不定期開催!オンボロ寮・美食研究会
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休日の昼下がり。
いつもは静まり返っているオンボロ寮のキッチンに、今日は聞き慣れた賑やかな足音が響き渡る。扉を開けて入ってきたのは、ハーツラビュル寮の5人だ。
「お邪魔するよ、ななし。……ふむ、掃除は行き届いているようだね」
リドルが満足げに頷き、その後ろからエースとデュースが大きな荷物を抱えて入ってくる。
「ちわーっす。いやー、リドル寮長が『たまには他寮との親睦を深めるべきだ』なんて言い出すからさ。正直、うまいもん食いたかっただけっしょ?」
「エ、エース! 滅多なことを言うな! ……失礼する、ななし。今日は僕も包むのを手伝わせてもらうよ」
「おっはよ〜、ななしちゃん! はいこれ、差し入れのお菓子と飲み物ね。マジカメ映えしそうなパーティー、期待してるよん♪」
「ななし、準備は進んでいるか? 手伝えることがあれば言ってくれ。……それと、これは食後にでもみんなで食べてくれ。口直しに持ってきた」
トレイがキッチンへ歩み寄りながら、丁寧に梱包された大きめの箱を冷蔵庫へ収めた。その手つきは、まるで壊れ物を扱うかのように慎重だ。
これは、不定期に開催される「オンボロ寮・美食研究会」。
今日はハーツラビュルの面々を招き「餃子」に挑戦する特別な日だ。
本日のメニュー
みんなで包んだパリパリ羽根つき餃子
【材料(約100個分)】
・豚ひき肉:500g
・キャベツ:1/2玉(細かく刻んで塩揉みし、水気を絞る)
・ニラ:1束
★味付け:
・醤油・酒(各大さじ2)
・ごま油(大さじ1)
・砂糖(小さじ1)
・おろし生姜・ニンニク(各小さじ1)
・隠し味の味噌(大さじ1/2)
・餃子の皮:100枚
・羽根用の水:水150ml、片栗粉小さじ2
【作り方】
①野菜の水分をしっかり絞り、材料を混ぜ合わせる
②全員で協力して包む
③熱したホットプレートに油を引き、円を描くように並べる。
④片栗粉を溶いた水を回し入れ、蒸し焼きにする。水分が蒸発し、底がカリカリになったら完成。
テーブルには大きなボウルいっぱいのタネと、山積みになった餃子の皮。
「よし、全員揃ったな。それじゃあ、各自餃子を包み始めてくれ。形は問わないが、焼く時に剥がれないようにしっかり閉じること」
トレイの号令で、一斉に手が動き出す。
「ふなっ! オレ様だって包めるんだゾ! ほら見てろ、この皮を広げて……タネをドバッと乗せて……」
「わわっ、グリム! 欲張りすぎだって。そんなに詰めたら閉じられないでしょ」
エースが笑いながらグリムの手元を指差す。案の定、グリムの持つ皮からはタネが溢れ出し、ベタベタになっていた。
「ふなー! 難しいんだゾ! この皮、オレ様の肉球に張り付いて離れないんだゾ!」
「グリム、一回肉球洗ってこよっか」
「ボクの餃子を見てごらん。ヒダの数は正確に七つ。間隔も均等だ。これこそが規律を重んじるハーツラビュルの餃子だよ。……ななし、どうかな? 完璧だろう?」
「……あはは、リドルくんマジ真面目〜。オレのは見て、ハート型! 皮を2枚使って、中身をたっぷり挟んでみたんだ。これ、マジカメ映えしそうじゃない?」
「ケイト、ふざけてないで手を動かせ。……おい、エース! お前のは肉を詰めすぎだ。皮がはち切れそうじゃないか!」
「これくらいボリューミーな方が、食った時の満足感あるんですって。……あ、デュース。お前、それ……何?」
エースの視線の先で、デュースが眉間にシワを寄せて格闘していた。彼の手元にあるのは餃子というよりも……。
「……何か問題か? 中身が出ないように、何重にも皮を重ねて補強したんだ」
「いや、どんだけ厚着させてんだよ。ななしも困ってるじゃん!」
