砂の墓標
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日が暮れかけて夜の空気に変わりつつある街角で、私は超カルガモタクシーを待っていた。右手にはクザンさんがお土産に、と持たせてくれたケーキボックス。先程別れたばかりのマイペースな背の高い後ろ姿を思い出して、私はふ、と笑う。
(面白い人だったなぁ、クザンさん)
ドドドドド……と砂煙を上げて近付いてくる音に振り返ると、1羽の超カルガモが勢いよく走ってきたところだった。彼はタクシー乗り場で待つ私の姿に気付くと、スピードを緩めてぴったり乗り場の前で停止した。
「クエッ!」
「ふふ、こんばんは。レインベースのレインディナーズまでお願い出来る?」
「クエーッ!」
元気良く返事をして、超カルガモは乗り易いように、と屈んでくれる。私はありがとう、と言うとその背に跨って鐙に足を掛けた。彼は私がしっかり鐙に足を掛けて手綱を握ったことを確認すると、クエッ!と一声鳴いて走り出す。
初めは緩やかだった足取りも、アラバスタ最速といわれるその脚力でもって、すぐにトップスピードに乗る。両手で手綱と一緒に握ったケーキボックスの中身が心配だったが、そのスピードに反して驚く程揺れは少なく、この調子であれば店まで無事に持ち帰ることが出来そうだった。
(それにしても──)
あっという間に後ろへと過ぎ去っていく街の景色を眺めながら、私はぼんやりと考える。
(クザンさんとスモーカーさんが知り合いだったなんてなぁ……)
脳裏に銀髪の不機嫌顔が思い浮かんで、元気にしてるかな、と心の中で呟く。超カルガモのあげる砂煙が、煙の能力者である彼の姿と重なって、私は小さく笑った。
*****
「えっ?! クザンさん、スモーカーさんのこと知ってるんですか?!」
ロビンさんと来ようと思っていた、最近オープンしたばかりのカフェのテラス席で、私は素っ頓狂な大声をあげる。テラス席に面した歩道を歩いていた人達がなんだなんだ、とこちらを見たので、私は口元を抑えて小さくなった。そんな様子を見て、クザンさんはハハッ、と笑う。
「何言ってんのよ、アニヴェルセルちゃん。俺とスモーカーはマブよ、マブ! ここに来る前にだって、最近どうだーって、電伝虫で話したばっかりなんだから」
店へと向かう道すがらで互いに名乗り合った私達は、クザンさんののんびりした調子も手伝って、あっという間に打ち解けた。
クザンさんは仕事で長期休暇を貰ってアラバスタへ来たのだと言い、何の仕事をしているのかと聞けば、海兵だという。それでもしかして、と思ってスモーカーさんの名前を出してみれば、なんと友人だというではないか。世間って狭いなぁ、と、私は笑ってしまった。
「そうだったんですね! スモーカーさん、元気にしてましたか?」
「あァ。相変わらず、海賊相手に派手にやってるみたいよ。ここだけの話、可愛い女の子の部下が出来て、鼻の下伸ばしちゃってるとかなんとか……」
「えぇっ、ホントですか?! スモーカーさんも隅に置けないなぁ、もう!」
あのスモーカーさんが女の子にデレデレしてる姿が想像出来なくて、私はついはしゃいでしまう。ちょうどそこへ、ウェイターが注文した品を持ってやって来た。彼はアイスコーヒーをクザンさんの前に、アイスカフェラテとクザンさんが頼んでくれたフルーツタルトを私の前に置いて、ごゆっくりどうぞ、と言って去って行った。
「あれ、でもそうやって電伝虫で近況報告しあってるってことは、クザンさんはスモーカーさんとは同じ支部じゃないんですね?」
「ん──あァ、まァな。俺は優秀だから」
タルトの上に乗った色とりどりのフルーツに目を奪われて、私はへぇ、そうなんですね、と気のない返事をする。クザンさんはそんな私の様子に小さく笑うと、アイスコーヒーを一口啜った。
「──アニヴェルセルちゃんは、カジノのディーラーなんだったか。店の名前は何て言うの? 遊びに行かせてもらおうかな」
「本当ですか?! 是非いらしてください! レインベースにある、レインディナーズっていうお店なので」
