問題児たちはオンボロ寮の合鍵が欲しい
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「……ねえ、これ見て。さっき学園長に渡されたんだけど」
放課後のオンボロ寮、使い込まれてギシギシ鳴るソファに深く腰掛けたななしが、テーブルの上にジャラリと金属の塊を置いた。
「ふなっ? なんなんだゾ、それ。新しいおもちゃか?」
真っ先に食いついたのは、ななしの膝の上でこれまた偉そうにふんぞり返っていたグリムだ。首元の魔法石を揺らしながら、鼻先を金属に近づける。
「おもちゃじゃないよ。……これ、オンボロ寮の合鍵。全部で4本あるんだって」
「「…………!!」」
その瞬間、談話室の空気が変わった。
それまで「この公式の意味分かんねー!」と投げ出していたエースと「うう、魔法史の暗記が……」と頭を抱えていたデュースの動きがピタリと止まる。二人の視線はそれに注がれた。
「学園長がさオンボロ寮は私とグリムしかいないし、何かあった時用に信頼できる人に預けておきなさいって。でも、誰に預けたらいいのかなーと思って」
ななしが首を傾げながら、のんきに呟く。その瞬間、隣に座っていたエースがガタッと椅子を鳴らして身を乗り出した。
「おいおいななし! そんなの決まってんじゃん! 目の前に最高に信頼できて、しかもしょっちゅうここに通ってる超優良物件がいるだろーが!」
「えっ、どこに?」
「ここだよ!! 視力検査からやり直してこい!!」
エースの鋭いツッコミが飛ぶ。隣ではデュースも佇まいを正し、心なしか息を荒くしてななしを見つめていた。
「そうだぞ、ななし。エースの言う通りだ。僕たちが鍵を持っていれば、万が一お前が鍵を失くした時や、寮に不審者が勝手に入り込もうとした時に、僕たちがすぐ駆けつけてやれるだろ!」
二人の熱烈なアピール。エースにいたっては、早くも鍵の一本に手を伸ばしかけている。
「ま、そういうことだからさ。ななしがわざわざ玄関まで開けに来る手間も省けるし、オレが一本もらってやるよ。感謝しろよな?」
「ふなっ! お前らに鍵なんて必要ないんだゾ! この寮には天才魔法士のグリム様がいるんだから、鍵なんて全部オレ様が管理すればいいんだゾ!」
グリムがパシッとエースの手を叩く。しかし、ななしは困ったように眉を下げてテーブルの鍵を引き寄せた。
「うーん……。でも、最近はわたしがハーツラビュルに行って、二人の部屋で勉強教えてもらうことの方が多いじゃない?」
ななしが淡々と話す。実際、ハーツラビュル寮の方が設備も整っているし、お菓子も美味しい。
「だから、二人にわざわざ鍵渡さなくてもいいかなーって気もするんだよね。……うん! やっぱり、今はわたしが持っておくことにするね。二人とも、気遣ってくれてありがと!」
にこりと、太陽のような無垢な笑顔。それを見たエースの顔が、一瞬でありえないものを見た時のそれに変わった。
「は……? ……いやいやいや!! 待て待て待て待て!! 今の、どの文脈から遠慮って結論が出たわけ!? 思考回路どうなってんの、この監督生は!!」
「えっ、だって悪いよ」
「悪くねーよ! むしろ『どうぞ持っててくださいお願いします』って土下座して渡すべき場面だろ、ここは!!」
「そんなに!? 鍵一本で土下座はちょっと……」
ななしが引き気味に答えると、今度はデュースがガタガタと震えながら詰め寄ってきた。
「ななし……! もしかして僕たちはまだ、鍵を預けられるほど信頼されていないということか……?」
「そんなことないよ!」
「貰えて当然だろって思ってたオレたちのメンツを丸出しのまま放置すんな!!」
エースが頭を抱えて叫ぶ。
しかしななしは、開いた参考書に目を落としながら「わかった。前向きに検討しておくよ〜」と、さらりと流した。
「それ、貰えないやつじゃん! なんでだよ!!」
秋の日のオンボロ寮。
夕暮れ時の談話室には、鍵を欲しがる二人の叫びと、それを全く意に介さない監督生のめくるページの音だけが、平和に響き渡っていた。
