唇泥棒注意報
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「何言ってやがる。『俺の女だから』、じゃァねェのか?」
「……ああ。そんなこと、この俺が一言でも言ったか?」
「……この服は。テメェがいつも着てる服の色と同じ取り合わせだろうが。こんなモン、あからさまに独占欲の表れじゃねェか」
「俺の店で俺の手足となる人間だからな、別に不思議でもなんでもねェだろう」
ちくり、胸が痛む。そうであって欲しいと自分で願ったのに、いざ本人の口からそれを聞くとショックだなんて、人の心というものはなんて勝手なんだろう。
そんな私の気持ちなどいざ知らず、ドフラミンゴは笑った。宙を仰いで、高らかに。
「フフッ……フッフッフ! 成程? なら、俺とこの女のことが、『くだらねェ噂』にならなきゃいいんだな?」
「……ああ、そういうことだ」
「そうか、それなら……」
ドフラミンゴは私の方へ向き直り、恭しく手を取った。また何かされるのかと私がビクリとするのと同時に、スモーカーさんも突き付けた十手に力を込める。ドフラミンゴは五月蠅そうにスモーカーさんを一瞥して舌打ちをしたが、すぐにこちらを向いて私の目をじっと見つめた。
「ネーナ。今夜、お前の時間を俺にくれるか」
「──?! おいテメェ、いい加減に……!」
制止しようとするクロコダイルに、ドフラミンゴは不敵なにんまり笑いを向ける。
「何が不満なんだ、鰐野郎! 正々堂々口説いてみせるのは、『くだらねェ噂』じゃなく『紛れもねェ事実』なはずだ!! コイツにとって『ただの雇い主』でしかないテメェに、それを止める権利なんかあるのか?!」
「……っ!」
クロコダイルが忌々しげに顔を歪める。私はその表情を見て、自分がどう行動すべきかを悟った。
ぎゅ、と握られた手に力を込める。ドフラミンゴがそれに反応し、私の顔を見た。私は今日一番の笑顔を作ってみせる。クロコダイルをドフラミンゴに勝たせるための、それが最良の武装だった。
「……かしこまりました。そのお話、謹んでお受けいたします」
私の返事に、これまで固唾を呑んで様子を見守っていたギャラリー達が、一斉に歓声を上げる。奇しくもこの日、店が一番盛り上がったのは、この瞬間となってしまったのだった。
......To be continued.
