お誕生日おめでとう
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スカラビア寮は、いつも以上に目も眩むような光に満たされていた。
豪奢な絨毯の上に敷き詰められたクッション、途切れることのない音楽、そしてテーブルから溢れんばかりに並んだ色鮮やかな料理と果実。
カリムの誕生日を祝う宴は昼から始まり、夜が更けてもなお熱気が衰える気配はなかった。
「ほら、ななしももっと食えよ! この羊肉のローストめちゃくちゃ美味いぞ!」
主役であるはずのカリムは、金の装飾が施された衣装を揺らしながら、誰よりも忙しなく動き回っていた。皿を片手に屈託のない笑みを向けてくる。
「ありがとうございます。でも、カリム先輩こそ主役なんですから、座って食べてください」
「オレはみんなが楽しそうにしてるのを見るのが、一番の御馳走だからな」
そう言って胸を張るカリムの首元で、大ぶりのネックレスがシャラリと音を立てた。その眩しさに、胸の奥が小さく跳ねる。
彼が向ける全方位への親愛の中に、ほんの少しでも自分だけの特別な枠があるのだろうかという贅沢な欲が過ってしまう。
宴の喧騒は心地よかったが、同時に二人だけの距離を遠く感じさせるものでもあった。
ななしは手元に残った飲み物をそっと飲み干し、熱を帯びた室内から逃れるように静かにその場を後にした。
中庭へ続く回廊に出ると、夜の冷ややかな空気が肌を撫でた。
見上げれば吸い込まれそうなほど深い紺色の空に、無数の星が瞬いている。
「……やっぱり、ここか」
背後から聞こえた足音と声に肩がびくりと跳ねた。
振り返ると宴の主役が一人佇んでいた。
手にはガラスの器に入った淡いピンク色の花が乗せられている。
「カリム先輩? どうしてここに。まだみんな中でお祝いしていますよ」
「ジャミルにちょっとだけ抜け出す許可をもらったんだ。お前が急にいなくなったから、気になってさ」
カリムは迷いのない足取りで近付いてくると、ななしのすぐ隣で足を止めた。
宴の熱気をそのまま纏ったかのような温かさが、夜の冷気の中で際立って伝わってくる。
「これ、昼間に綺麗に咲いてたヒルガオを、魔法で少しだけ綺麗に保たせてもらったんだ。ほら、お前に見せたくて」
彼が差し出したのは漏斗のような形をした、どこか親しみやすくも可憐な花だった。
「ヒルガオ……。昼間の太陽の下で元気に咲く花ですね。どうしてこれを私に?」
「これ、花言葉に『絆』とか『友達のよしみ』って意味があるんだってさ。オレとお前の繋がりみたいだなと思って……」
カリムは花を見つめながら柔らかく目を細めた。
その横顔に談話室の騒がしい光の中にいる時とは違う、落ち着いた大人の男としての表情が滲む。
彼は持っていたガラスの器をそっと回廊の欄干へと置いた。
繊細なガラスが夜の静寂に小さな音を立てる。
「花を見ていたら、なんだか急にお前の顔が浮かんでさ」
ストレートに投げかけられた言葉が鼓膜を通じて脳裏に焼き付く。
カリムは何の裏も下心もなく、心からの言葉としてそれを告げている。
だからこそ受け取る側の胸には、ひどく熱く切ない質量を持って響いた。
「……ずるいです、カリム先輩」
「え? 何がだ?」
「なんでもありません。ただ、そんな風に言われると嬉しくて困るなって」
ななしが視線を落とすと、カリムは不思議そうに首を傾げたが、すぐに悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべた。
「嬉しいなら困る必要ないじゃんか。オレは本気で言ってるんだぞ?」
一歩、カリムが距離を詰めてきた。
