不定期開催!オンボロ寮・美食研究会
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青い炎がゆらめくイグニハイド寮の自室。
モニターから発せられる電子音と、冷却ファンの駆動音だけが響くその聖域に、今日は異世界の温かな香りが混じり込んでいた。
「……ふひっ。今回の期間限定イベント、魔導回路の効率化ビルドが神すぎて草……。あー、徹夜の甲斐あったわ……」
モニターの明かりに照らされ、不敵な笑みを浮かべているのはイデア・シュラウド。彼が最後にまともな食事を摂ったのは、確か24時間以上前のことだ。
そんな聖域のドアが、軽快な音を立てて開く。
「兄さん! また食事を抜いてゲームをしてるの? 身体機能の低下が著しいよ!」
「オ、オルト!? ちょ、今は大事なレイドバトル中……」
「ダメだよ。今日は心強い助っ人を呼んできたんだ。さあ、ななしさん、入って!」
オルトに促され、ななしは少し緊張しながら、重い保温ボックスを抱えて中に入った。
「……イデア先輩。お邪魔します。……グリム、機械に触っちゃダメだよ」
「ふなー! イデア! 腹ペコの引きこもりに、オレ様たちが救援物資を運んできてやったんだゾ! 感謝しろ!」
「……っ!? ななし氏!? な、何故ここに!? ちょ、待って、今汚部屋の掃除を……いや間に合わない詰んだ!!」
イデアがモニターを隠そうと慌てふためく中、ななしはおとなしく、しかし手際よく、デスクの空きスペースに料理を並べた。
オルトの依頼で特別に開催された「オンボロ寮・美食研究会:出張版」。今回は画面の前から動かない先輩のために考案した「超・効率的栄養摂取メニュー」だ。
本日の出張メニュー
片手で攻略!照り焼きマヨの厚焼き玉子サンド
【材料(2人分)】
・食パン(10枚切り):4枚
・卵:3個
★味付け
・ 醤油・みりん・砂糖(各小さじ2)
・マヨネーズ(大さじ1)
・辛子マヨネーズ:適量(パンに塗る用)
・バター:10g
【作り方】
①卵を溶き、★の調味料を混ぜる。マヨネーズを卵液に混ぜることで、冷めてもフワフワ感が持続する。
②パンの大きさに合わせて厚さ3cmほどの極厚玉子焼きを作る。
③パンに辛子マヨネーズを塗り、玉子焼きを挟む。
④パンの耳を切り落とし、コントローラーを持ったままでも食べられる「一口サイズ」にカットする。
「完成……じゃなくて、持ってきました。『照り焼きマヨの厚焼き玉子サンド』です。……イデア先輩、これなら片手で食べられますよ」
「……あー、いや。僕は別に空腹ステータスにデバフかかってないし……。わざわざオンボロ寮から、リアルイベントに凸してこなくても……」
イデアは猫背をさらに丸め、髪の炎を小さく揺らし、おどおどと目の前の皿を盗み見た。そこには、黄金色に輝く分厚い玉子焼き。甘辛い醤油の香りとパンの香ばしさが混ざり合い、彼の理性をダイレクトに攻撃する。
「兄さん、ボクのセンサーが『非常に高い幸福度を誘発する香り』を検知しているよ! ななしさんが、一生懸命作ってくれたんだ。食べないなんて勿体無いよ!」
オルトがキラキラした瞳でイデアを追い詰める。
「……ちょ、オルト、圧が強い……。…………。……まぁ、わざわざ君が、重い箱を運んできてくれたんだし……。無碍にするのは、その、マナー的にアレだよね、うん」
イデアは震える手でサンドイッチを一つ、つまみ上げた。
指先に伝わる、焼きたての温もり。彼は恐る恐る、一口齧り付く。
「…………っ!!」
「イデア先輩…どうですか…?」
イデアはカッと目を見開いた。
咀嚼するたびに、出汁の旨味とマヨネーズのコク、そしてパンの柔らかさが口内でクリティカルヒットを連発する。
「……何、これ。何これ!? 卵なのに、肉みたいな満足感あるし……。この甘辛い味付け、僕の『好き』を完全にハッキングしてるんだけど!? 照り焼きマヨ……。効率化の極みすぎてもはやチート級では……?」