ななしは苦笑しながら、デュースの手元にそっと新しい皮を差し出す。
「……すまない、ななし。力加減が難しくてな。……次は、もう少し優しく包んでみるよ。……こうか? 皮の端を、優しく、でも確実に……」
「ははは、賑やかでいいな。俺は標準的な包み方で行くよ。あ、ななし。タネの隠し味、少し味噌を入れただろう? 香りがいい」
トレイの細やかな気遣いに、ななしは感心したように目を細める。
包み終わった何十個もの餃子たちが、オンボロ寮の特大ホットプレートに並べられていく。
「さあ、ななし。仕上げを任せてもいいか?」
トレイに促され、ななしが薄く溶いた片栗粉水をプレートに回し入れる。ジュワアアァァァッ! という激しい音と共に、白い湯気が一気に立ち上る。
「この湯気の感じ、マジでテンション上がる〜! 画面越しでも美味しそうなの伝わるかな?」
「ケイト、危ないからあまり近づくな。……ななし、ここからは蓋をして蒸し焼きだな?」
ななしが蓋を閉める。
プレートの中でパチパチと水分が飛ぶ音が響く。
「リドルくん、お腹鳴ってない? 大丈夫?」
「なっ、鳴ってなどいない! 失礼なことを言わないでくれ!」
「……ななし、音が変わったな。さっきより少し高い乾いた音だ」
デュースの言葉通り、湿った音からカリカリとした小気味よい音へと変化していく。ななしがゆっくりと蓋を持ち上げると、そこには見事な黄金色の羽根を纏った餃子たちが現れた。
「完成! 『羽根つき餃子』です。……さあ、みんな、冷めないうちに食べて」
「いっただっきまーす! ……熱っ! ゲホッ、でもマジで美味ぇ! 外の皮がパリッパリで、中は肉汁の洪水だわ!」
「ふなっ!! この底の羽根がパリッパリで、香ばしさが半端ないんだゾ!中からは熱々の肉汁が飛び出してきて……。シャキシャキのキャベツとお肉の旨味が、口の中で合体魔法みたいに弾けるんだゾ!」
ななしの餃子とトレイのケーキ……。この組み合わせ、最強すぎてオレ様の胃袋がビックリしてるんだゾ! エース、デュース! 最後の一切れはオレ様のもんだゾーー!!」
「本当だ。皮を何重にも重ねた僕の餃子も、この羽根と一緒に食べると……なんだか、不思議と調和している気がする。……美味いな、ななし」
「リドルくん、ほら。これリドルくんの作ったやつ。形が綺麗だから食べやすそう」
「……ふむ。……っ、……美味しい。野菜の甘みがしっかり引き出されているね」
◇
嵐のような食事タイムが過ぎ、ホットプレートが空になった頃。
「あー、もう一歩も動けねぇ……」と椅子に沈み込む一年生たちを横目に、トレイがゆっくりと立ち上がった。
「さて、みんな。餃子の油っぽさが落ち着いたところで、真打ちの登場だ」
彼が冷蔵庫から取り出してきたのは、純白の生クリームに鮮やかなレモンイエローが映えるホールケーキだ。
「えっ、トレイ先輩、ケーキ!? マジで? お腹いっぱいだけど、これ見たら入っちゃうわ……」
「……トレイ。これは、もしや新作かい?」
「ああ。『レモンとマスカルポーネのムースケーキ』だ。餃子の後はどうしても口が重くなるからな。酸味を効かせて後味を軽くした。……ななしの分もたっぷりあるぞ」
差し出されたケーキは、驚くほど軽やかだ。
レモンのキュッとした酸味と、マスカルポーネの濃厚なコクが先ほどまでの醤油と油の記憶を優しく上書きしていく。
「……っ、美味しい……! トレイ先輩、これ本当に売ってるケーキみたい……」
「はは、光栄だな。……ななしの料理が美味かったから、俺も気合が入ったんだ。いい刺激になったよ」
「………ななし、このパーティー、また開催してもいいかな?」
リドルの問いに、ななしははっきりとした声で頷いた。
夕暮れ時のオンボロ寮。5人の賑やかな笑い声と、甘いケーキの余韻が、古い建物の隙間に心地よく溶け込んでいった。