夜風が二人の間を吹き抜ける。
けれど、不思議と寒さは感じなかった。
むしろカリムの体温がじわりと伝わってくるようで、皮膚の表面がチリチリと痺れるような感覚に襲われる。
「ななしの手、少し冷えてるな」
言うが早いか、カリムはななしの右手を包み込んだ。
大きな、熱い掌。
指先から心臓へと一気に熱が駆け上がる。
「先輩、あの……手が」
「ごめん、嫌だったか? でも、こうしてると温かいだろ?」
離そうとしないどころか、カリムはさらに指を絡めてきた。
掌と掌が密着し、お互いの脈動が重なり合う。
ヒルガオの蔓がしっかりと絡みつくように、二人の指が深く結びついていく。
昼間の宴で見せていた「みんなのカリム」ではない。
今、彼の熱を受け止めているのは自分だけなのだという事実が、頭をじわじわと支配していく。
「嫌じゃ、ないです。でも、驚いて」
「なら良かった。オレ、お前といると、いつもより胸がうるさくなるんだよな」
カリムは笑いながら片手を自分の胸元に当てた。
その言葉の意味を彼はどこまで理解しているのだろう。
「友達のよしみ」なんて言葉では片付けられないほど、自分の心が彼の一言に振り回されていることに、彼はちっとも気付いていない。
「それは、お誕生日の宴で興奮しているからですよ」
「違うと思うけどな。だって、ジャミルや他の奴らと話してる時は、こんな風に熱くならないからな」
覗き込んでくるカリムの距離があまりにも近い。
星明かりに照らされた彼の輪郭がやけに鮮明に視界を占める。
言葉の応酬が途切れ、静寂が訪れた。
遠くで聞こえる宴の音楽が、まるで別世界の出来事のように遠ざかっていく。
じわじわと物理的な距離だけでなく、内側の感情が膨れ上がり皮膚の内側で破裂しそうだった。
「ななし」
名前を呼ぶカリムの声が、いつもより一段低く響いた。
繋がれた手に、ぎゅっと力が込められる。
それは単なる親愛の握り方ではなく、どこか独占欲を孕んだ決して離さないという強い力強さだった。
「……はい、カリム先輩」
「オレ、ななしにオレの特別な日を隣で見届けてもらえるのがすごく嬉しい」
カリムの言葉が熱を帯びた吐息と共にななしの頬をかすめる。
心臓の音がうるさすぎて、これ以上ここにいたら自分の歪んだ独占欲まで彼に伝わってしまいそうだった。
しかし捕らえられた手はびくともせず、むしろカリムはもう一歩、逃げ場を無くすように距離を縮めてきた。
夜の空気は冷たいはずなのに、二人の周りだけが、まるで砂漠の昼間のような熱に包まれていく。
「カリム先輩……、あの、誰か来ちゃいますよ」
「誰も来ないさ。ジャミルにも、しばらく一人にしてくれって頼んであるし……何より、今は他の誰にも邪魔されたくないんだ」
いつもなら「みんなで楽しもう」と言うはずの彼が、明確な拒絶の意志を口にする。そのギャップに胸の奥がひどく疼いた。
カリムは手をそっと伸ばしななしの頬に触れた。
彼の指先は驚くほど熱く、触れられた場所から体の芯まで溶けてしまいそうな錯覚に陥る。
「おまえを見てると、どうしても自分の気持ちを隠しておけなくなっちまって……」
彼の大きな瞳が星明かりを反射して眩しく揺れている。
昼間の彼が太陽なら、今の彼は夜の闇の中でひっそりと、けれど確かに燃え盛る篝火のようだった。
その強い眼差しから、どうしても視線を逸らすことができない。
「……わたしも、ずっと同じでした。でも、そんなの贅沢な思い込みだって、自分に言い聞かせていて……」
「贅沢なんかじゃないさ!」
カリムの声が、夜の静寂に少しだけ強く響いた。
ななしの頬を包み込むようにして、さらに顔を近づける。
