+++ 2016 バレンタイン企画 +++
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
最近、ネーナの様子が変だ。ナノハナで香水でも見繕ってきたのか、常に甘い香りを纏っている。仕事に支障をきたす程香りの強い物ではないので咎めはしないが、飾り気のないあの娘でも香水なんかに興味があるのね、とロビンは少し驚いた。
(ボスの気でも引きたいのかしら?)
あの2人の進展のなさには、見ていてやきもきさせられる。ネーナの漂わせている甘い香りが、その状況を少しでも好転させてくれるなら。それは寧ろロビンにとって好ましいことだった。
それにしても、休みの日は店に併設されているレストランの厨房に出入りもしているようだし、一体何をしているのだろう。興味はあるが、その様子から察するに、そこでしていることはなるべく隠しておきたい事のようだ。性格柄、好奇心には逆らえない性質のロビンだったが、それを知られたらネーナが自分を拒絶してしまうのではないか。そんな不安が、彼女をギリギリのところで押し留めていた。
(私の能力を恐れずに接してくれる娘だもの――この関係は、壊したくないわ)
そう思う分、隠し事をされているのは同時に寂しくもあったのだが、ネーナの真っ直ぐな性格上、放っておいてもいずれ明るみに出るかもしれない。そんなことを考えながら、ロビンはいつも通りネーナと接していた。
2月14日。ちょうどその日仕事が休みだったロビンは、レインディナーズの地下の自室で、本を読んで過ごしていた。読んでいるのは、アラバスタ王国の歴史に関する本。自分も関わる今後の作戦の参考になる事柄が書いてはいないか、と備に探しているうちに、昼時を過ぎていたらしい。空腹感に顔を上げると、部屋の掛け時計は15時を少し過ぎた時間を指していた。
(外に出て食べるにしても、ランチタイムはもう終わってる頃だし、変な時間に食べると夕飯でまた悩むし……コーヒーだけでも飲んで間に合わせようかしら)
そう思ってソファから立ち上がろうとしたとき、部屋のドアがノックされた。普段あまり人が訪れることはないので少し驚き、はい、と返した声が上擦ってしまう。
「ロビンさん、ネーナです。ちょっといいですか?」
ネーナ? 今日はホールに出ているはずだが、休憩中だろうか。ええどうぞ、と返すと、失礼します、と声がしてゆっくりとドアが開いた。同時に、このところ嗅ぎ慣れていた甘い香りが部屋中に広がる。それはどうやら、ネーナが持って来たトレンチの上のカップから漂ってきているようだった。
「それは……?」
「えへへ……ロビンさん、Happy Birthday & Valentine、です」
「まぁ……」
目の前のローテーブルに、トレンチが置かれる。そこには小さなケーキと、ふんわり湯気と甘い香りを漂わせる茶色い飲み物の入ったマグカップが乗っている。驚いてそれらを覗き込むロビンに、ネーナは優しく微笑みかける。
「ホットチョコレートです。ケーキは甘さ控え目な方がいいかと思って、ティラミスにしてみました」
ケーキは買って来たやつなんですけど、と言って照れたように笑うネーナ。誕生日を祝われたのなんて、何年ぶりだろう。じんわりと、ロビンの胸に温かいものが拡がっていく。
「ありがとう……スゴく、嬉しい」
ネーナはそれを聞いて嬉しそうに笑うと、時計を見て慌てた。
「いけない! ティータイムに渡したいと思ってちょっと抜け出してきたんで、私、戻りますね!!」
「ふふ……行ってらっしゃい、看板ディーラーさん」
行ってきます、と言って小さく手を振り去っていく背中を見送ると、ロビンはマグカップに手を伸ばす。今日がバレンタインデーだということも、すっかり忘れてしまっていた。
(とすると、厨房に通い詰めてたのはきっと、チョコを手作りするためね)
最近の彼女の様子に漸く合点がいって、ロビンは1人、微笑む。
(こんなに気のつく、いい娘だもの。あの人さえ怖気づかなければ、大丈夫)
ホットチョコレートを一口啜ると、優しい甘さが口いっぱいに広がった。同じように甘い時間が、あの2人にも訪れるといい。ロビンはおまじないでも掛けるかのように、スプーンでくるりと1回、マグカップの中身を掻き回すのだった。
*****
お題配布元:TOY様
★その他編
・今日だっけ?忘れてた。
(ボスの気でも引きたいのかしら?)
