世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
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「だってあの人、本気だって言ったのよ!? 子供が出来たら一緒になろう、って! それなのに!!」
最後にそう叫んで、元支配人に店から追い出された先輩ディーラーの姿を、今でも覚えている。そしてそれ以降、一緒になることを仄めかして避妊具を着けずにトンズラするような客や、最中に避妊具を外すような客に当たってしまった女ディーラーは、ステラに泣き付くようになったのだった。
愛しているから、着けないとか。
大事にしたいから、着けるとか。
どうでもいい相手だから、着けないとか。
遊びで面倒なことになりたくないから、着けるとか。
そんな物では「愛」という目に見えないものを計ることなど出来ないなんて、男女のことに疎い私でも、流石に分かっているつもりだ。
──それでも、私は。
昨夜、粘膜に直に触れた体温から、「それ」を感じたような気がしたのだ。
顔だけで振り返って、綺麗に整えられたロングサイズのキングベッドを見つめる。店に出ている間にルームキーパーが整えたらしいそこには、昨夜の痕跡は既にない。それでも、天井が、壁が、調度品が、その全てを見ていたような気がして──私はつい、心の中でそれらに問い掛けてしまう。
──私は「これ」を、どう捉えたらいいの……?
くしゃり、手の中で小さな音がする。握り潰した紙切れは、今の私の心を具現化したかのようにぐちゃぐちゃだ。小さくなったそれをテーブルの上に転がして、私は深く溜息を吐いた。
正直なところ、クロコダイルとこうなったことは、自分にとってあまりに唐突な出来事で。彼との間に子供ができたら、なんてことには、昨日の今日では到底考えが及んでいなかった。
そりゃあ、好いた相手との子供を産めたなら、それは素敵なことだなぁとは思う。けれど、「今」そうなりたいかと聞かれれば、答えはYesではなさそうだった。
(──そもそも、二度目があるかだって分からないのに)
昨夜のことが、単にそういう空気になったから起きた、ハプニングのようなものであったとするならば。件の薬を使うのは、むしろ妥当なように思えた。Heaven's Bellでそれを使わざるを得なかった子達は、口々に相手の男を最低だ、と罵っていたけれど。状況が全然違うとはいえ、私にクロコダイルを罵ってやろうなどという気は、全くと言っていい程起きていない。
けれど、疑問は残っていた。昨夜感じた「それ」が本物ならば。私の想いも聞いて、それからどうするかを、2人で考えたって良かったのではないか。
──そうでなきゃ、重なり合ったのに、どこか……寂しい。
クロコダイルのいないこの部屋は、いつもより少し、室温が低く感じる。手離しがたい、厄介な温もりに触れてしまった。私は今日何度目か分からない溜息を吐くと、ソファから立ち上がって、エキストラベッドへと倒れ込んだ。お日様と砂の香りがする柔らかなタオルケットに、彼の温もりを求めて。
......To be continued.