DONQUIXOTE
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(「国盗り」を前に王下七武海相手に事を構えるとなっちゃァ、面倒が過ぎるからな……)
数日後に迫った計画を思うと、体中の血が沸き立つような感覚に陥る。幼き日に仲間から「王」と祀り上げられた自分が、今度は本物の「王」として返り咲くその日を思い、ドフラミンゴは静かに口の端に笑みを浮かべた。
「では、この件に関して、今日欠席の者については通達を回しておく。次だ。資料の2頁目を見てくれ──」
センゴクはそう言って、今度は最近俄かに世間を騒がせ始めている魚人族に関して話を始めた。海で生きる者として、その利を最大限に活かした戦術で人間達を圧倒する彼らをセンゴクは危惧していたようだが、今の自分には関係ない。ドフラミンゴは資料をテーブルに伏せて置くと、大きく欠伸をして椅子にふんぞり返る。つるがこら、と言ってドフラミンゴを叱ったが、彼は気にも留めずにサングラスの下の目を静かに閉じた。
気付けば、いつの間にやら微睡んでしまっていたらしい。後頭部をバシッと叩かれて目覚めたときには、既にセンゴクは部屋から立ち去っていた。ぐるりと首を回すと、そこには呆れ顔のつるが立っている。
「まったく……初めての会議からこんなんじゃ、先が思いやられるよ」
「フッフ! 悪ィな、おつるさん。最近忙しくて寝不足でよ」
「海賊を忙しくさせてるとあっちゃぁ、海軍の名折れだね……港まで送らせるよ」
「ガキじゃねェんだ。いいよ、おつるさん」
「へぇ、もう港までの道を覚えたってのかい? アンタみたいなバカデカいのが迷ってごらんよ。ガキじゃないんだ、それこそ誰も迷子だなんて思わずに助けてなんかくれないよ」
剃刀でスパッと斬られるような返しに、ドフラミンゴは敵わねェな、と溜息を吐く。ふと見れば、会議に同席していた中将連中とクロコダイルが席を立ってドフラミンゴを待っているようだった。王下七武海としては古参に入り、ここ、聖地・マリージョアには来慣れているはずの彼にもそうやって送る者がつくということは、つるの言うことは建前で、実際のところは先程のような小競り合いを起こさないように見張る意図の方が大きいようであった。
(追われる身ではなくなっても、海賊は海賊、か)
早くしな、と促すつるに分かったよ、と返し、ドフラミンゴは席を立った。
先導する中将に続いて、ドフラミンゴとクロコダイルは並んで歩く。その後ろにもまた、中将が3人控えていた。廊下にも所々見張りの海兵が立っており、あまりの厳戒態勢ぶりに、ドフラミンゴは改めて王下七武海が三大勢力の1つとして数えられることを実感する。
(今日は俺達2人だけしかいねェが、これが全員揃うとなると……)
きっとその時の警備は今日の比ではないだろう。もしかすると、大将も出てくるかもしれない。
そういえば、と、ドフラミンゴは傍らで葉巻をふかしながら歩くクロコダイルに声を掛けた。
「なァ、オイ」
「……なんだ」
視線をこちらに寄越しもせずに、クロコダイルは仏頂面で応える。カチン、としながらもドフラミンゴは努めて冷静に訊ねた。
「会議にこんなに人が集まらねェってのは、いつもの事なのか? センゴクも慣れてるみてェだったが」
ドフラミンゴの問いかけに、クロコダイルはチラ、とつまらなそうに視線を投げて寄越す。何を言うかと思えば、といった様子で、クロコダイルは深く煙を吐き出した。
「……まァな。どこまでいっても海賊は海賊……よっぽどの事でもなけりゃァ、海軍の懐になんざ来たかねェだろう」
「そりゃそうだ……なら、お前は何故来てる? センゴクの口振りじゃ、毎回ちゃんと来てるみてェだが」
傍らの海賊らしからぬ恰好をした男を見下ろしながら、ドフラミンゴは訊ねた。男はその右手に、会議前に読んでいたビジネス書を携えている。金が要るなら海賊らしく奪えばいいのに、この男はそれをビジネスで生み出そうとしているらしい。いけ好かない男ではあるが、若くして力も地位も手に入れた者が、その次に何をしようとしているのか、という事に関しては、ドフラミンゴも純粋に興味があった。
「理由なんざねェよ。ただ……」
クロコダイルは一度言葉を区切ると、ドフラミンゴの目を見て言った。
「強いて言うなら……こうして拠点を離れている間でも、探られて痛ェ腹なんざねェとアピールしに来てるようなもんだ」
クロコダイルの言葉に、ピクリと中将達が反応を示す。その反応から察するに、王下七武海のメンバーを会議に呼び出している間に、拠点で何か謀をしていないか、探りを入れられていることは間違いないようだった。
「フッフ! いい情報をありがとよ」
ドフラミンゴの礼に、クロコダイルはふん、と口の端を上げて笑う。掴めない男だな、とドフラミンゴは思った。
──2年後
「ドフィ。“
ファミリー全員揃っての食事を終え、ディアマンテがナプキンで口元を拭いながら話し掛ける。ドフラミンゴはベビー5が持って来た食後酒を飲みながら、耳だけをそちらに傾けた。
「
ドフラミンゴは、何もその利益のために
「そうだな──行ってみるとしよう。お前は本当に仕事が早くて助かるよ」
「そんなことはない……お前の采配がいいだけだ、ドフィ」
「いや。お前が優秀だからだ、ディアマンテ」
「やめろよ……そんな……」
「……じゃあやめに……」
「そこまで言うなら認めよう! 俺は優秀な男であると!!」
