+++ 2016 バレンタイン企画 +++
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***2月14日 朝***
「ふぁ……おはよ、クロコダイル」
「……ああ」
恥ずかしげもなくすっぴんを晒し、欠伸をするネーナを見て、俺は溜息を吐く。全く、色気も何もあったもんじゃない。呆れながら姿見に向かいアスコットタイを結ぶ俺の脇を通り過ぎて、ネーナはクローゼットに入る。日課であるF-ワニの餌やりに行くのだろう。
(……そういえば)
今日だったか、と思い出す。カレンダーに付けた印。結局一度もその意味を聞かれることなく、今日を迎えた。ディーラー達の中には、デートの予定を入れたいからこの日は休ませて欲しい、と言ってくる者もいたと聞いている。この女はそういう話を聞いたりはしないのだろうか。まさか他のディーラー達と馴染めていないのでは、と違う心配が首を擡げたのと同時に、Tシャツにジーンズというラフな格好に着替えたネーナがクローゼットから出てきた。ネーナは餌やり行ってくるね、と言って部屋を出て行く。俺はその背中を見送ると、ニコ・ロビンの部屋に電話を掛けた。気怠げに電話に出た彼女に、店の人間関係で何か問題があれば報告しろ、とだけ指示を出すと、俺もネーナを追って部屋を出た。
地下から店へ出ると、早番の連中が掃除をしながら一斉におはようございます、と挨拶してくる。ああ、と適当に返すと、3人の女ディーラーが駆け寄ってきた。手にはそれぞれ、色とりどりにラッピングされた小さな包みを持っている。
「お、オーナー! あの……っ」
「これ、受け取ってください!」
「私達からの気持ちです!」
やっぱり、来たか。何人かはいると思っていたが、今年からはアイツ以外からは受け取らないと決めていた俺は、なるべく申し訳なさそうに映るよう眉尻を下げ、答える。
「悪いが、俺は海賊だ。『宝』を奪いはするが、差し出された物をただ受け取るのは性に合わなくてな」
「「「~~~……っ!」」」
予め考えておいた断り文句がお気に召したらしく、女共は顔を真っ赤にして悶絶している。俺はその隙に、コートを翻して裏口へ向かった。
裏口を出てF-ワニの元へと向かうと、その頭を撫でてやりながら手ずから餌をやっていたネーナがこちらに気付き、おや、といった顔をして呑気に声を掛けてきた。
「あれ、チョコは? 3人渡すって言ってたけど」
「……くだらねェ。こんな俗なイベントに付き合ってなんぞいられるか」
「ふーん」
知っていたのか、という気持ちが過ると同時に、F-ワニの餌が入ったバケツの隣に、ネーナが部屋を出たときには持っていなかった紙袋が置かれていることに気付く。まさか。
「じゃあこれも、受け取ってもらえない? 日頃の感謝の気持ち、なんだけど」
そう言って、ネーナはずい、と紙袋を差し出す。日頃の感謝、というのがコイツらしくて、俺は思わずクハ、と笑みを漏らした。
「まぁ、そういう事なら、受け取ってやらなくもねェ」
ピンクや赤などといういかにもな色でなく、シックな茶色い紙袋に込められた想いを受け取ろうと、俺が手を伸ばした、次の瞬間。
パクッ
「!?」
「えっ?! ちょっと、アン! ダメだよ、紙なんて食べちゃ!!」
ツッコむところはそこじゃねェだろう、と思いながら、俺はネーナと二人掛かりで、その口を抉じ開けようと試みる。だがそれは驚くべき力でしっかりと閉じられ、F-ワニは初めて味わうであろう甘味に、幸せそうに目を細めていた。砂にしてやろうかとも思ったが、ネーナがこの悪戯っ子に名前までつけて可愛がっているらしいことが窺えて、思い留まる。ネーナも、肩を落として溜息を吐いた。
「あーあ……手作り頑張ったのに」
「……そう、だったのか」
いつの間に、と思うと同時に、色気がないと思っていたこの女が手作りチョコを用意していたことに、体がむず痒くなる。しょうがないか、と困ったように笑うネーナの頭を、俺はぐしゃぐしゃと撫でた。
「あんまり旨そうだったから、ソイツも食いたくなったんだろう。また、作れ」
「……ふふっ。そうだね」
それじゃ、行ってらっしゃい、と言って、ネーナはバケツを持って脇に寄る。ああ、と答えてF-ワニの背に乗ると、俺は恨みを込めていつもより強めに、鞭を打つハンドルを引いた。
*****
お題配布元:TOY様
★ギャグ編
・ペットが食べちゃった…!