彼の呼吸がななしの唇のすぐ近くで刻まれるたび、肺の中まで彼の熱で満たされていくようだった。
「オレにとって、ななしはもうとっくに特別なんだ。みんなと笑い合う時間は大好きだけど、お前とこうして静かに触れ合ってる時間は、それよりもずっと……胸が熱くなる」
その告白はあまりにも純粋で、だからこそ容赦なくななしの心の壁を溶かしていった。
カリムの言葉に嘘偽りなどない。
彼は今、持てるすべての感情を自分だけに注ぎ込んでくれている。
「ななし……オレ、もっとお前を近くに感じたい」
懇願するような、けれど確かな意志を持った声。
カリムの腕がななしの腰へと回り、引き寄せられる。
衣服越しに伝わる彼の胸板の厚み、規則正しく、けれど速く刻まれる心臓の鼓動。
それらすべてがななしの身体感覚と混ざり合い、境界線が曖昧になっていく。
冷たいはずの夜風はもう届かない。
二人の世界は濃密な熱と、お互いを求める吐息だけで満たされていた。
「カリム先輩……」
「もっと名前、呼んでくれよ。今だけはオレだけのななしでいてくれ」
触れ合う唇と唇の距離が、ついにゼロになる。
優しく、けれど離さないという強い意志が込められた口づけ。
カリムの唇から伝わる柔らかさと熱は脳の芯を痺れさせ、思考を完全に停止させた。
ななしはただ彼の背中に手を回し、その強固な絆を受け入れるように、強く強く抱きしめ返すことしかできなかった。
昼間に咲くヒルガオは夜にはその花弁を閉じるという。
けれど今宵この回廊で結ばれた二人の情熱は、夜の闇の中でこそ誰にも見られることなく最も深く濃密に咲き誇っていた。
ほんの少しだけ離れた唇から、熱い吐息がこぼれる。
重なり合う鼓動の熱さを心地よく感じながら、ななしは目の前の愛しい主役を見つめ、心を込めてその言葉を紡いだ。
「――カリム先輩、お誕生日おめでとうございます」
豪奢な絨毯の上に敷き詰められたクッション、途切れることのない音楽、そしてテーブルから溢れんばかりに並んだ色鮮やかな料理と果実。
カリムの誕生日を祝う宴は昼から始まり、夜が更けてもなお熱気が衰える気配はなかった。
「ほら、ななしももっと食えよ! この羊肉のローストめちゃくちゃ美味いぞ!」
主役であるはずのカリムは、金の装飾が施された衣装を揺らしながら、誰よりも忙しなく動き回っていた。皿を片手に屈託のない笑みを向けてくる。
「ありがとうございます。でも、カリム先輩こそ主役なんですから、座って食べてください」
「オレはみんなが楽しそうにしてるのを見るのが、一番の御馳走だからな」
そう言って胸を張るカリムの首元で、大ぶりのネックレスがシャラリと音を立てた。その眩しさに、胸の奥が小さく跳ねる。
彼が向ける全方位への親愛の中に、ほんの少しでも自分だけの特別な枠があるのだろうかという贅沢な欲が過ってしまう。
宴の喧騒は心地よかったが、同時に二人だけの距離を遠く感じさせるものでもあった。
ななしは手元に残った飲み物をそっと飲み干し、熱を帯びた室内から逃れるように静かにその場を後にした。
中庭へ続く回廊に出ると、夜の冷ややかな空気が肌を撫でた。
見上げれば吸い込まれそうなほど深い紺色の空に、無数の星が瞬いている。
「……やっぱり、ここか」
背後から聞こえた足音と声に肩がびくりと跳ねた。
振り返ると宴の主役が一人佇んでいた。
手にはガラスの器に入った淡いピンク色の花が乗せられている。
「カリム先輩? どうしてここに。まだみんな中でお祝いしていますよ」
「ジャミルにちょっとだけ抜け出す許可をもらったんだ。お前が急にいなくなったから、気になってさ」