クザンさんの言葉に目を輝かせて彼の方を見ると、そのサングラスに隠された目が一瞬、ギラリ、と鋭く光ったような気がした。おや、と思ったのも束の間、クザンさんは驚いたような声をあげた。
「え?! そうなの?! いや、ちょうどその店には行こうと思ってたんだよ。スモーカーからいい店だから行ってみろって薦められててさァ」
「わ、スモーカーさん宣伝してくれてるんですね! 嬉しい!!」
「スモーカーのオススメなんてアテにならないと思ってたけど……こんなに可愛いディーラーさんがいるんじゃァ、行かないわけにはいかねェなァ」
「ふふ、ありがとうございます!」
クザンさんはそう言うと、サングラスの奥でパチン!と1つ、ウィンクをしてみせた。
「そういやァ、アニヴェルセルちゃんの今日会う予定だった連れってのも──さっきチラッと見えただけだけど、えらい別嬪さんだったなァ。あの姉ちゃんも、ディーラー仲間なの?」
「ああ、ミス・オールサンデーですか? 彼女はディーラーじゃなくて、うちの支配人ですよ。クザンさんの言う通り、美人で、聡明で、とっても素敵な方なんです」
フォークでタルトを一口大に切りながら応えると、クザンさんは、へぇ……とどこか遠い目をしながら呟いた。どうしたんですか、と聞こうかと思ったが、どこか触れてはいけないような冷たい空気を感じて、私は黙ってタルトを口へと運ぶ。しっとりとしたタルト生地の食感と苺の甘酸っぱさ、キウイの酸味が口の中で混ざり合って思わず頬を綻ばせたのを、クザンさんは見逃さなかったらしい。
「どう、美味い?」
口いっぱいに頬張り過ぎて応えることが出来ずコクコクと頷いた私を見て、クザンさんは笑った。
「──じゃあ、そのミス・オールなんとかちゃんにもお土産に持って帰りなよ。せっかくの約束がダメになっちゃったしさ」
「そうですね! そうします!!」
テイクアウト用のショーケースに並べられた、色とりどりの宝石箱のようなタルトを眺めて、私は微笑む。帰ったらロビンさんと一緒にお茶を楽しむとしよう。この際、一日に2つも甘い物を食べるのには目を瞑ることにして。
超カルガモは、バンチやF-ワニでは通れない、私も知らないような細い裏路地をスイスイと走り抜け、気付けばもうレインディナーズの頂で街を見下ろすバナナワニの姿が見えてきていた。
(面白い人だったなぁ、クザンさん)
ドドドドド……と砂煙を上げて近付いてくる音に振り返ると、1羽の超カルガモが勢いよく走ってきたところだった。彼はタクシー乗り場で待つ私の姿に気付くと、スピードを緩めてぴったり乗り場の前で停止した。
「クエッ!」
「ふふ、こんばんは。レインベースのレインディナーズまでお願い出来る?」
「クエーッ!」
元気良く返事をして、超カルガモは乗り易いように、と屈んでくれる。私はありがとう、と言うとその背に跨って鐙に足を掛けた。彼は私がしっかり鐙に足を掛けて手綱を握ったことを確認すると、クエッ!と一声鳴いて走り出す。
初めは緩やかだった足取りも、アラバスタ最速といわれるその脚力でもって、すぐにトップスピードに乗る。両手で手綱と一緒に握ったケーキボックスの中身が心配だったが、そのスピードに反して驚く程揺れは少なく、この調子であれば店まで無事に持ち帰ることが出来そうだった。
(それにしても──)
あっという間に後ろへと過ぎ去っていく街の景色を眺めながら、私はぼんやりと考える。
(クザンさんとスモーカーさんが知り合いだったなんてなぁ……)
脳裏に銀髪の不機嫌顔が思い浮かんで、元気にしてるかな、と心の中で呟く。超カルガモのあげる砂煙が、煙の能力者である彼の姿と重なって、私は小さく笑った。
*****
「えっ?! クザンさん、スモーカーさんのこと知ってるんですか?!」
ロビンさんと来ようと思っていた、最近オープンしたばかりのカフェのテラス席で、私は素っ頓狂な大声をあげる。テラス席に面した歩道を歩いていた人達がなんだなんだ、とこちらを見たので、私は口元を抑えて小さくなった。そんな様子を見て、クザンさんはハハッ、と笑う。
「何言ってんのよ、アニヴェルセルちゃん。俺とスモーカーはマブよ、マブ! ここに来る前にだって、最近どうだーって、電伝虫で話したばっかりなんだから」