「……よかった。手が汚れないように挟んであるのも、こだわりなんです」
「ふなっ、ふわふわのパンと、ぷるぷるの玉子の間に、マヨネーズのコクがしっかり挟まってて……。まさに旨味の二連装魔法なんだゾ! 片手で食えるのに、満足感はフルコース並みだゾ!」
「……ななし氏。君、実は僕のステータス画面、裏で覗いてない? あ、これ、マウスを動かしながらでもいける。開発者のユーザーフレンドリーな設計を感じるね」
「わあ! 兄さんの血流量が正常値に戻っていくよ! ななしさん、ありがとう。やっぱりボクの選択は正解だったね!」
オルトは嬉しそうに、イデアの隣で浮遊しながらモニターをチェックし始めた。イデアはいつの間にか、自分から次々とサンドイッチに手を伸ばしている。
「ふなー! イデア、独り占めは禁止なんだゾ! オレ様にも半分よこすんだゾ!」
「……悪いねグリム氏、これは僕の専用クエストの報酬だから。……ふひひ、ななし氏。これ……また、持ってきてくれたりする……?」
イデアが上目遣いに、少しだけ期待を込めて尋ねる。
ななしはおとなしく、しかし嬉しそうに頷いた。
「はい。……また新作ができたら、オルトくんと一緒に持ってきますね」
「……感謝。……あ、お礼にこのレアアイテムのシリアルコード……あ、いらない?……じゃあ、今度オンボロ寮のWi-Fi、僕が魔改造して爆速にしてあげるから。……契約成立、ってことで」
モニターの前に張り付く彼を想う弟の心を、自分の手料理で完璧に満たせたようだ。
「……次、楽しみにしてるから……。あ、でも、次はできれば……もう少し、陰キャに優しい隠密行動で来てくれると助かる……。君たち、結構目立つから……」
イデアは照れ隠しに再びモニターに向き直ったが、その口元は満足げに緩んでいた。
青い炎が揺れるイグニハイドの個室。そこには、学園のどんな魔法よりも心温まる、秘密の配給の香りが漂っていた。
モニターから発せられる電子音と、冷却ファンの駆動音だけが響くその聖域に、今日は異世界の温かな香りが混じり込んでいた。
「……ふひっ。今回の期間限定イベント、魔導回路の効率化ビルドが神すぎて草……。あー、徹夜の甲斐あったわ……」
モニターの明かりに照らされ、不敵な笑みを浮かべているのはイデア・シュラウド。彼が最後にまともな食事を摂ったのは、確か24時間以上前のことだ。
そんな聖域のドアが、軽快な音を立てて開く。
「兄さん! また食事を抜いてゲームをしてるの? 身体機能の低下が著しいよ!」
「オ、オルト!? ちょ、今は大事なレイドバトル中……」
「ダメだよ。今日は心強い助っ人を呼んできたんだ。さあ、ななしさん、入って!」
オルトに促され、ななしは少し緊張しながら、重い保温ボックスを抱えて中に入った。
「……イデア先輩。お邪魔します。……グリム、機械に触っちゃダメだよ」
「ふなー! イデア! 腹ペコの引きこもりに、オレ様たちが救援物資を運んできてやったんだゾ! 感謝しろ!」
「……っ!? ななし氏!? な、何故ここに!? ちょ、待って、今汚部屋の掃除を……いや間に合わない詰んだ!!」
イデアがモニターを隠そうと慌てふためく中、ななしはおとなしく、しかし手際よく、デスクの空きスペースに料理を並べた。
オルトの依頼で特別に開催された「オンボロ寮・美食研究会:出張版」。今回は画面の前から動かない先輩のために考案した「超・効率的栄養摂取メニュー」だ。
本日の出張メニュー
片手で攻略!照り焼きマヨの厚焼き玉子サンド
【材料(2人分)】
・食パン(10枚切り):4枚
・卵:3個
★味付け
・ 醤油・みりん・砂糖(各小さじ2)
・マヨネーズ(大さじ1)
・辛子マヨネーズ:適量(パンに塗る用)
・バター:10g
【作り方】