カリムは迷いのない足取りで近付いてくると、ななしのすぐ隣で足を止めた。
宴の熱気をそのまま纏ったかのような温かさが、夜の冷気の中で際立って伝わってくる。
「これ、昼間に綺麗に咲いてたヒルガオを、魔法で少しだけ綺麗に保たせてもらったんだ。ほら、お前に見せたくて」
彼が差し出したのは漏斗のような形をした、どこか親しみやすくも可憐な花だった。
「ヒルガオ……。昼間の太陽の下で元気に咲く花ですね。どうしてこれを私に?」
「これ、花言葉に『絆』とか『友達のよしみ』って意味があるんだってさ。オレとお前の繋がりみたいだなと思って……」
カリムは花を見つめながら柔らかく目を細めた。
その横顔に談話室の騒がしい光の中にいる時とは違う、落ち着いた大人の男としての表情が滲む。
彼は持っていたガラスの器をそっと回廊の欄干へと置いた。
繊細なガラスが夜の静寂に小さな音を立てる。
「花を見ていたら、なんだか急にお前の顔が浮かんでさ」
ストレートに投げかけられた言葉が鼓膜を通じて脳裏に焼き付く。
カリムは何の裏も下心もなく、心からの言葉としてそれを告げている。
だからこそ受け取る側の胸には、ひどく熱く切ない質量を持って響いた。
「……ずるいです、カリム先輩」
「え? 何がだ?」
「なんでもありません。ただ、そんな風に言われると嬉しくて困るなって」
ななしが視線を落とすと、カリムは不思議そうに首を傾げたが、すぐに悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべた。
「嬉しいなら困る必要ないじゃんか。オレは本気で言ってるんだぞ?」
一歩、カリムが距離を詰めてきた。
夜風が二人の間を吹き抜ける。
けれど、不思議と寒さは感じなかった。
むしろカリムの体温がじわりと伝わってくるようで、皮膚の表面がチリチリと痺れるような感覚に襲われる。
「ななしの手、少し冷えてるな」
言うが早いか、カリムはななしの右手を包み込んだ。
大きな、熱い掌。
指先から心臓へと一気に熱が駆け上がる。
「先輩、あの……手が」
「ごめん、嫌だったか? でも、こうしてると温かいだろ?」
離そうとしないどころか、カリムはさらに指を絡めてきた。
掌と掌が密着し、お互いの脈動が重なり合う。
ヒルガオの蔓がしっかりと絡みつくように、二人の指が深く結びついていく。
昼間の宴で見せていた「みんなのカリム」ではない。
今、彼の熱を受け止めているのは自分だけなのだという事実が、頭をじわじわと支配していく。
「嫌じゃ、ないです。でも、驚いて」
「なら良かった。オレ、お前といると、いつもより胸がうるさくなるんだよな」
カリムは笑いながら片手を自分の胸元に当てた。
その言葉の意味を彼はどこまで理解しているのだろう。
「友達のよしみ」なんて言葉では片付けられないほど、自分の心が彼の一言に振り回されていることに、彼はちっとも気付いていない。
「それは、お誕生日の宴で興奮しているからですよ」
「違うと思うけどな。だって、ジャミルや他の奴らと話してる時は、こんな風に熱くならないからな」
覗き込んでくるカリムの距離があまりにも近い。
星明かりに照らされた彼の輪郭がやけに鮮明に視界を占める。
言葉の応酬が途切れ、静寂が訪れた。
遠くで聞こえる宴の音楽が、まるで別世界の出来事のように遠ざかっていく。
じわじわと物理的な距離だけでなく、内側の感情が膨れ上がり皮膚の内側で破裂しそうだった。
「ななし」
名前を呼ぶカリムの声が、いつもより一段低く響いた。
繋がれた手に、ぎゅっと力が込められる。
それは単なる親愛の握り方ではなく、どこか独占欲を孕んだ決して離さないという強い力強さだった。
