+++ 2016 バレンタイン企画 +++
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ある昼下がり。ビビちゃんにお茶に誘われて、私は彼女の部屋のバルコニーで、砂漠を吹き渡る風を感じていた。テラコッタさんが用意してくれた紅茶の上品な香りにうっとりしていると、隣にいたビビちゃんが突然、目を輝かせて訊ねてきた。
「ねぇ、アニーさんはバレンタイン、誰にチョコあげるの?」
「え? あぁ、もうそんな時期かぁ。全然考えてなかったなぁ」
ビビちゃんの言葉で、私は2月のメインともいえるイベントの存在を思い出す。メインイベントといっても私がそれに関わった経験はあまりなく、せいぜいその当日店に来た客と、図々しくも手作りチョコをねだってくるV.I.P.客にチョコレートを振る舞う程度だった。
「えぇ~?! ダメよ、日頃お世話になっている人達にはちゃんと渡さなくちゃ!」
ビビちゃんは不満げな声をあげる。成程、ビビちゃんの中ではバレンタインはまだそういう位置付けなのか。私はそうだね、と相槌を打ちながら、彼女が恋する相手にチョコを渡す日が来たら、王はどんな反応をするだろうか、と想像して小さく笑った。
「私は毎年手作りするの! 今年はパパとイガラムとチャカとペルにあげて、コーザにも送ろうかな!」
「コーザ?」
初めて聞く名前だ。私が聞き返すと、ビビちゃんは話したことなかったかしら、と首を傾げた。
「砂砂団のリーダーだった男の子よ。随分前にユバっていう町に引っ越しちゃったんだけど、ずっと手紙のやり取りはしているの」
砂砂団の話は以前聞いたことがあったが、リーダーの男の子とそんなに親しくしている、というのは初耳だった。離ればなれになって長いのにそうやってやり取りが続いているなんて、もう立派なボーイフレンドなんじゃ、と思ったが、ビビちゃんが無自覚なのだとしたら下手な事を言うと気まずくなってしまうかもしれない。私は緩む頬を抑えようと、紅茶を一口啜った。
「アニーさんは? クロコダイルさんにはあげるわよね?」
ぶはっ!
突然告げられた名前に分かり易く動揺して、私は盛大に紅茶を噴き出す。やだ、大変! と言ってビビちゃんはパタパタと部屋に戻り、タオルを持ってきてくれた。私はごめん、と謝りながら口元と濡れたテーブルを拭く。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫……ごめんね。でもそうだね、クロコダイルにはあげるかな。『お世話になってる』し」
お世話になっているから、というのを強調して、私は頷く。ビビちゃんはやっぱり、とでも言うように笑顔になった。
「そうよね! あれ? そしたら、パパもクロコダイルさんにチョコあげた方がいいのかしら? 海賊討伐してもらったりしてるし」
「うん、その必要はないんじゃないかな」
少女の無邪気な思い付きは、想像するだけで面白過ぎるので、主に代わって丁重にお断りしておく。そう? と、どことなく残念そうにしているビビちゃんは、一体どこへ向かおうとしているのだろう。そこに右だの左だのと邪な思いが宿らないことを、私は切に祈る。
(それにしても、バレンタインかぁ……)
どうしようかな、と思いながら、私は空を仰いだ。脳裏に浮かんだ数人の顔。その顔が笑顔になってくれるなら、ちょっとは頑張ってみてもいいかもしれない。レインベースに戻ったら、製菓の材料を揃えられる店を探してみよう。そんな事を考えながら、私はお茶請けのクッキーに手を伸ばした。
*****
お題配布元:TOY様
★ドキドキ編
・誰にあげる?
「ねぇ、アニーさんはバレンタイン、誰にチョコあげるの?」
「え? あぁ、もうそんな時期かぁ。全然考えてなかったなぁ」
ビビちゃんの言葉で、私は2月のメインともいえるイベントの存在を思い出す。メインイベントといっても私がそれに関わった経験はあまりなく、せいぜいその当日店に来た客と、図々しくも手作りチョコをねだってくるV.I.P.客にチョコレートを振る舞う程度だった。
「えぇ~?! ダメよ、日頃お世話になっている人達にはちゃんと渡さなくちゃ!」
ビビちゃんは不満げな声をあげる。成程、ビビちゃんの中ではバレンタインはまだそういう位置付けなのか。私はそうだね、と相槌を打ちながら、彼女が恋する相手にチョコを渡す日が来たら、王はどんな反応をするだろうか、と想像して小さく笑った。
「私は毎年手作りするの! 今年はパパとイガラムとチャカとペルにあげて、コーザにも送ろうかな!」
「コーザ?」
初めて聞く名前だ。私が聞き返すと、ビビちゃんは話したことなかったかしら、と首を傾げた。
「砂砂団のリーダーだった男の子よ。随分前にユバっていう町に引っ越しちゃったんだけど、ずっと手紙のやり取りはしているの」
砂砂団の話は以前聞いたことがあったが、リーダーの男の子とそんなに親しくしている、というのは初耳だった。離ればなれになって長いのにそうやってやり取りが続いているなんて、もう立派なボーイフレンドなんじゃ、と思ったが、ビビちゃんが無自覚なのだとしたら下手な事を言うと気まずくなってしまうかもしれない。私は緩む頬を抑えようと、紅茶を一口啜った。
「アニーさんは? クロコダイルさんにはあげるわよね?」
ぶはっ!
突然告げられた名前に分かり易く動揺して、私は盛大に紅茶を噴き出す。やだ、大変! と言ってビビちゃんはパタパタと部屋に戻り、タオルを持ってきてくれた。私はごめん、と謝りながら口元と濡れたテーブルを拭く。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫……ごめんね。でもそうだね、クロコダイルにはあげるかな。『お世話になってる』し」
お世話になっているから、というのを強調して、私は頷く。ビビちゃんはやっぱり、とでも言うように笑顔になった。
「そうよね! あれ? そしたら、パパもクロコダイルさんにチョコあげた方がいいのかしら? 海賊討伐してもらったりしてるし」
「うん、その必要はないんじゃないかな」
少女の無邪気な思い付きは、想像するだけで面白過ぎるので、主に代わって丁重にお断りしておく。そう? と、どことなく残念そうにしているビビちゃんは、一体どこへ向かおうとしているのだろう。そこに右だの左だのと邪な思いが宿らないことを、私は切に祈る。
(それにしても、バレンタインかぁ……)
どうしようかな、と思いながら、私は空を仰いだ。脳裏に浮かんだ数人の顔。その顔が笑顔になってくれるなら、ちょっとは頑張ってみてもいいかもしれない。レインベースに戻ったら、製菓の材料を揃えられる店を探してみよう。そんな事を考えながら、私はお茶請けのクッキーに手を伸ばした。
*****
お題配布元:TOY様
★ドキドキ編
・誰にあげる?