光明捧げる『が…』の後


一 凱斗
【20XX年の7月9日/19時00分/迅の車の中】


「じゃ、ありがとな」
「……なぁ、行く前に、少し話させてくれ」
 シートベルトを外すのをとめて、迅の方へ向き直した。
「んだよ」
「ちょっと、宣言しときたくてさ」
 やけに深刻そうなトーンなので、少し心持ちを整える。

「俺、お前が勝ったら今まで通りの友達で居らんねぇや」
「なんでだよ」
「初めて彼女できて気がついたけど、どうやら嫉妬深いらしい」
「お前が?」
 コクンと首をゆっくり振って反応する。
 あんまり想像ができなかった。常に飄々としてるヤツでも、余裕のない時があるらしい。

「でも、嫌われたくないんだ。
 お前にも、彼女にも。矛盾してるよな」
「……なら関わんなかったらいいだろ」
「できたら悩まないよ」
 眉間に皺を寄せながら鼻で笑って、少し貧乏ゆすりをはじめた。俺は俺なりに、コイツなりに、答えの向き合い方を考えてる。やっぱり、似た者同士だ。

「帰したくない」
「それ、女にやれよ」
「はは、そうかも」
 二人して、伏目がちだ。ウィンカーの音がやけに煩く感じる。
「そうだ、これやる」
 気まずい空気感の中、そう言って差し出された木箱を受け取って中を開けてみると、前に使ってたクマのマグカップが入っていた。
「誕生日おめでとう。それ、俺から……」
「だからっ!女にやれよ!!」
「やる女いねーからだよ!分かるだろ!」
 応酬が終わると、これまでの緊張が解けたのか、お互いふきだして笑っていた。今までのやりとりが、嘘みたいに。

「ありがとう。クマ好きだから、嬉しいよ」
「知ってる」
「……俺はさ」
 いつも感謝が後回し分、親友が悩んでる分、これに関しては、言葉で直接伝えておきたくて、
「結果がどうであれ、迅ちゃんとはさ、仲良くはなんなくても、今みたいに馬鹿してる気がする」
 つい、口走った。

「お、おぉ」
「じゃ、今度こそありがとな」
「……おう」

 シートベルトをはずして木箱を抱えて車からいそいそと外に出た。むわっとした暑さが身体にまとわりつく。振り返らず、エントランスの扉に手をかけた時、窓を開けて迅が喋りかけてきた。

「胃薬!飲んどけよ!」
「はぁ?なんで!」
「なんでも!」

 そう言い残して、路肩に停めてた車を発進させた。「まぁ、いいか」とエントランスを開けて、階段を上がってく。3階の突き当たりにある部屋が、俺の今帰る場所だ。
 ゆっくり深呼吸して、鍵を開け、ドアノブを回す。

「ただいま」

 その直後、悲鳴が聞こえ、キッチンの方がオレンジ色に光った
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