「……はい、カリム先輩」
「オレ、ななしにオレの特別な日を隣で見届けてもらえるのがすごく嬉しい」
カリムの言葉が熱を帯びた吐息と共にななしの頬をかすめる。
心臓の音がうるさすぎて、これ以上ここにいたら自分の歪んだ独占欲まで彼に伝わってしまいそうだった。
しかし捕らえられた手はびくともせず、むしろカリムはもう一歩、逃げ場を無くすように距離を縮めてきた。
夜の空気は冷たいはずなのに、二人の周りだけが、まるで砂漠の昼間のような熱に包まれていく。
「カリム先輩……、あの、誰か来ちゃいますよ」
「誰も来ないさ。ジャミルにも、しばらく一人にしてくれって頼んであるし……何より、今は他の誰にも邪魔されたくないんだ」
いつもなら「みんなで楽しもう」と言うはずの彼が、明確な拒絶の意志を口にする。そのギャップに胸の奥がひどく疼いた。
カリムは手をそっと伸ばしななしの頬に触れた。
彼の指先は驚くほど熱く、触れられた場所から体の芯まで溶けてしまいそうな錯覚に陥る。
「おまえを見てると、どうしても自分の気持ちを隠しておけなくなっちまって……」
彼の大きな瞳が星明かりを反射して眩しく揺れている。
昼間の彼が太陽なら、今の彼は夜の闇の中でひっそりと、けれど確かに燃え盛る篝火のようだった。
その強い眼差しから、どうしても視線を逸らすことができない。
「……わたしも、ずっと同じでした。でも、そんなの贅沢な思い込みだって、自分に言い聞かせていて……」
「贅沢なんかじゃないさ!」
カリムの声が、夜の静寂に少しだけ強く響いた。
ななしの頬を包み込むようにして、さらに顔を近づける。
彼の呼吸がななしの唇のすぐ近くで刻まれるたび、肺の中まで彼の熱で満たされていくようだった。
「オレにとって、ななしはもうとっくに特別なんだ。みんなと笑い合う時間は大好きだけど、お前とこうして静かに触れ合ってる時間は、それよりもずっと……胸が熱くなる」
その告白はあまりにも純粋で、だからこそ容赦なくななしの心の壁を溶かしていった。
カリムの言葉に嘘偽りなどない。
彼は今、持てるすべての感情を自分だけに注ぎ込んでくれている。
「ななし……オレ、もっとお前を近くに感じたい」
懇願するような、けれど確かな意志を持った声。
カリムの腕がななしの腰へと回り、引き寄せられる。
衣服越しに伝わる彼の胸板の厚み、規則正しく、けれど速く刻まれる心臓の鼓動。
それらすべてがななしの身体感覚と混ざり合い、境界線が曖昧になっていく。
冷たいはずの夜風はもう届かない。
二人の世界は濃密な熱と、お互いを求める吐息だけで満たされていた。
「カリム先輩……」
「もっと名前、呼んでくれよ。今だけはオレだけのななしでいてくれ」
触れ合う唇と唇の距離が、ついにゼロになる。
優しく、けれど離さないという強い意志が込められた口づけ。
カリムの唇から伝わる柔らかさと熱は脳の芯を痺れさせ、思考を完全に停止させた。
ななしはただ彼の背中に手を回し、その強固な絆を受け入れるように、強く強く抱きしめ返すことしかできなかった。
昼間に咲くヒルガオは夜にはその花弁を閉じるという。
けれど今宵この回廊で結ばれた二人の情熱は、夜の闇の中でこそ誰にも見られることなく最も深く濃密に咲き誇っていた。
ほんの少しだけ離れた唇から、熱い吐息がこぼれる。
重なり合う鼓動の熱さを心地よく感じながら、ななしは目の前の愛しい主役を見つめ、心を込めてその言葉を紡いだ。
「――カリム先輩、お誕生日おめでとうございます」
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