+++ 2016 バレンタイン企画 +++
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「突然来たと思ったら……どうしちゃったワケよ、ミンゴちゃん」
海軍本部に程近いバーで、ドフラミンゴはカウンターに突っ伏して正体を失くしていた。近くにいるから来いよ、と電話を掛けてきた時から酔っているな、とは思っていたが、その時よりも更に深酔いしたらしい。困ったように会釈するバーテンダーに悪いね、と一声掛けて、青雉はドフラミンゴの隣に腰掛けた。
「フッフッフ、青雉ィ……お前、あの鰐野郎を叩きのめすには、どうしたらいいと思う……?」
「はァ? 何言ってんの。王下七武海同志の潰し合いはダメだって、何度もセンゴクさんに言われてるでしょうよ」
青雉はバーテンダーにジンフィズを頼むと、そっとドフラミンゴのサングラスに手を伸ばす。ドフラミンゴはその気配をすぐさま察知して、パシ、と手を払いのけると、のそりとその巨躯を起こした。
何がそんなに嫌なのかは知らないが、コイツはサングラスの下に秘められた素顔を見られるのを嫌う。どんなに酔っていても、眠くても、それに触れようとするだけで意識を覚醒させられることを、青雉は知っていた。
「……何かあったのか? バレンタインはアンタの圧勝だったんだろ?」
お陰で俺は賭けに負けちまったんだが、という言葉は、丁度差し出されたジンフィズと一緒に飲み干す。青雉の発した言葉は、ちょうどドフラミンゴの機嫌を悪くさせている根幹部分に触れるものだったらしく、いつもにんまりと嗤っている口元が珍しく歪んだ。
「それなんだが……あの野郎、こっちに送られてきたチョコは今後受け取らなくていい、と言ったらしいな……?」
「ん? ああ、言ったよ。『1か0で』……とか何とか言ってたけど、どういう意味なのかね?」
ダン!
瞬間、ドフラミンゴが拳をカウンターに叩き付ける。一瞬遅れて、青雉は氷を纏った手刀をドフラミンゴの首筋に突き付けていた。
「ちょっと落ち着きなさいよ……頭冷やしたきゃ、外で1戦やっとく?」
「フッフ! 悪ィな……生憎、そういう気分じゃァねェんだ」
そう言うと、ドフラミンゴは立ち上がる。店に来た時の酔いっぷりを思い出して、青雉は大丈夫か、と声を掛けたが、その足取りは意外にしっかりしていた。ドフラミンゴは懐から1万ベリー札を取り出して、カウンターに差し出す。
「呼びつけて悪かったな、これでチャラにしてくれ」
「いや、いいんだけどさ……アンタ、帰れんの?」
「フッフッフ! お前、俺がいくつチョコを貰ったか、忘れたわけじゃねェだろう?」
一夜のベッドと抱き枕ぐらい、すぐに見つかる。そう言って、ドフラミンゴは店を出て行った。
「――なァ。バレンタインのチョコを何個貰うかって話のときに、『1か0でいい』って言うってのは、どういうことなのかね?」
「それは……貰いたい相手が1人いて、その人以外からはいらない……ってことじゃありませんかね?」
自分以外に客のいなくなった店内で、青雉はバーテンダーに訊ねる。その答えは確かにそうかもしれない、と思わせるものだったが、それを言った相手が相手だ。俄かには信じ難い。
(クロコダイルに、そういう相手が出来たってか……? もしそうだとしたら……)
ドフラミンゴのあの機嫌の悪さは、勝負を有耶無耶にしたクロコダイルへの怒りか、或いは――
(その「チョコを貰いたい相手」ってのが、被った――?)
そうだとすれば、それはどんなにかイイ女なことだろう。想像するだけで、青雉の胸も躍る。
(しかし、そんな女が本当にいるとしたら、なかなか厄介だねェ……)
偉大なる航路 の三大勢力である、王下七武海。そのメンバー同士が争うことになれば、甚大な被害は免れないだろう。たとえそれが1人の女であれ、一般人をも巻き込む争いを生む火種になるのであれば、その前に摘み取っておく必要があるかもしれない。
(女の子に手出しはしたくないけど、こんなこと赤犬に知れたら、その子、問答無用で消されちまうだろうしねェ……その前に、ちょっと探り入れとくか……)
また面倒事が増えたなァ、と、青雉は深く溜息を吐く。そんな彼の前に、そっとグラスが差し出された。
「あん? ……これは?」
「サイドカー……サービスです。大将ともなると、色々とご心労も多いでしょうから……青雉殿」
「ハハッ。悪いね」
それでも、こうやって俺達の仕事に感謝してくれる人間がいるから頑張れるのよ。自分が掲げるのは“だらけきった正義”だが、そこだけは間違えないように。青キジは自戒の意も込めて、グラスの中身を一息に飲み干した。
……End.
