日を隆と。






「ーーーなのにさぁ…」





サァァァ…



降り出した。
とうとう。

白く烟った空から、細く真っ直ぐに雨が降る。
静かに、柔らかく、地面を濡らす。
今日は風が無いから、吹き付けることは無いんだけれど。
今日は夕方になったらバーで飲もうねって約束したから、車は使わない。
これはちゃんと傘を持って行かないとな。

バレンタインデートだから、今日はちょっといつもより気取った格好できめる。
ここにきて少しだけ気温が春寄りになってきたなぁ…って数日の間に感じていたから、選んだ服装は薄手のジャケットだったけど。
ーーー今日はまた真冬に逆戻りな体感温度。
かろうじて日中は良いかもしれないけど、陽が落ちたら寒いかもな…
ーーーって事で出かける直前に急遽選び直したのは結局黒のロングコートだ。
それにストール、雨だから足元はブーツにした。



「こんなもんかな…。ーーーさて、」


行きますか。










待ち合わせってさ、行くまでの間どきどきしない?
それが好きなひとだと尚更。
着いて顔合わせたら、すぐにいつもの二人になれるけど。
それまでのひとりの時間。
待ち合わせてるのは気心知れた相手でも、今日どんな格好でいるのかなとか。なんの話しようかな…とか。多分自分の中で期待がどんどん膨らんで、楽しみで。
あのどきどきは、待ちきれないって気持ちの表れなんだと思う。
街の景色の中で、たくさんの行き交う人たちの中で。
好きなひとを見つけた瞬間。
俺はその度に、そのひとに一目惚れした気分になる。



公園の中だ。
いつも隆とよく行く遊歩道のある公園の敷地内のベンチ。
最初はそこで待ち合わせ予定だったけど…雨だから。
家を出る前にメッセージを送る。



〝いつもの喫茶店。雨だし寒いからそこに変更しないか?〟

〝そうだね、イノちゃん先に着いたら何か飲んで待っててね〟

〝隆ちゃんもね〟

〝うん〟


そんなわけで、通い慣れた喫茶店へ。
その店は大通りの一本奥の道沿いの店。
だから昼間でも店内が混雑してるって事はあまりない。
ゆっくりと過ごすのにはとてもいい場所で二人して気に入ってる。








チリン♪



軽やかなドアチャイムの音色。
続いて、いらっしゃい。の、出迎えのオーナーの声。
会釈して、俺はすぐに奥の窓の方に視線を向ける。
その俺を見て、オーナーはグラスに水を注ぎながら言った。


「お待ちですよ。淹れたての紅茶をお運びしたばかり」


それはオーナーにしか言えない、待ち合わせ客への気遣いの言葉だ。




二人でここに来ると、空いてたら決まって座る場所がある。
店内奥の窓際の席。
そこに彼はいた。




「隆ちゃ…」


声をかけようとして、でも。
俺はすぐにそれをやめた。

俺の到着をまだ気付いていない。
その光景を見たら、まだもう少しだけは気付かなくていいよ、と。俺は暫しそこからの風景…隆を、眺める事にした。

年季の入った艶と温かみのある焦げ茶のテーブルセットに座る隆。目の前には淹れたて、湯気の立つティーカップ。
頬杖をついて、雨に濡れた外をじっと眺める隆。
窓の外の烟った色のせいか、雨独特の静けさのせいか。
隆はどことなく気怠げで。
けれども、ふんわり漂う白い湯気につられてティーカップに視線を向けた隆は。
にっこり。
その湯気も味わうように、微笑んだ。



どきん。


(…ぅわ)


その一瞬の表情に釘付けになる。
待ち合わせの瞬間、やっぱり俺は見惚れてしまう。








「ーーーどうしました?」

「…あ。」



背後からかけられる声。
トレーに水を注いだグラスを乗せて、首を傾げて俺を見てる。
ーーーそうだよな。
いつまでも席に着かず、観葉植物の陰からじっと隆を眺めていた俺はさぞかし妙だったろう。



「いえ、すみません。大丈夫です」

「お忘れ物とか…」

「いえいえ、ホントに。ーーー今、」


座らせてもらいます。手を合わせて、お詫びして。
目指す隆のいる席の方へと漸く進む。
申し訳ない…。
ここまで来ると隆も俺に気が付いた。


「イノちゃん!」

「お待たせ隆ちゃん」

「ううん、全然待ってないよ?紅茶もまだ熱々だもの」

「そっか」



コーヒーを注文して、待つ間に早速隆と会話を始める。
いつものテンポの良い隆との時間が始まる。
すると不思議と、ほら。
さっきまでのどきどきが何処かへ行って、今度は新しいどきどきが始まる。