店へと向かう道すがらで互いに名乗り合った私達は、クザンさんののんびりした調子も手伝って、あっという間に打ち解けた。
クザンさんは仕事で長期休暇を貰ってアラバスタへ来たのだと言い、何の仕事をしているのかと聞けば、海兵だという。それでもしかして、と思ってスモーカーさんの名前を出してみれば、なんと友人だというではないか。世間って狭いなぁ、と、私は笑ってしまった。
「そうだったんですね! スモーカーさん、元気にしてましたか?」
「あァ。相変わらず、海賊相手に派手にやってるみたいよ。ここだけの話、可愛い女の子の部下が出来て、鼻の下伸ばしちゃってるとかなんとか……」
「えぇっ、ホントですか?! スモーカーさんも隅に置けないなぁ、もう!」
あのスモーカーさんが女の子にデレデレしてる姿が想像出来なくて、私はついはしゃいでしまう。ちょうどそこへ、ウェイターが注文した品を持ってやって来た。彼はアイスコーヒーをクザンさんの前に、アイスカフェラテとクザンさんが頼んでくれたフルーツタルトを私の前に置いて、ごゆっくりどうぞ、と言って去って行った。
「あれ、でもそうやって電伝虫で近況報告しあってるってことは、クザンさんはスモーカーさんとは同じ支部じゃないんですね?」
「ん──あァ、まァな。俺は優秀だから」
タルトの上に乗った色とりどりのフルーツに目を奪われて、私はへぇ、そうなんですね、と気のない返事をする。クザンさんはそんな私の様子に小さく笑うと、アイスコーヒーを一口啜った。
「──アニヴェルセルちゃんは、カジノのディーラーなんだったか。店の名前は何て言うの? 遊びに行かせてもらおうかな」
「本当ですか?! 是非いらしてください! レインベースにある、レインディナーズっていうお店なので」
クザンさんの言葉に目を輝かせて彼の方を見ると、そのサングラスに隠された目が一瞬、ギラリ、と鋭く光ったような気がした。おや、と思ったのも束の間、クザンさんは驚いたような声をあげた。
「え?! そうなの?! いや、ちょうどその店には行こうと思ってたんだよ。スモーカーからいい店だから行ってみろって薦められててさァ」
「わ、スモーカーさん宣伝してくれてるんですね! 嬉しい!!」
「スモーカーのオススメなんてアテにならないと思ってたけど……こんなに可愛いディーラーさんがいるんじゃァ、行かないわけにはいかねェなァ」
「ふふ、ありがとうございます!」
クザンさんはそう言うと、サングラスの奥でパチン!と1つ、ウィンクをしてみせた。
「そういやァ、アニヴェルセルちゃんの今日会う予定だった連れってのも──さっきチラッと見えただけだけど、えらい別嬪さんだったなァ。あの姉ちゃんも、ディーラー仲間なの?」
「ああ、ミス・オールサンデーですか? 彼女はディーラーじゃなくて、うちの支配人ですよ。クザンさんの言う通り、美人で、聡明で、とっても素敵な方なんです」
フォークでタルトを一口大に切りながら応えると、クザンさんは、へぇ……とどこか遠い目をしながら呟いた。どうしたんですか、と聞こうかと思ったが、どこか触れてはいけないような冷たい空気を感じて、私は黙ってタルトを口へと運ぶ。しっとりとしたタルト生地の食感と苺の甘酸っぱさ、キウイの酸味が口の中で混ざり合って思わず頬を綻ばせたのを、クザンさんは見逃さなかったらしい。
「どう、美味い?」
口いっぱいに頬張り過ぎて応えることが出来ずコクコクと頷いた私を見て、クザンさんは笑った。
「──じゃあ、そのミス・オールなんとかちゃんにもお土産に持って帰りなよ。せっかくの約束がダメになっちゃったしさ」
「そうですね! そうします!!」
テイクアウト用のショーケースに並べられた、色とりどりの宝石箱のようなタルトを眺めて、私は微笑む。帰ったらロビンさんと一緒にお茶を楽しむとしよう。この際、一日に2つも甘い物を食べるのには目を瞑ることにして。
超カルガモは、バンチやF-ワニでは通れない、私も知らないような細い裏路地をスイスイと走り抜け、気付けばもうレインディナーズの頂で街を見下ろすバナナワニの姿が見えてきていた。
