DONQUIXOTE
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半ば脅迫のように話を纏めたドフラミンゴは、契約成立だ、と言って支配人の肩から手を離す。手書きで良ければこの場で契約書を作るが、というドフラミンゴの言葉に支配人はコクコクと頷いて、紙とペンを取って来いという指示に従い、いそいそと部屋を出て行った。
「──あの、ドフラミンゴ様」
「あァ?」
支配人がいなくなり2人きりになった部屋で、ステラが堰を切ったように口を開いた。ネーナに対しての態度とは打って変わって無愛想に応えたドフラミンゴに、ステラは深々と頭を下げる。
「無礼は承知で、折り入ってお願いがございます。ドフラミンゴ様は、先程私が申し上げた『確実に手に入る女』に技術を授けることで、客を取らずに済むようお考えなのだとお見受けいたしました」
「……フフッ。だとしたら、何だってんだ?」
ドフラミンゴは口角を吊り上げて先を促す。ステラは顔を上げて、必死さを湛えた瞳でドフラミンゴを見た。店に入ってから初めて見る彼女の人間臭い表情に、ドフラミンゴはこっちの方がずっといいじゃねェか、と思う。ステラは唇を戦慄かせながら、続く言葉を紡いだ。
「私はこの店を──娼館紛いの今の姿ではなく、以前のように格式高い姿に戻したいのです。どうか……どうか、私がネーナを素晴らしいディーラーへと成長させることが出来た暁には、彼女のように他のディーラーにもお力添え願えませんでしょうか……!」
これまでずっと取り澄ましていた女ディーラーの悲痛な声が、虚しく部屋に響く。ドフラミンゴはその揺れる瞳を見つめながら、長い脚をゆったりと組み替え──笑った。
「フッフッフッ……! テメェは勘違いしてるぜ、ステラ」
「……?!」
「俺はこの店の『システム』がどうあろうが、他のディーラーがどうなろうが、知ったこっちゃねェ。俺がネーナを気に入って、ネーナを他の男に触れさせたくねェ、それだけだ。俺も他の客共と変わらねェ、1人の『男』だってこった。分かるか?」
「……!」
「まァ、そういう事は他のパトロンを見つけて頼むか──ネーナにその座を譲り渡してから、裏方として考えりゃァいいんじゃねェか? 看板ディーラーさんよォ」
ステラの反応を見て、ドフラミンゴは愉快そうに笑う。ステラは俯き、悔しさに歯を食い縛った。
そこへ、ノックの音が聞こえて支配人が戻ってくる。パッと顔を上げたステラは、口元には笑みを浮かべ、目ではドフラミンゴを睨み付けていた。見事なモンだな、とドフラミンゴは感心する。その感情の隠し方を、ネーナにもしっかり教えてやってくれ。
ドフラミンゴは、ネーナがステラに代わって看板ディーラーとなるその日を想像して、フフッと小さく笑う。そして支配人から紙とペンを受け取ると、サラサラと契約の内容と日付、自身のサインを書いた。そこに書かれた500万ベリーという数字が未だ信じられないようで、支配人の目は爛々としている。
(──まるで“鳥カゴ”だな)
それは彼女を自分だけの物にするための、触れれば切れる、鋭利で残酷な愛の形。さて、ディアマンテにはどう説明しようか。ドフラミンゴは新たに生まれた問題を思い浮かべ、少しだけ憂鬱になりながら、小さく笑った。
......To be continued.