目の前に隆がいて。
可愛いなぁ、とか。
やっぱ隆の笑い声って好きだな、とか。
そんな風に変わる。


そうだよ。
隆はやっぱり、今日も可愛い。




「?」

「ーーーなに」

「ぅうん。イノちゃん、じっと見てるから…。俺なんか変?」

「違うよ」

「ぅん?」

「ナイショ」

「ええ~っ?気になるよ」

「はははっ、いいじゃん?今日はさ、ずっと一緒にいられるんだから。その中で俺はきっと同じ気持ちに何度もなるから」

「っ…」

「その時には言ってあげる。な?」

「ぅ、ん」


早速、二人のこんな空気。
隆と俺の隙間でしか生まれない、こんなやりとりは。
以前そこに居合わせたJ曰く。


「部屋入っていい?」



ーーー躊躇う程だったみたいだ。











紅茶とコーヒーを堪能して。
じゃあそろそろ行こうかって、席を立つ。

カウンターに預けておいたコートを受け取る。
隆も同じように、預けていた上着を受け取って羽織ると。



「ーーーそれ、初めて着る?」



隆が着込んだハーフ丈のフード付きコートは、俺が初めて見るもので。
春先らしいカラー。薄水色っていうのか、雨の日の空に似てる。



「おろし立てなの。どうかな…」

「似合うよ。初春って感じ」

「今日は寒くなっちゃったけどね。でも、せっかくのバレンタインデートだから、新しい服を着て行きたくて」

「いいね、その日の為にって思うと気分も変わるし。…それにさ、」

「え?」



会話をしつつ、隆と外へ出る。
あったかい店内から、ひんやりした雨の匂いを含んだ空気に変わる。
パッと傘を開いて、並んで歩く。
本当は一本傘の下に入るのがいいけど、まだここは人通りの多い道だ。
ここを抜けて、二人きりになれたらな?



「ーーーで、さっきの続き。イノちゃん、それにさ…のあとはなに?」

「ああ、そうだったな。あのね、なんかの本で読んだの思い出したんだけど」

「うん」

「雨の日に新しい服を着て好きなひとと出掛けるとね」

「ーーーうん、」

「素敵な事があるんだってさ」

「っ…素敵な事?なんだろう⁇」



隆の目がきらきらっと輝いた。
だってそうだよな。
雨の日、新しい隆のコート、デート。
全部揃ってる。
隆の期待もよくわかる。


隆の手が、俺の傘を持つのと反対の手の指先にちょん、と触れた。



「隆」

「ね、イノちゃん」

「ん?」

「じゃあ、きっと今日中に素敵な事があるんだね」

「ん、そうだな」

「見逃さないようにしないとね。その瞬間をね」

「くくっ、な」



(ーーーっても、隆には内緒だけど、俺はもうすでに今この瞬間が素敵な事なんだよ)

(隆と一緒にいられるだけで)



ちょんと触れた隆の手は、そのまま俺の手をぎゅっと繋いで、先立って歩き出す。
いつもは人前で手を繋ぐこと、すごく恥ずかしがる隆なのに。
バレンタインデーという今日の日のパワーがなせる技か、それとも今の素敵な予感が勢い付かせたのか。

透明な傘に小さな水玉をいっぱいつけて。
その銀色に光る粒に包まれて、隆の横顔はずっと見ていたいくらいに綺麗で可愛いんだけど。
そんなの自分じゃわかんないよ!とでも言うように、隆はご機嫌に足取り軽く。

ぐんぐん俺を引っ張って、飛び出したのは大通り。
チョコとハートと甘い匂いで包まれる、2月14日の街。



「チョコレート!今年はねぇ、一緒に選びたかったの!イノちゃんと」

「OK!いいよ」

「うん!ーーーすごいね、ホントに…目移りしちゃうね」

「ああ」



もともと多数のパティスリーや、大きなデパ地下がある百貨店のあるこの大通りは、そのチョコレートの種類も選べない程。
今日はバレンタインデー当日という事もあって人出もすごい。



「ーーーこれさ、まずどんな系統のチョコが好きかって絞った方がいいよね。じゃないと探しきれなさそう…」

「な。俺もこんなになんて思ってなかったかも。ーーーっていうかさ、」

「ん?」

「あのさ、」




ーーーちょっと、気が付いてしまった。
溢れるほどのチョコを目の前にして。
それからなんだか目がぐるぐる回ってそうな隆を見て。

あえてこんなのもいいんじゃないかなって。





「隆ちゃん、こっち」

「え?イノちゃんどこ行くの?」



チョコのお店と離れちゃうよー。
俺と店とを交互に見やって、それでも俺にとことこ付いてくる隆。
俺の歩き出す先には、バスのロータリーや駅。
チョコの匂いは遠ざかる。




「ね、イノちゃん」

「ーーーここならあるよな」

「え?…あ、ここ?」

「そ!」

「ーーーここって…」



俺が隆を引っ張って入った店。
それは駅前のドラッグストア。
ーーー別に医薬品とか…探すわけじゃないよ。
最近のドラッグストアの品揃えってすごいじゃん?