「ふぁ……おはよ、クロコダイル」
「……ああ」
恥ずかしげもなくすっぴんを晒し、欠伸をするネーナを見て、俺は溜息を吐く。全く、色気も何もあったもんじゃない。呆れながら姿見に向かいアスコットタイを結ぶ俺の脇を通り過ぎて、ネーナはクローゼットに入る。日課であるF-ワニの餌やりに行くのだろう。
(……そういえば)
今日だったか、と思い出す。カレンダーに付けた印。結局一度もその意味を聞かれることなく、今日を迎えた。ディーラー達の中には、デートの予定を入れたいからこの日は休ませて欲しい、と言ってくる者もいたと聞いている。この女はそういう話を聞いたりはしないのだろうか。まさか他のディーラー達と馴染めていないのでは、と違う心配が首を擡げたのと同時に、Tシャツにジーンズというラフな格好に着替えたネーナがクローゼットから出てきた。ネーナは餌やり行ってくるね、と言って部屋を出て行く。俺はその背中を見送ると、ニコ・ロビンの部屋に電話を掛けた。気怠げに電話に出た彼女に、店の人間関係で何か問題があれば報告しろ、とだけ指示を出すと、俺もネーナを追って部屋を出た。
地下から店へ出ると、早番の連中が掃除をしながら一斉におはようございます、と挨拶してくる。ああ、と適当に返すと、3人の女ディーラーが駆け寄ってきた。手にはそれぞれ、色とりどりにラッピングされた小さな包みを持っている。
「お、オーナー! あの……っ」
「これ、受け取ってください!」
「私達からの気持ちです!」
やっぱり、来たか。何人かはいると思っていたが、今年からはアイツ以外からは受け取らないと決めていた俺は、なるべく申し訳なさそうに映るよう眉尻を下げ、答える。
「悪いが、俺は海賊だ。『宝』を奪いはするが、差し出された物をただ受け取るのは性に合わなくてな」
「「「~~~……っ!」」」
予め考えておいた断り文句がお気に召したらしく、女共は顔を真っ赤にして悶絶している。俺はその隙に、コートを翻して裏口へ向かった。
裏口を出てF-ワニの元へと向かうと、その頭を撫でてやりながら手ずから餌をやっていたネーナがこちらに気付き、おや、といった顔をして呑気に声を掛けてきた。
「あれ、チョコは? 3人渡すって言ってたけど」
「……くだらねェ。こんな俗なイベントに付き合ってなんぞいられるか」
「ふーん」
知っていたのか、という気持ちが過ると同時に、F-ワニの餌が入ったバケツの隣に、ネーナが部屋を出たときには持っていなかった紙袋が置かれていることに気付く。まさか。
「じゃあこれも、受け取ってもらえない? 日頃の感謝の気持ち、なんだけど」
そう言って、ネーナはずい、と紙袋を差し出す。日頃の感謝、というのがコイツらしくて、俺は思わずクハ、と笑みを漏らした。
「まぁ、そういう事なら、受け取ってやらなくもねェ」
ピンクや赤などといういかにもな色でなく、シックな茶色い紙袋に込められた想いを受け取ろうと、俺が手を伸ばした、次の瞬間。
パクッ
「!?」
「えっ?! ちょっと、アン! ダメだよ、紙なんて食べちゃ!!」
ツッコむところはそこじゃねェだろう、と思いながら、俺はネーナと二人掛かりで、その口を抉じ開けようと試みる。だがそれは驚くべき力でしっかりと閉じられ、F-ワニは初めて味わうであろう甘味に、幸せそうに目を細めていた。砂にしてやろうかとも思ったが、ネーナがこの悪戯っ子に名前までつけて可愛がっているらしいことが窺えて、思い留まる。ネーナも、肩を落として溜息を吐いた。
「あーあ……手作り頑張ったのに」
「……そう、だったのか」
いつの間に、と思うと同時に、色気がないと思っていたこの女が手作りチョコを用意していたことに、体がむず痒くなる。しょうがないか、と困ったように笑うネーナの頭を、俺はぐしゃぐしゃと撫でた。
「あんまり旨そうだったから、ソイツも食いたくなったんだろう。また、作れ」
「……ふふっ。そうだね」
それじゃ、行ってらっしゃい、と言って、ネーナはバケツを持って脇に寄る。ああ、と答えてF-ワニの背に乗ると、俺は恨みを込めていつもより強めに、鞭を打つハンドルを引いた。
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お題配布元:TOY様
★ギャグ編
・ペットが食べちゃった…!