①卵を溶き、★の調味料を混ぜる。マヨネーズを卵液に混ぜることで、冷めてもフワフワ感が持続する。
②パンの大きさに合わせて厚さ3cmほどの極厚玉子焼きを作る。
③パンに辛子マヨネーズを塗り、玉子焼きを挟む。
④パンの耳を切り落とし、コントローラーを持ったままでも食べられる「一口サイズ」にカットする。
「完成……じゃなくて、持ってきました。『照り焼きマヨの厚焼き玉子サンド』です。……イデア先輩、これなら片手で食べられますよ」
「……あー、いや。僕は別に空腹ステータスにデバフかかってないし……。わざわざオンボロ寮から、リアルイベントに凸してこなくても……」
イデアは猫背をさらに丸め、髪の炎を小さく揺らし、おどおどと目の前の皿を盗み見た。そこには、黄金色に輝く分厚い玉子焼き。甘辛い醤油の香りとパンの香ばしさが混ざり合い、彼の理性をダイレクトに攻撃する。
「兄さん、ボクのセンサーが『非常に高い幸福度を誘発する香り』を検知しているよ! ななしさんが、一生懸命作ってくれたんだ。食べないなんて勿体無いよ!」
オルトがキラキラした瞳でイデアを追い詰める。
「……ちょ、オルト、圧が強い……。…………。……まぁ、わざわざ君が、重い箱を運んできてくれたんだし……。無碍にするのは、その、マナー的にアレだよね、うん」
イデアは震える手でサンドイッチを一つ、つまみ上げた。
指先に伝わる、焼きたての温もり。彼は恐る恐る、一口齧り付く。
「…………っ!!」
「イデア先輩…どうですか…?」
イデアはカッと目を見開いた。
咀嚼するたびに、出汁の旨味とマヨネーズのコク、そしてパンの柔らかさが口内でクリティカルヒットを連発する。
「……何、これ。何これ!? 卵なのに、肉みたいな満足感あるし……。この甘辛い味付け、僕の『好き』を完全にハッキングしてるんだけど!? 照り焼きマヨ……。効率化の極みすぎてもはやチート級では……?」
「……よかった。手が汚れないように挟んであるのも、こだわりなんです」
「ふなっ、ふわふわのパンと、ぷるぷるの玉子の間に、マヨネーズのコクがしっかり挟まってて……。まさに旨味の二連装魔法なんだゾ! 片手で食えるのに、満足感はフルコース並みだゾ!」
「……ななし氏。君、実は僕のステータス画面、裏で覗いてない? あ、これ、マウスを動かしながらでもいける。開発者のユーザーフレンドリーな設計を感じるね」
「わあ! 兄さんの血流量が正常値に戻っていくよ! ななしさん、ありがとう。やっぱりボクの選択は正解だったね!」
オルトは嬉しそうに、イデアの隣で浮遊しながらモニターをチェックし始めた。イデアはいつの間にか、自分から次々とサンドイッチに手を伸ばしている。
「ふなー! イデア、独り占めは禁止なんだゾ! オレ様にも半分よこすんだゾ!」
「……悪いねグリム氏、これは僕の専用クエストの報酬だから。……ふひひ、ななし氏。これ……また、持ってきてくれたりする……?」
イデアが上目遣いに、少しだけ期待を込めて尋ねる。
ななしはおとなしく、しかし嬉しそうに頷いた。
「はい。……また新作ができたら、オルトくんと一緒に持ってきますね」
「……感謝。……あ、お礼にこのレアアイテムのシリアルコード……あ、いらない?……じゃあ、今度オンボロ寮のWi-Fi、僕が魔改造して爆速にしてあげるから。……契約成立、ってことで」
モニターの前に張り付く彼を想う弟の心を、自分の手料理で完璧に満たせたようだ。
「……次、楽しみにしてるから……。あ、でも、次はできれば……もう少し、陰キャに優しい隠密行動で来てくれると助かる……。君たち、結構目立つから……」
イデアは照れ隠しに再びモニターに向き直ったが、その口元は満足げに緩んでいた。
青い炎が揺れるイグニハイドの個室。そこには、学園のどんな魔法よりも心温まる、秘密の配給の香りが漂っていた。
