第一章 calling you
プロローグ
冷えた夜風に肌を撫でられ、赤く彩られた厚手のノートに向けていた視線を、ゆったりとした動作で窓に移した。どうやら僅かな隙間から部屋に吹き込んだようで、鍵のハンドルを閉めようとすれば、すっかり空は藍のペンキをバケツから零したように濃く塗られ、夜を指していることに気が付く。
時間も忘れてペンを執っていたことに苦笑するも、その時間が今の私にとっては、一番の幸福であることに違いは無い。書き綴ったこの物語が完成する時、その幸福が永遠になることを祈っている。あの子にも……私にとっても。
シルクのヘアゴムに指をかけ、低い位置で二束に分けて丁寧に結ばれていた髪を解く。閉じたノートを胸に抱いて、かつてと代わりない言葉を零した。きっと、あなたへ届くように。
「……おやすみなさい」
――私の最愛のひと。
覚えていますか?
布団の中にひみつきちを作って、月明かりに見守られながらママには内緒の話をしたこと。
幼い妄想を膨らませては、物語の中に私たちの幸福を描いたこと。
その全てを、手放さないでくれていますか?
星の煌めきに、
夢の続きに、
運命の糸の先に、
愛するあなたの姿を見た時、
どうか、私の呼び掛けに答えて欲しい。
そして、叶うのなら。もう一度だけ、あなたの優しい声で、私の名前を呼んで欲しい。
冷えた夜風に肌を撫でられ、赤く彩られた厚手のノートに向けていた視線を、ゆったりとした動作で窓に移した。どうやら僅かな隙間から部屋に吹き込んだようで、鍵のハンドルを閉めようとすれば、すっかり空は藍のペンキをバケツから零したように濃く塗られ、夜を指していることに気が付く。
時間も忘れてペンを執っていたことに苦笑するも、その時間が今の私にとっては、一番の幸福であることに違いは無い。書き綴ったこの物語が完成する時、その幸福が永遠になることを祈っている。あの子にも……私にとっても。
シルクのヘアゴムに指をかけ、低い位置で二束に分けて丁寧に結ばれていた髪を解く。閉じたノートを胸に抱いて、かつてと代わりない言葉を零した。きっと、あなたへ届くように。
「……おやすみなさい」
――私の最愛のひと。
覚えていますか?
布団の中にひみつきちを作って、月明かりに見守られながらママには内緒の話をしたこと。
幼い妄想を膨らませては、物語の中に私たちの幸福を描いたこと。
その全てを、手放さないでくれていますか?
星の煌めきに、
夢の続きに、
運命の糸の先に、
愛するあなたの姿を見た時、
どうか、私の呼び掛けに答えて欲しい。
そして、叶うのなら。もう一度だけ、あなたの優しい声で、私の名前を呼んで欲しい。
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