いつもは静まり返っているオンボロ寮のキッチンに、今日は聞き慣れた賑やかな足音が響き渡る。扉を開けて入ってきたのは、ハーツラビュル寮の5人だ。
「お邪魔するよ、ななし。……ふむ、掃除は行き届いているようだね」
リドルが満足げに頷き、その後ろからエースとデュースが大きな荷物を抱えて入ってくる。
「ちわーっす。いやー、リドル寮長が『たまには他寮との親睦を深めるべきだ』なんて言い出すからさ。正直、うまいもん食いたかっただけっしょ?」
「エ、エース! 滅多なことを言うな! ……失礼する、ななし。今日は僕も包むのを手伝わせてもらうよ」
「おっはよ〜、ななしちゃん! はいこれ、差し入れのお菓子と飲み物ね。マジカメ映えしそうなパーティー、期待してるよん♪」
「ななし、準備は進んでいるか? 手伝えることがあれば言ってくれ。……それと、これは食後にでもみんなで食べてくれ。口直しに持ってきた」
トレイがキッチンへ歩み寄りながら、丁寧に梱包された大きめの箱を冷蔵庫へ収めた。その手つきは、まるで壊れ物を扱うかのように慎重だ。
これは、不定期に開催される「オンボロ寮・美食研究会」。
今日はハーツラビュルの面々を招き「餃子」に挑戦する特別な日だ。
本日のメニュー
みんなで包んだパリパリ羽根つき餃子
【材料(約100個分)】
・豚ひき肉:500g
・キャベツ:1/2玉(細かく刻んで塩揉みし、水気を絞る)
・ニラ:1束
★味付け:
・醤油・酒(各大さじ2)
・ごま油(大さじ1)
・砂糖(小さじ1)
・おろし生姜・ニンニク(各小さじ1)
・隠し味の味噌(大さじ1/2)
・餃子の皮:100枚
・羽根用の水:水150ml、片栗粉小さじ2
【作り方】
①野菜の水分をしっかり絞り、材料を混ぜ合わせる
②全員で協力して包む
③熱したホットプレートに油を引き、円を描くように並べる。
④片栗粉を溶いた水を回し入れ、蒸し焼きにする。水分が蒸発し、底がカリカリになったら完成。
テーブルには大きなボウルいっぱいのタネと、山積みになった餃子の皮。
「よし、全員揃ったな。それじゃあ、各自餃子を包み始めてくれ。形は問わないが、焼く時に剥がれないようにしっかり閉じること」
トレイの号令で、一斉に手が動き出す。
「ふなっ! オレ様だって包めるんだゾ! ほら見てろ、この皮を広げて……タネをドバッと乗せて……」
「わわっ、グリム! 欲張りすぎだって。そんなに詰めたら閉じられないでしょ」
エースが笑いながらグリムの手元を指差す。案の定、グリムの持つ皮からはタネが溢れ出し、ベタベタになっていた。
「ふなー! 難しいんだゾ! この皮、オレ様の肉球に張り付いて離れないんだゾ!」
「グリム、一回肉球洗ってこよっか」
「ボクの餃子を見てごらん。ヒダの数は正確に七つ。間隔も均等だ。これこそが規律を重んじるハーツラビュルの餃子だよ。……ななし、どうかな? 完璧だろう?」
「……あはは、リドルくんマジ真面目〜。オレのは見て、ハート型! 皮を2枚使って、中身をたっぷり挟んでみたんだ。これ、マジカメ映えしそうじゃない?」
「ケイト、ふざけてないで手を動かせ。……おい、エース! お前のは肉を詰めすぎだ。皮がはち切れそうじゃないか!」
「これくらいボリューミーな方が、食った時の満足感あるんですって。……あ、デュース。お前、それ……何?」
エースの視線の先で、デュースが眉間にシワを寄せて格闘していた。彼の手元にあるのは餃子というよりも……。
「……何か問題か? 中身が出ないように、何重にも皮を重ねて補強したんだ」
「いや、どんだけ厚着させてんだよ。ななしも困ってるじゃん!」
ななしは苦笑しながら、デュースの手元にそっと新しい皮を差し出す。
