砂漠鰐は向日葵畑の夢を見るっぽい?
「誕生日おめでと、クロコダイル」
柱時計が9月5日の訪れを告げたちょうどその瞬間、私はこんな時間までデスクに向かう、ワーカホリック気味な雇い主の背中に声をかけた。
「あ? あァ――そういえばそうだったな」
喜びや驚きといった反応を一切見せず、振り返りもしないで忙しそうに万年筆を動かす背中に一瞬蹴りを入れてやりたくなるが、今日はあくまでこの仕事人間の誕生日。苛立ちをぐっと堪えて、私はコトリ、と用意しておいたプレゼントをデスクに置く。
「? なんだ、これは」
「プレゼント。まぁ、見てみてよ」
それは、彼をイメージした緑色のリボンを掛けた映像電伝虫。クロコダイルは面倒臭そうにしながらもやっとその手を止め、電伝虫のリボンを解くと、目の前の壁をスクリーン代わりにして映像を再生した。
「お誕生日おめでとう、ボス」
「一緒に仕事を始めて長いけど、お互い、誕生日を祝ったことなんてなかったわね」
「いいディーラーにも恵まれたことだし、これからもレインディナーズの発展に努めましょう」
「チャカ。もう映っているのか? そうか。……あー、クロコダイル君。9月5日は君の誕生日だそうだな。ミス・アニヴェルセルから聞いたよ、おめでとう」
「君には海賊討伐など、色々と世話になっている。立場の問題もあるが、1人の友人として、また改めて礼をしたい」
「君にとっての新しい1年を、どうか良い年にしてくれ。それでは、また」
映像が終わり、我ながらいいサプライズが出来た、とホクホクしていると、クロコダイルが肩を震わせ始めた。嘘でしょ? まさか、泣いて――
「テメェ、何のつもりだ……!」
「えっ。なんでマジギレしてんの? や、ちょっ、待っ……ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
深夜のレインディナーズの地下を、砂嵐に追われて逃げ惑うディーラー。その姿を、バナナワニが目を細めて眺めていた。
*****
■うっかり「ユートピア作戦止めとこっかな……」と思ってしまったようです。
2015.09
柱時計が9月5日の訪れを告げたちょうどその瞬間、私はこんな時間までデスクに向かう、ワーカホリック気味な雇い主の背中に声をかけた。
「あ? あァ――そういえばそうだったな」
喜びや驚きといった反応を一切見せず、振り返りもしないで忙しそうに万年筆を動かす背中に一瞬蹴りを入れてやりたくなるが、今日はあくまでこの仕事人間の誕生日。苛立ちをぐっと堪えて、私はコトリ、と用意しておいたプレゼントをデスクに置く。
「? なんだ、これは」
「プレゼント。まぁ、見てみてよ」
それは、彼をイメージした緑色のリボンを掛けた映像電伝虫。クロコダイルは面倒臭そうにしながらもやっとその手を止め、電伝虫のリボンを解くと、目の前の壁をスクリーン代わりにして映像を再生した。
「お誕生日おめでとう、ボス」
「一緒に仕事を始めて長いけど、お互い、誕生日を祝ったことなんてなかったわね」
「いいディーラーにも恵まれたことだし、これからもレインディナーズの発展に努めましょう」
「チャカ。もう映っているのか? そうか。……あー、クロコダイル君。9月5日は君の誕生日だそうだな。ミス・アニヴェルセルから聞いたよ、おめでとう」
「君には海賊討伐など、色々と世話になっている。立場の問題もあるが、1人の友人として、また改めて礼をしたい」
「君にとっての新しい1年を、どうか良い年にしてくれ。それでは、また」
映像が終わり、我ながらいいサプライズが出来た、とホクホクしていると、クロコダイルが肩を震わせ始めた。嘘でしょ? まさか、泣いて――
「テメェ、何のつもりだ……!」
「えっ。なんでマジギレしてんの? や、ちょっ、待っ……ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
深夜のレインディナーズの地下を、砂嵐に追われて逃げ惑うディーラー。その姿を、バナナワニが目を細めて眺めていた。
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■うっかり「ユートピア作戦止めとこっかな……」と思ってしまったようです。
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