「イノちゃん、ここで何買うの?」


隆は相変わらず目を丸くして俺に付いてくる。
こっちこっちって、俺は隆の手を繋いだまま店内を進む。
すると、あった。
目当ての物。
俺は隆ににっこり笑って見せて、それを一枚手に取った。



「板チョコ?」

「そう。ーーーこれって、なんだかんだ一番馴染みがあって美味いと思わない?」

「ーーーあ、」

「ガキの頃から食べてるし。なんたってロングセラーだし」

「そ、だね。ーーーそうかも!」

「ーーー有名なパティスリーのチョコももちろん美味いし、すごく綺麗なのいっぱいあるけど。…なんか今年のバレンタインは、これがいいかなって」

「ーーーイノちゃん、」

「安上がりだけど」

「ふふっ、でもいいね。それがいいね!」




可笑しいの。
ドラッグストアの菓子売り場で、大の大人がにこにこしてて。
それが二人で食べる為のチョコを探しに来たんだっていうんだから。
ーーーこんなの、本当に好きなひととしかできないよな?





























サァァァ…



雨脚がちょっと強くなってきた。
風は相変わらず無いから、それだけは助かるけど。


「こんなに降ってたら残念だけど屋外デートはちょっと…かなぁ」

「ね。しかもちょっと冷えてきたね。ーーーどこか入る?」

「どこかっても、商業施設はきっと混雑してるだろうしな」

「…ん、」




せっかくのデート。
このまま気分がトーンダウンしても勿体ない。
だってせっかくの二人の時間だ。
少しでも、一瞬でも長く側にいたいと思うから。

ーーーなにかないかな…と、辺りを見回す。



雨降りの街は、こうして見ると全てが同じ色彩に見えるんだ。
グレーと、ぼんやりした白と。
信号機の鮮やかなライトだけが、煌々と光る。
ーーーその中で。



「あ」

「え?」

「いい場所、あそこ、行こう」

「え、え?どこ?」

「ラブホ」

「ーーーーーっ…え」

「雨は凌げるし、空調効いてるし、ルームサービスもあるし、何より二人きりになれる」

「‼︎」

「行くしかないだろ?」

「…ぅ、」

「ん?」

「うん!」



急に決めた行き先だけど。
二人して乗り気。
ーーーだってさ、気分もガラッと変わるもんな。














カウンターは無人だけど、通路ですれ違うひともいない。
こんな昼間だから、まぁ、そうか。

隆はロビーに置いてあったルームサービスのメニューをすかさず持って、ご飯色々あるよ!なんて言ってる。
見せてもらうとたしかに美味そう。
後で注文しようかって言い合う。




「なんか、普通のホテルのお部屋だね」

「そうだな、別段風変わりな感じは…」


言いかけて、見つけてしまった。
奥の洗面台の、デカ過ぎる鏡。
ーーー成る程。

俺が部屋探検している間に、隆はベッドに腰掛けてカサカサと…
あ、さっき買った板チョコ。
紙と銀紙を剥がして、パキ。



「はいイノちゃん、ハッピーバレンタイン」

「ありがと」

「上手く四角く割れなかったや。ちょっと三角になっちゃった」

「いいじゃん?隆が割ってくれたって事が一番なんだし」

「ふふふっ」

「なんかこうゆうのいいな。その辺で板チョコ買ってさ」

「今年は安上がりバレンタインだね!100円程の…」

「ドラッグストアだからか100円もしなかったし」

「でも美味しいもんね!間違いなく美味しいチョコレート」

「それをラブホで食うと」

「あははは!」




隆が笑ってる。
心から、本当に幸せそうってわかるほど。
それを見たら、そんな隆いられる俺は。
本当に、世界で一番幸せな奴だって思えて。
これが今日起こる、素敵な事なんじゃないかって思えて。





