問題児たちはオンボロ寮の合鍵が欲しい
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オンボロ寮の談話室、テーブルの上で自立するタブレット端末。そこに映し出されたイデア・シュラウドは、自室の暗がりに沈みながら恨めしそうな顔でななしを見つめていた。
「……で、ななし氏。その、アナログ極まりない金属片の束をどうしろって?」
「学園長からもらった合鍵なんです。防犯のために信頼できる人に、って言われて。……イデア先輩にも一応、相談してみようかなって思って」
ななしが画面のレンズに向かって鍵を掲げると、イデアは猫背をさらに丸め、ボソボソと早口で喋り始めた。
「ヒッ……! 信頼、っていう重すぎるデバフをかけないでほしいんだけど。大体、鍵なんて物理媒体は紛失リスクが高すぎる。紛失、即、セキュリティホールの発生……。ありえない、非効率の極みだわ……」
「兄さん、でももし僕たちがその鍵を預かれば、オンボロ寮の玄関をスマートロック化して、生体認証と暗号化通信で鉄壁の守りを構築できるよ! ななしさんも、これからは鍵を持ち歩かなくて済むし、兄さんも自室からオンボロ寮の空調を……あ、調整してあげられるよ!」
オルトがタブレットの横で目を輝かせて提案する。イデアは「調整って言い直しても筒抜けなんだけど」と毒づきながらも、画面越しにその鍵を凝視した。
彼にとって、オンボロ寮は数少ない通信圏内の安息地だ。自ら足を運ぶ労力は払いたくないが、デジタル的な繋がりを持つことは、彼なりの独占欲と安心感の形でもあった。
「……ま、まぁ。オルトがそこまで言うなら、検討リストの末席に置いておいてあげてもいいけど。僕が管理すれば、不審なログは秒で特定して、自動で学園の外まで転送してあげるし……。君が寝坊してても、僕がリモートで強制的に叩き起こしてあげることも可能、っていうか……」
イデアは頼りになる年上の技術者として、早口でメリットをまくし立てた。自分から「鍵をくれ」とは口が裂けても言わないが、相手から「お願いします」と言わせるための準備は万全だった。
「うーん……。でも、やっぱりイデア先輩に預けるの、悩むんですよね」
「……は!? い、今、僕の最高峰のセキュリティ提案を即答で蹴った? ギルドメンバーにバフ拒否された時くらいショックなんですが!」
「だってイデア先輩、外に出るの嫌いじゃないですか。鍵を渡すことで、イデア先輩の貴重な引きこもり時間を奪っちゃうんじゃないかなって」
ななしは、本気でイデアのライフスタイルを尊重し、彼に無理をさせたくないという一心で首を振った。
「イデア先輩には、自室でゆっくりゲームしててほしいですもん」
「……あのさぁ。君、優しさの方向性が根本的にバグってるよ」
イデアは大きくため息をつき、画面越しに顔を覆った。
拒絶されたはずなのに、その理由が自分の引きこもり権を死守するためだと言われれば、それ以上強くは言えない。
「兄さん、残念だったね。でもななしさんは、兄さんのことを本当に大切に思ってるんだよ」
「……わかってるよ、そんなこと。……これだから光属性は……」
イデアは不機嫌そうに呟きながら、画面の向こうでキーボードを激しく叩き始めた。
「……いいよ。今は鍵は預からない。検討も勝手にすればいい。……その代わり、鍵を預けてくれるまで、僕は僕のやり方でオンボロ寮のネットワークに勝手にバックドア作らせてもらうから。物理的な鍵がなくても、僕が入りたいと思った時は、電子の海から不法侵入してやりますわ……。ヒヒッ、覚悟しなよね、ななし氏」
合鍵は得られなかったが、イデアは独自のデジタルアクセス権を確保することを宣言し、タブレットの画面をパッと暗転させた。検討段階の合鍵を巡る騒動は、異端の天才の執着をさらに加速させたようだった。
「……で、ななし氏。その、アナログ極まりない金属片の束をどうしろって?」
「学園長からもらった合鍵なんです。防犯のために信頼できる人に、って言われて。……イデア先輩にも一応、相談してみようかなって思って」
ななしが画面のレンズに向かって鍵を掲げると、イデアは猫背をさらに丸め、ボソボソと早口で喋り始めた。
「ヒッ……! 信頼、っていう重すぎるデバフをかけないでほしいんだけど。大体、鍵なんて物理媒体は紛失リスクが高すぎる。紛失、即、セキュリティホールの発生……。ありえない、非効率の極みだわ……」
「兄さん、でももし僕たちがその鍵を預かれば、オンボロ寮の玄関をスマートロック化して、生体認証と暗号化通信で鉄壁の守りを構築できるよ! ななしさんも、これからは鍵を持ち歩かなくて済むし、兄さんも自室からオンボロ寮の空調を……あ、調整してあげられるよ!」
オルトがタブレットの横で目を輝かせて提案する。イデアは「調整って言い直しても筒抜けなんだけど」と毒づきながらも、画面越しにその鍵を凝視した。
彼にとって、オンボロ寮は数少ない通信圏内の安息地だ。自ら足を運ぶ労力は払いたくないが、デジタル的な繋がりを持つことは、彼なりの独占欲と安心感の形でもあった。
「……ま、まぁ。オルトがそこまで言うなら、検討リストの末席に置いておいてあげてもいいけど。僕が管理すれば、不審なログは秒で特定して、自動で学園の外まで転送してあげるし……。君が寝坊してても、僕がリモートで強制的に叩き起こしてあげることも可能、っていうか……」
イデアは頼りになる年上の技術者として、早口でメリットをまくし立てた。自分から「鍵をくれ」とは口が裂けても言わないが、相手から「お願いします」と言わせるための準備は万全だった。
「うーん……。でも、やっぱりイデア先輩に預けるの、悩むんですよね」
「……は!? い、今、僕の最高峰のセキュリティ提案を即答で蹴った? ギルドメンバーにバフ拒否された時くらいショックなんですが!」
「だってイデア先輩、外に出るの嫌いじゃないですか。鍵を渡すことで、イデア先輩の貴重な引きこもり時間を奪っちゃうんじゃないかなって」
ななしは、本気でイデアのライフスタイルを尊重し、彼に無理をさせたくないという一心で首を振った。
「イデア先輩には、自室でゆっくりゲームしててほしいですもん」
「……あのさぁ。君、優しさの方向性が根本的にバグってるよ」
イデアは大きくため息をつき、画面越しに顔を覆った。
拒絶されたはずなのに、その理由が自分の引きこもり権を死守するためだと言われれば、それ以上強くは言えない。
「兄さん、残念だったね。でもななしさんは、兄さんのことを本当に大切に思ってるんだよ」
「……わかってるよ、そんなこと。……これだから光属性は……」
イデアは不機嫌そうに呟きながら、画面の向こうでキーボードを激しく叩き始めた。
「……いいよ。今は鍵は預からない。検討も勝手にすればいい。……その代わり、鍵を預けてくれるまで、僕は僕のやり方でオンボロ寮のネットワークに勝手にバックドア作らせてもらうから。物理的な鍵がなくても、僕が入りたいと思った時は、電子の海から不法侵入してやりますわ……。ヒヒッ、覚悟しなよね、ななし氏」
合鍵は得られなかったが、イデアは独自のデジタルアクセス権を確保することを宣言し、タブレットの画面をパッと暗転させた。検討段階の合鍵を巡る騒動は、異端の天才の執着をさらに加速させたようだった。
