+++ 2016 バレンタイン企画 +++
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(さて……ちょっくら買い物にでも行きますかね)
仕事が休みのある日。私はバレンタインの買い出しに出掛けようとしていた。ビビちゃんに教えてもらった手作りチョコのレシピのメモを手に、財布を持って部屋を出ようとした、その時。部屋の電伝虫が、ぷるぷるぷるぷるぷる……と鳴きだした。クロコダイルが部屋にいないときは、私が代わりに電話に出ることになっている。私は一旦デスクまで戻り、受話器を取った。
「もしもし」
「おぉ、ミス・アニヴェルセルか? 私だ」
「副支配人。オーナーに御用ですか?」
「いや。お前に電話なんだが……繋いでも構わないだろうか?」
「私に? ええ、お願いします」
ビビちゃんとは子電伝虫の番号を交換し合っているので、店の電話に掛かってくることはないと思う。クロコダイルもロビンさんも、よっぽど遠くに出掛けていない限りは子電伝虫に掛けてくるはずだし……それ以外で、わざわざ店を通じて私に電話を掛けてくるような相手がいただろうか? 心当たりはなかったが繋ぐように頼むと、受話器の向こうから、ぷるぷるぷるぷるぷる……がちゃ、と電伝虫の回線が繋がる音が聞こえた。
「もしもし?」
「フッフッフ! よう、ネーナ。元気にしてるか?」
アンタか……。耳元から聞こえてくるドフラミンゴの不敵な笑い声に、私は露骨に顔を顰める。声にありありと不機嫌さが滲むのも意に介さず、私はその声に応えた。
「……何の用?」
「フッフッフ! つれねェ奴だ……まァいい。そろそろ『あの』季節だろう?」
「あー……バレンタインね……。作ればいいんでしょ、作れば」
去年もHeaven's Bellに同じような脅迫電話がかかってきたので、私は観念する。去年はのらりくらりと拒否しようとしたのだが、最終的にはチョコを渡すのが嫌なら、と、口に出すもの憚られるような行為を要求されたので、泣く泣く手作りする破目になったのだ。本当に、海賊という生き物は、欲しい物を手に入れるためなら手段を選ばないから嫌になる。
「分かってるじゃねェか。ただし、条件がある……!」
電話越しに凄まれて、私は情けなくもビクリと肩を震わせる。何かとんでもない事を言い出すんじゃないかとヒヤヒヤして次の言葉を待っていると、返ってきたのは意外な言葉だった。
「ハート型だ」
「……は?」
「お前、去年のアレは何だ? 溶かしたチョコをタッパーに入れて固めただけみてェな色気のねェモンは、今年は許さねェ」
「う……」
まさしくその通りの代物だったので、何も言い返せない。しかしまさか、形まで指定してくるとは思わなかった。断れば、後で何をされるか分かったもんじゃない。私は溜息を吐いて、渋々承諾する。流石に手渡しは無理なので、送り先の住所を聞いて、私は電話を切った。
(くっそー……面倒臭いなぁ……あ)
溜息を吐いた私の脳裏に、以前たまたま入った輸入雑貨店で売っていたお菓子が浮かぶ。ハートの形をしたパイのような、アレをチョコにくぐらせれば一応手作りという面目も立つのではないだろうか。
よし、それでいこう。私はメモに「ハートのパイ」「板チョコ+1」と書き加えて、部屋を出る。心の中では、あの小憎たらしいピンクモフモフコート野郎に、目一杯悪態をつきながら。
*****
お題配布元:color season様
バレンタイン[1]
くそくらえだ!
仕事が休みのある日。私はバレンタインの買い出しに出掛けようとしていた。ビビちゃんに教えてもらった手作りチョコのレシピのメモを手に、財布を持って部屋を出ようとした、その時。部屋の電伝虫が、ぷるぷるぷるぷるぷる……と鳴きだした。クロコダイルが部屋にいないときは、私が代わりに電話に出ることになっている。私は一旦デスクまで戻り、受話器を取った。
「もしもし」
「おぉ、ミス・アニヴェルセルか? 私だ」
「副支配人。オーナーに御用ですか?」
「いや。お前に電話なんだが……繋いでも構わないだろうか?」
「私に? ええ、お願いします」
ビビちゃんとは子電伝虫の番号を交換し合っているので、店の電話に掛かってくることはないと思う。クロコダイルもロビンさんも、よっぽど遠くに出掛けていない限りは子電伝虫に掛けてくるはずだし……それ以外で、わざわざ店を通じて私に電話を掛けてくるような相手がいただろうか? 心当たりはなかったが繋ぐように頼むと、受話器の向こうから、ぷるぷるぷるぷるぷる……がちゃ、と電伝虫の回線が繋がる音が聞こえた。
「もしもし?」
「フッフッフ! よう、ネーナ。元気にしてるか?」
アンタか……。耳元から聞こえてくるドフラミンゴの不敵な笑い声に、私は露骨に顔を顰める。声にありありと不機嫌さが滲むのも意に介さず、私はその声に応えた。
「……何の用?」
「フッフッフ! つれねェ奴だ……まァいい。そろそろ『あの』季節だろう?」
「あー……バレンタインね……。作ればいいんでしょ、作れば」
去年もHeaven's Bellに同じような脅迫電話がかかってきたので、私は観念する。去年はのらりくらりと拒否しようとしたのだが、最終的にはチョコを渡すのが嫌なら、と、口に出すもの憚られるような行為を要求されたので、泣く泣く手作りする破目になったのだ。本当に、海賊という生き物は、欲しい物を手に入れるためなら手段を選ばないから嫌になる。
「分かってるじゃねェか。ただし、条件がある……!」
電話越しに凄まれて、私は情けなくもビクリと肩を震わせる。何かとんでもない事を言い出すんじゃないかとヒヤヒヤして次の言葉を待っていると、返ってきたのは意外な言葉だった。
「ハート型だ」
「……は?」
「お前、去年のアレは何だ? 溶かしたチョコをタッパーに入れて固めただけみてェな色気のねェモンは、今年は許さねェ」
「う……」
まさしくその通りの代物だったので、何も言い返せない。しかしまさか、形まで指定してくるとは思わなかった。断れば、後で何をされるか分かったもんじゃない。私は溜息を吐いて、渋々承諾する。流石に手渡しは無理なので、送り先の住所を聞いて、私は電話を切った。
(くっそー……面倒臭いなぁ……あ)
溜息を吐いた私の脳裏に、以前たまたま入った輸入雑貨店で売っていたお菓子が浮かぶ。ハートの形をしたパイのような、アレをチョコにくぐらせれば一応手作りという面目も立つのではないだろうか。
よし、それでいこう。私はメモに「ハートのパイ」「板チョコ+1」と書き加えて、部屋を出る。心の中では、あの小憎たらしいピンクモフモフコート野郎に、目一杯悪態をつきながら。
*****
お題配布元:color season様
バレンタイン[1]
くそくらえだ!