あの2人の進展のなさには、見ていてやきもきさせられる。ネーナの漂わせている甘い香りが、その状況を少しでも好転させてくれるなら。それは寧ろロビンにとって好ましいことだった。
それにしても、休みの日は店に併設されているレストランの厨房に出入りもしているようだし、一体何をしているのだろう。興味はあるが、その様子から察するに、そこでしていることはなるべく隠しておきたい事のようだ。性格柄、好奇心には逆らえない性質のロビンだったが、それを知られたらネーナが自分を拒絶してしまうのではないか。そんな不安が、彼女をギリギリのところで押し留めていた。
(私の能力を恐れずに接してくれる娘だもの――この関係は、壊したくないわ)
そう思う分、隠し事をされているのは同時に寂しくもあったのだが、ネーナの真っ直ぐな性格上、放っておいてもいずれ明るみに出るかもしれない。そんなことを考えながら、ロビンはいつも通りネーナと接していた。
2月14日。ちょうどその日仕事が休みだったロビンは、レインディナーズの地下の自室で、本を読んで過ごしていた。読んでいるのは、アラバスタ王国の歴史に関する本。自分も関わる今後の作戦の参考になる事柄が書いてはいないか、と備に探しているうちに、昼時を過ぎていたらしい。空腹感に顔を上げると、部屋の掛け時計は15時を少し過ぎた時間を指していた。
(外に出て食べるにしても、ランチタイムはもう終わってる頃だし、変な時間に食べると夕飯でまた悩むし……コーヒーだけでも飲んで間に合わせようかしら)
そう思ってソファから立ち上がろうとしたとき、部屋のドアがノックされた。普段あまり人が訪れることはないので少し驚き、はい、と返した声が上擦ってしまう。
「ロビンさん、ネーナです。ちょっといいですか?」
ネーナ? 今日はホールに出ているはずだが、休憩中だろうか。ええどうぞ、と返すと、失礼します、と声がしてゆっくりとドアが開いた。同時に、このところ嗅ぎ慣れていた甘い香りが部屋中に広がる。それはどうやら、ネーナが持って来たトレンチの上のカップから漂ってきているようだった。
「それは……?」
「えへへ……ロビンさん、Happy Birthday & Valentine、です」
「まぁ……」
目の前のローテーブルに、トレンチが置かれる。そこには小さなケーキと、ふんわり湯気と甘い香りを漂わせる茶色い飲み物の入ったマグカップが乗っている。驚いてそれらを覗き込むロビンに、ネーナは優しく微笑みかける。
「ホットチョコレートです。ケーキは甘さ控え目な方がいいかと思って、ティラミスにしてみました」
ケーキは買って来たやつなんですけど、と言って照れたように笑うネーナ。誕生日を祝われたのなんて、何年ぶりだろう。じんわりと、ロビンの胸に温かいものが拡がっていく。
「ありがとう……スゴく、嬉しい」
ネーナはそれを聞いて嬉しそうに笑うと、時計を見て慌てた。
「いけない! ティータイムに渡したいと思ってちょっと抜け出してきたんで、私、戻りますね!!」
「ふふ……行ってらっしゃい、看板ディーラーさん」
行ってきます、と言って小さく手を振り去っていく背中を見送ると、ロビンはマグカップに手を伸ばす。今日がバレンタインデーだということも、すっかり忘れてしまっていた。
(とすると、厨房に通い詰めてたのはきっと、チョコを手作りするためね)
最近の彼女の様子に漸く合点がいって、ロビンは1人、微笑む。
(こんなに気のつく、いい娘だもの。あの人さえ怖気づかなければ、大丈夫)
ホットチョコレートを一口啜ると、優しい甘さが口いっぱいに広がった。同じように甘い時間が、あの2人にも訪れるといい。ロビンはおまじないでも掛けるかのように、スプーンでくるりと1回、マグカップの中身を掻き回すのだった。
*****
お題配布元:TOY様
★その他編
・今日だっけ?忘れてた。