知らぬが仏
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クロコダイルが視線を進行方向へと戻すと、途端に周囲の空気が弛緩した。私の身体も縛めを解かれ、背筋にどっと汗が噴き出す。アンも落ち着きを取り戻したようで、自分は何故動きを止めていたのだろうか、とでも言いたげに、不思議そうに辺りをキョロキョロと見回していた。クロコダイルは立ち尽くしたままの私を振り返ると、先程までの殺気立った様子はどこへやら、座れ、と面倒臭そうに短く命じる。慌てて座席に戻ると、クロコダイルは私が座ったのを確認して、手綱を引いた。初めはゆっくりと、徐々にスピードを上げて、再びアンが前進を始める。あっという間にトップスピードに乗ったアンは、朦々と砂煙を上げながら、遅れを取り戻そうとするかのように、レインベースへの道を猛進した。
(さっきのクロコダイルの反応は、一体──)
私は、再び口を噤んだ背中をぼんやりと見つめる。何か気に障るような事を言ってしまったのだろうかと、胸にアンが巻き上げる砂煙のような靄が掛かって、煩わしい。
チラ、と振り返ると、砂煙の向こうにさっきまで自分達のいた王宮が霞んで見えた。あっという間に遠ざかって行くそれは、靄の向こうに、頼りなげに揺らめいて消えて行った。
......To be continued.