→Next:あとがき
海軍本部に程近いバーで、ドフラミンゴはカウンターに突っ伏して正体を失くしていた。近くにいるから来いよ、と電話を掛けてきた時から酔っているな、とは思っていたが、その時よりも更に深酔いしたらしい。困ったように会釈するバーテンダーに悪いね、と一声掛けて、青雉はドフラミンゴの隣に腰掛けた。
「フッフッフ、青雉ィ……お前、あの鰐野郎を叩きのめすには、どうしたらいいと思う……?」
「はァ? 何言ってんの。王下七武海同志の潰し合いはダメだって、何度もセンゴクさんに言われてるでしょうよ」
青雉はバーテンダーにジンフィズを頼むと、そっとドフラミンゴのサングラスに手を伸ばす。ドフラミンゴはその気配をすぐさま察知して、パシ、と手を払いのけると、のそりとその巨躯を起こした。
何がそんなに嫌なのかは知らないが、コイツはサングラスの下に秘められた素顔を見られるのを嫌う。どんなに酔っていても、眠くても、それに触れようとするだけで意識を覚醒させられることを、青雉は知っていた。
「……何かあったのか? バレンタインはアンタの圧勝だったんだろ?」
お陰で俺は賭けに負けちまったんだが、という言葉は、丁度差し出されたジンフィズと一緒に飲み干す。青雉の発した言葉は、ちょうどドフラミンゴの機嫌を悪くさせている根幹部分に触れるものだったらしく、いつもにんまりと嗤っている口元が珍しく歪んだ。
「それなんだが……あの野郎、こっちに送られてきたチョコは今後受け取らなくていい、と言ったらしいな……?」
「ん? ああ、言ったよ。『1か0で』……とか何とか言ってたけど、どういう意味なのかね?」
ダン!
瞬間、ドフラミンゴが拳をカウンターに叩き付ける。一瞬遅れて、青雉は氷を纏った手刀をドフラミンゴの首筋に突き付けていた。
「ちょっと落ち着きなさいよ……頭冷やしたきゃ、外で1戦やっとく?」
「フッフ! 悪ィな……生憎、そういう気分じゃァねェんだ」
そう言うと、ドフラミンゴは立ち上がる。店に来た時の酔いっぷりを思い出して、青雉は大丈夫か、と声を掛けたが、その足取りは意外にしっかりしていた。ドフラミンゴは懐から1万ベリー札を取り出して、カウンターに差し出す。
「呼びつけて悪かったな、これでチャラにしてくれ」
「いや、いいんだけどさ……アンタ、帰れんの?」
「フッフッフ! お前、俺がいくつチョコを貰ったか、忘れたわけじゃねェだろう?」
一夜のベッドと抱き枕ぐらい、すぐに見つかる。そう言って、ドフラミンゴは店を出て行った。
「――なァ。バレンタインのチョコを何個貰うかって話のときに、『1か0でいい』って言うってのは、どういうことなのかね?」
「それは……貰いたい相手が1人いて、その人以外からはいらない……ってことじゃありませんかね?」
自分以外に客のいなくなった店内で、青雉はバーテンダーに訊ねる。その答えは確かにそうかもしれない、と思わせるものだったが、それを言った相手が相手だ。俄かには信じ難い。
(クロコダイルに、そういう相手が出来たってか……? もしそうだとしたら……)
ドフラミンゴのあの機嫌の悪さは、勝負を有耶無耶にしたクロコダイルへの怒りか、或いは――
(その「チョコを貰いたい相手」ってのが、被った――?)
そうだとすれば、それはどんなにかイイ女なことだろう。想像するだけで、青雉の胸も躍る。
(しかし、そんな女が本当にいるとしたら、なかなか厄介だねェ……)
(女の子に手出しはしたくないけど、こんなこと赤犬に知れたら、その子、問答無用で消されちまうだろうしねェ……その前に、ちょっと探り入れとくか……)
また面倒事が増えたなァ、と、青雉は深く溜息を吐く。そんな彼の前に、そっとグラスが差し出された。
「あん? ……これは?」
「サイドカー……サービスです。大将ともなると、色々とご心労も多いでしょうから……青雉殿」
「ハハッ。悪いね」
それでも、こうやって俺達の仕事に感謝してくれる人間がいるから頑張れるのよ。自分が掲げるのは“だらけきった正義”だが、そこだけは間違えないように。青キジは自戒の意も込めて、グラスの中身を一息に飲み干した。
……End.
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