放課後のオンボロ寮、使い込まれてギシギシ鳴るソファに深く腰掛けたななしが、テーブルの上にジャラリと金属の塊を置いた。
「ふなっ? なんなんだゾ、それ。新しいおもちゃか?」
真っ先に食いついたのは、ななしの膝の上でこれまた偉そうにふんぞり返っていたグリムだ。首元の魔法石を揺らしながら、鼻先を金属に近づける。
「おもちゃじゃないよ。……これ、オンボロ寮の合鍵。全部で4本あるんだって」
「「…………!!」」
その瞬間、談話室の空気が変わった。
それまで「この公式の意味分かんねー!」と投げ出していたエースと「うう、魔法史の暗記が……」と頭を抱えていたデュースの動きがピタリと止まる。二人の視線はそれに注がれた。
「学園長がさオンボロ寮は私とグリムしかいないし、何かあった時用に信頼できる人に預けておきなさいって。でも、誰に預けたらいいのかなーと思って」
ななしが首を傾げながら、のんきに呟く。その瞬間、隣に座っていたエースがガタッと椅子を鳴らして身を乗り出した。
「おいおいななし! そんなの決まってんじゃん! 目の前に最高に信頼できて、しかもしょっちゅうここに通ってる超優良物件がいるだろーが!」
「えっ、どこに?」
「ここだよ!! 視力検査からやり直してこい!!」
エースの鋭いツッコミが飛ぶ。隣ではデュースも佇まいを正し、心なしか息を荒くしてななしを見つめていた。
「そうだぞ、ななし。エースの言う通りだ。僕たちが鍵を持っていれば、万が一お前が鍵を失くした時や、寮に不審者が勝手に入り込もうとした時に、僕たちがすぐ駆けつけてやれるだろ!」
二人の熱烈なアピール。エースにいたっては、早くも鍵の一本に手を伸ばしかけている。
「ま、そういうことだからさ。ななしがわざわざ玄関まで開けに来る手間も省けるし、オレが一本もらってやるよ。感謝しろよな?」
「ふなっ! お前らに鍵なんて必要ないんだゾ! この寮には天才魔法士のグリム様がいるんだから、鍵なんて全部オレ様が管理すればいいんだゾ!」
グリムがパシッとエースの手を叩く。しかし、ななしは困ったように眉を下げてテーブルの鍵を引き寄せた。
「うーん……。でも、最近はわたしがハーツラビュルに行って、二人の部屋で勉強教えてもらうことの方が多いじゃない?」
ななしが淡々と話す。実際、ハーツラビュル寮の方が設備も整っているし、お菓子も美味しい。
「だから、二人にわざわざ鍵渡さなくてもいいかなーって気もするんだよね。……うん! やっぱり、今はわたしが持っておくことにするね。二人とも、気遣ってくれてありがと!」
にこりと、太陽のような無垢な笑顔。それを見たエースの顔が、一瞬でありえないものを見た時のそれに変わった。
「は……? ……いやいやいや!! 待て待て待て待て!! 今の、どの文脈から遠慮って結論が出たわけ!? 思考回路どうなってんの、この監督生は!!」
「えっ、だって悪いよ」
「悪くねーよ! むしろ『どうぞ持っててくださいお願いします』って土下座して渡すべき場面だろ、ここは!!」
「そんなに!? 鍵一本で土下座はちょっと……」
ななしが引き気味に答えると、今度はデュースがガタガタと震えながら詰め寄ってきた。
「ななし……! もしかして僕たちはまだ、鍵を預けられるほど信頼されていないということか……?」
「そんなことないよ!」
「貰えて当然だろって思ってたオレたちのメンツを丸出しのまま放置すんな!!」
エースが頭を抱えて叫ぶ。
しかしななしは、開いた参考書に目を落としながら「わかった。前向きに検討しておくよ〜」と、さらりと流した。
「それ、貰えないやつじゃん! なんでだよ!!」
秋の日のオンボロ寮。
夕暮れ時の談話室には、鍵を欲しがる二人の叫びと、それを全く意に介さない監督生のめくるページの音だけが、平和に響き渡っていた。
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