「……すまない、ななし。力加減が難しくてな。……次は、もう少し優しく包んでみるよ。……こうか? 皮の端を、優しく、でも確実に……」
「ははは、賑やかでいいな。俺は標準的な包み方で行くよ。あ、ななし。タネの隠し味、少し味噌を入れただろう? 香りがいい」
トレイの細やかな気遣いに、ななしは感心したように目を細める。
包み終わった何十個もの餃子たちが、オンボロ寮の特大ホットプレートに並べられていく。
「さあ、ななし。仕上げを任せてもいいか?」
トレイに促され、ななしが薄く溶いた片栗粉水をプレートに回し入れる。ジュワアアァァァッ! という激しい音と共に、白い湯気が一気に立ち上る。
「この湯気の感じ、マジでテンション上がる〜! 画面越しでも美味しそうなの伝わるかな?」
「ケイト、危ないからあまり近づくな。……ななし、ここからは蓋をして蒸し焼きだな?」
ななしが蓋を閉める。
プレートの中でパチパチと水分が飛ぶ音が響く。
「リドルくん、お腹鳴ってない? 大丈夫?」
「なっ、鳴ってなどいない! 失礼なことを言わないでくれ!」
「……ななし、音が変わったな。さっきより少し高い乾いた音だ」
デュースの言葉通り、湿った音からカリカリとした小気味よい音へと変化していく。ななしがゆっくりと蓋を持ち上げると、そこには見事な黄金色の羽根を纏った餃子たちが現れた。
「完成! 『羽根つき餃子』です。……さあ、みんな、冷めないうちに食べて」
「いっただっきまーす! ……熱っ! ゲホッ、でもマジで美味ぇ! 外の皮がパリッパリで、中は肉汁の洪水だわ!」
「ふなっ!! この底の羽根がパリッパリで、香ばしさが半端ないんだゾ!中からは熱々の肉汁が飛び出してきて……。シャキシャキのキャベツとお肉の旨味が、口の中で合体魔法みたいに弾けるんだゾ!」
ななしの餃子とトレイのケーキ……。この組み合わせ、最強すぎてオレ様の胃袋がビックリしてるんだゾ! エース、デュース! 最後の一切れはオレ様のもんだゾーー!!」
「本当だ。皮を何重にも重ねた僕の餃子も、この羽根と一緒に食べると……なんだか、不思議と調和している気がする。……美味いな、ななし」
「リドルくん、ほら。これリドルくんの作ったやつ。形が綺麗だから食べやすそう」
「……ふむ。……っ、……美味しい。野菜の甘みがしっかり引き出されているね」
◇
嵐のような食事タイムが過ぎ、ホットプレートが空になった頃。
「あー、もう一歩も動けねぇ……」と椅子に沈み込む一年生たちを横目に、トレイがゆっくりと立ち上がった。
「さて、みんな。餃子の油っぽさが落ち着いたところで、真打ちの登場だ」
彼が冷蔵庫から取り出してきたのは、純白の生クリームに鮮やかなレモンイエローが映えるホールケーキだ。
「えっ、トレイ先輩、ケーキ!? マジで? お腹いっぱいだけど、これ見たら入っちゃうわ……」
「……トレイ。これは、もしや新作かい?」
「ああ。『レモンとマスカルポーネのムースケーキ』だ。餃子の後はどうしても口が重くなるからな。酸味を効かせて後味を軽くした。……ななしの分もたっぷりあるぞ」
差し出されたケーキは、驚くほど軽やかだ。
レモンのキュッとした酸味と、マスカルポーネの濃厚なコクが先ほどまでの醤油と油の記憶を優しく上書きしていく。
「……っ、美味しい……! トレイ先輩、これ本当に売ってるケーキみたい……」
「はは、光栄だな。……ななしの料理が美味かったから、俺も気合が入ったんだ。いい刺激になったよ」
「………ななし、このパーティー、また開催してもいいかな?」
リドルの問いに、ななしははっきりとした声で頷いた。
夕暮れ時のオンボロ寮。5人の賑やかな笑い声と、甘いケーキの余韻が、古い建物の隙間に心地よく溶け込んでいった。
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