Boy's secret
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(そんなに可愛いモンかね、娘ってのは……)
自分も年齢が年齢なので、彼女と同じくらいの年頃の子供がいてもおかしくはないのだが、実際にはいないものの良さを感じる、というのはなかなか難しいものがある。まだ年端もいかない少女に骨抜きになっている大の男達に半ば呆れながら、俺はチラ、と王女の方を窺い見た──その時だった。
王女の方を見れば、そりゃあその隣に座るネーナのことも視界に入って当然なのだが。その表情は俺の見たことがないものだった。
Heaven's Bellで出会ったときの凛とした表情とも、過去を暴かれて泣いていたときの、触れたら壊れてしまいそうな表情とも、慣れない服に戸惑い、恥ずかしがっている表情とも違う。すっかり王女と打ち解けたのだろう、リラックスして、心を許した相手にだけ見せるような、穏やかで柔らかい笑み。そこには見たこともないような大輪の向日葵が咲いていて──
(──……!)
見たこともない花には、それがいくら美しくとも触れない方がいい。それは美しければ美しい程に、他を引き寄せ、捕らえて離さないための毒を持っていることが多いからだ。
その向日葵も、触れた相手に幻を見せるような毒を持っていたらしい。気が付けば俺は、その笑顔が自分に向けられている光景を頭に思い描いていた。しかもあろうことか、その傍らにはご丁寧に幼い子供までいる。どうかしている、と思った。
物事には順序というものがある。どんなに偉い学者だって、最初は読み書きを学ぶところから始めるものだ。
だが時として、順序を違えることで分かるものもある。突如として自認させられることになった、この感情がそうだ。
はっきり言って。俺は女に不自由したことなど、一度たりともない。逆に勘弁してくれ、と思う程に、言い寄ってくる女が多かったからだ。恵まれた容姿も、富も、名声も、力も、その全てが女を引き寄せた。
毎日きちんと3食、食事を与えられる家庭の子供は、そのありがたみが分からないから好き嫌いを言うことが多い。俺も同じで、黙っていても女は寄ってくるものだから、誰一人として大事に想った女はいなかった。それでも女共は、「あのサー・クロコダイルと関係を持った程のイイ女」という箔が欲しくて、俺に近寄ってくる。お互いにそんな調子では、深い関係になれようはずもなかった。
そんな中で現れた、このネーナという女。奴との間に子供ができる、という荒唐無稽ともいえる幻は、生々しい程に「その前の過程」を想像させた。見つめ合い、手を取り合い、唇を重ね、肌を合わせる──そしてそれを悪くない、と思っている自分自身のことも、まざまざと見せつけられたのだ。
(俺が、何故、こんな──)
何故こんな女に、と思って見れば見る程、その一挙手一投足から目が離せなくなってしまう。傍らの少女に向ける笑顔も、料理を楽しむ口元も、ナイフとフォークを扱う指先も、全てが眩しく見えた。
(酔っているだけだ。この国の酒が口に合わねェんだ。そうでなけりゃァ──)
こんなにも、考えが纏まらないのも。こんなにも、頬が熱いのも。こんなにも、動悸が激しいのも。こんなにも、体の奥が甘く疼くのも。全部に説明がつけられない。つけられやしないのだ。
......To be continued.
