DONQUIXOTE
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ディアマンテが力強く肯定したのを見て、ドフラミンゴは小さく笑う。この男は謙虚なようでありながら実際はとても自信家で、調子に乗せると底知れない実力を発揮することを、ドフラミンゴは長い付き合いの中でよく知っていた。
「それで……お前程の男が認める人物というのは、どういう奴なんだ?」
「ああ……ソイツは
ディアマンテは一度そこで言葉を区切ると、手元に用意されていた食後酒を一息に煽って話し始めた。
「元々ソイツの店は歴史ある由緒正しい店だったんだが、ソイツが経営者になってからは、女ディーラーに身体を売らせて客を取っているらしい」
「フッフ……! なかなかのクズだな」
「ああ。そしてその商売方法は、海軍には上手く隠している。ディーラーからも客からも漏れることがねェ。そういう周到さが、その辺のチンピラよりは見所があるかもしれねェ、と思ってな」
「成程……いいじゃねェか」
ソイツを口説き落とすことが出来れば、上手く言いくるめてそのカジノの経営権を手に入れることも可能かもしれない。ドフラミンゴが、カジノで遊びがてらヘッドハンティングに行くか、と笑うと、ディアマンテは頷き、部下の1人であるセニョール・ピンクを呼び付けて、船の用意をするように言った。
10日間の航海を終えて目的地である島へと着いたドフラミンゴ一行は、港に降り立って唖然とした。
「お待ちしておりました、ドンキホーテ・ドフラミンゴ様」
港から真っ直ぐに敷かれた、長いレッドカーペット。その両脇に並んだ出迎えの黒服達は、男も女も、皆見目麗しい者達ばかり。背後に控えていたディアマンテに視線をやれば、口元に静かに笑みを湛えている。きっとこの男が手配したのだろう、とドフラミンゴは察して、ポン、とディアマンテの肩に手を置いた。
ディアマンテのこういった行動は、太鼓持ちのような嫌らしい感情が背景にあるものでは決してない。心からドフラミンゴを「王者」として慕っているからこそ、それに相応しい扱いをしようという心遣いであることを、彼はよく分かっていた。だからこそドフラミンゴは、これもまた心からの言葉で、ディアマンテを褒めるのだ。
「フッフッフ! 素晴らしいもてなしだ。ありがとよ、ディアマンテ」
「何の話だ、ドフィ。これは王者であるお前への、店からの当然のもてなしだ。俺は関係ない」
「そうなのか? だとすれば、俺はこの店の経営者とは気が合わねェだろうな。見知らぬ人間からの太鼓持ち程、不愉快なものはない」
「そうか! ならば認めよう!! このもてなしは俺が指示したものだと!」
胸を張って、自身の行動を認めるディアマンテの後ろでは、ジョーラやベビー5、デリンジャー達がきゃぁきゃぁと美男子達の出迎えに黄色い声を上げている。ファミリーが喜んでいる、それだけで、今日ここへ来た甲斐はあったというものだ。
「今度はピーカやトレーボル達も連れて来てやらねェとな」
ピーカやトレーボルには、国を開けている間の留守を任せてきた。これも、彼らを強く信頼しているからこそ出来ることだ。ドフラミンゴの言葉に、ディアマンテはそうだな、と返す。桃色の羽根コートを翻しながら、柔らかな絨毯の毛足を踏みしめて颯爽と歩く目の前の男の姿に、ディアマンテは王者の貫録を見ていた。
「ほォ……こんな小さな島には不釣り合いな、いい店じゃねェか」
長いレッドカーペットの先──目の前に現れた石造りの歴史を感じさせる建物に、ドフラミンゴは目を細める。石壁に彫られた装飾は、今の流行りではないが、芸術的価値が高そうだ。その雰囲気を損なわないためであろうか、カジノでありながら、ネオンなどを一切使わない看板には、「Heaven's Bell」と書かれている。
ドフラミンゴの歩幅に、ジョーラやベビー5達女子供が漸く追いついたところで、扉の両側に控えていたボーイ達がゆっくりと、彼らの身の丈の倍はあろうかという扉を開いた。扉が開き切った瞬間、突然の王下七武海が一の来店に、先客達の間からどよめきの声が上がる。
その喧噪の中、カーペットの上に佇んで、その顔に微笑みを湛える1人の女がいた。
「お待ちしておりました。ようこそ、Heaven's Bellへ──ドンキホーテ・ドフラミンゴ様」
女は豊かな長い黒髪をアップに纏めていて、露わになった首筋からは匂い立つような色気が漂っている。シャツ以外黒で統一された制服は、さながら彼女の透き通るような肌の白さを強調するために仕立てられたようだ。サングラス越しとはいえ、じろじろと値踏みをするように見つめるドフラミンゴの視線にも臆することなく背筋を伸ばして凛と立つその姿は、さながら百合の女王であるカサブランカのように美しかった。
「これはこれは、ドンキホーテ・ドフラミンゴ様。お待ちしておりました」
そんな彼女の背後から、背の低い小太りな男が揉み手をしながら現れた。コイツが、ディアマンテの見込んだ支配人であろう。饅頭のように丸いその顔には、カイゼル髭が蓄えられている。男は人の良さそうな笑みを浮かべてはいるものの、ディアマンテからその商売方法を聞いているドフラミンゴには、小悪党にしか見えない姿であった。
「奥に別室を用意しておりますので、そちらへご案内します。ファミリーの皆様全員同席なさいますか?」
「そうだな……どうする、ドフィ」
「いや、話をするのは俺とディアマンテだけで構わないだろう──お前達は自由に過ごせ」
ドフラミンゴは振り返ると、セニョール・ピンクを促す。セニョールは頷くと、手に持っていたアタッシュケースを開けた。そしてそこから札束を取り出し、ファミリー全員に配っていく。その豪気な様に、客達の間から再びどよめきが起こった。
「かしこまりました──では、ご案内させていただきます」
支配人がこちらです、と手で店の奥を指し示すと、ス、とドフラミンゴ達を迎え入れた女ディーラーが1歩引き、道を開けた。その姿もまた実に優美で、ドフラミンゴは感心する。
(──だが……)
その完璧な出で立ちにもどこか物足りなさを覚えて、ドフラミンゴは小さく溜息を吐いた。
(全く隙のない女ってのも、つまらねェモンだな)
ドフラミンゴの女を見つめる視線に気付いたのか、支配人が笑みを浮かべながら思い出したように言う。
「彼女はステラと申しまして、当店の看板ディーラーでございます。どうぞお話の後に、ごゆっくりと──」
その顔に浮かぶ下卑た笑みと口振りに、途切れた先の言葉が想像出来て、ドフラミンゴは笑った。確かにあれはいい女だが、自分の好みではない。