ぼふっ




「わっ、」

「ーーー隆、」



隆の肩を押して、ベッドに押し倒す。
その反動で隆が持っていた板チョコがベッドに投げ出されて。


「ーーーぁ…チョコ、」


こんな状況にもかかわらず、横たえられたままチョコに手を伸ばす隆。
そんな隆が可愛すぎて、堪らなくて、俺も笑ってしまう。


「ーーーなぁ、隆ちゃん」


せっかく来たラブホなんだから。
ここから先はたっぷり堪能しよう。
隆と俺の時間を。






























「…ぁっ…あ、」



「ーーーーりゅう…」







服はすでに床に落ちてる。
昼間から裸にされるのを、隆はいつも恥ずかしがって嫌がるけれど。
今日は雨の日。
部屋の電気も玄関とベッドサイドのしか点けていないから大丈夫みたいだ。



きし、




ーーーくちゅっ、

…ぎっ

ーーーちゅ…ちゅぷっ…





「っ…ぁ、や、」

「ーーー嘘」



隆の唇を存分に味わって。
しならせる背中を抱いて、首筋にも、尖った乳首にも舌先を這わせる。
甘噛みして、吸い付くと。
隆は頭を振ってイヤ…と声を上げた。
でも、それは嘘だって知ってる。
知ってるからわざと、もっと…




「ーーーイ、ノ…っ…」

「気持ちよすぎておかしくなりそう?」

「違っ…もん!ーーー」

「ふぅん?ーーーじゃあ、もっといいよな?」

「ぇ、あっ…」



ぐっと隆の脚を開いて身体を押し入れる。
主張しきっている隆の中心には、まだ触れないで。
もどかしげに脚を閉じようとするのも、許さないで。
これから俺たちが繋がるトコロ。
愛し愛される、隆の秘部を。



ぴちゃ、



「ひゃ、」

「ーーーもっと見せてよ」

「あっ、ぁあっ…イノちゃっ…」



舌先と指で、そこを弄る。
くちゅくちゅと濡れた音が頭を麻痺させて、震える両手で俺の頭を押しやる隆にも頓着せずに愛撫する。
ーーーさっきから意地悪して触れてあげていないからか、隆自身は先端を濡らしてる。



(可哀想かな)


それにそろそろ、俺も限界。
隆と繋がりたい。
繋がって、その瞬間だけに感じられる、切なくてどうしようもない愛おしいあったかい気持ちを、早く…


早く…





「挿れる…よ、」


「ーーーーーぁ、あぁ、」

「ーーーは、ぁ…っ…」




ギシッ…ギッ、キシ、




隆の奥まで、ゆっくり挿れて。
さっきから敢えて触れなかった隆自身をここで思い切り扱いてあげる。
…中も、奥まで挿れたまま、さらに奥へと突くと。

隆の声は止めどない。



「あっ、あ、ぁあんっ」

「ーーーーーりゅ、う!…ぁ」

「ぁんっ…や、ぁ、あっ…イっ…」

「ーーーんっ…も、イキそ?」

「んっぁん…ぁ、あっ…ぁあんっ…」

「…すっ…げ…隆…ちゃん、」





涙でぐちゃぐちゃな隆。
頬を染めて、髪も乱雑で。
こんなになってくれるのが、嬉しい。
俺の全てで隆をこんなにできることが、愛おしくてならない。



「イ…の、ちゃっ…ぁっ…あぁ、もぉ…」

「ーーー隆っ…りゅ、っ…」



真っ白になって、それでも手離せないのは。
腕に抱きしめた大切なひとだ。






















ーーーちゅっ…じゅっ、
ちゅくっ…



「んっ…ふぅ…」

「ーーーりゅ、ちゃん」

「はっぁ…」

「ーーーっ…可愛すぎだろ」




ほら、俺は今日何度そう思ったことか。







セックスのあと、隆はキスを強請る。
まだ足りないって言うように。
でもそれは俺も同じ。
何度でもしたいから、いつまでも。



「んっ、ん…ふぁ、」

「ーーーりゅ、」

「ぷは、」

「ーーーね、ちょっと待ってな」

「?」





パキ。


さっきベッドに投げ出されたチョコ。
それを小さく割って、隆の目の前にチラつかせる。



「今日はバレンタインだし」

「ぅ、ん」

「一緒に食おうよって、買ったんだもんな?」




カロン。

「んむ、」


隆の口に、チョコのカケラ。


「美味い?」

「ぅん」

「よかった。ーーーじゃあ、」

「ぁ、」

「一緒に」



ちゅくっ…



「ん…んんっ…」

「ーーーりゅう」

「…ぁんっ、あふ…」

「…っ…好きだよ」

「…んっ、」



イノちゃん、


夢中でキスをしながら、微かに聞こえた途切れとぎれの声。

だ い す き…





柔らかな微笑みを見つめながら、俺はやっぱりそうだと確信した。
今日の素敵なことは、最初から始まっていたんだ。
隆と待ち合わせた、あの時から。








end







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