監督生と体が入替わるはなし
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「おお、素晴らしい! これぞ正に、世界が私に贈ってくれた至高の悪戯だね。……いや、今の私は君で、君は私なのだから、これは自画像とのモノローグというべきかな!」
朗々と詩を詠み上げたのは、ルーク・ハント特有の華やかな、しかし今は監督生であるななしの喉から発せられた声であった。
事の起こりは、実験室から漏れ出た奇妙な煙。それを浴びた瞬間、二人の魂は肉体という器を飛び越え、互いの住処を入れ替えてしまったのである。
ななしの体に入ったルークは、慣れない少女の肉体の感触を確かめるように、しなやかに指先を動かし、自らの腰の曲線をなぞった。
「ああ、ななしくん。君の視界から見る世界は、こんなにも瑞々しく、春の陽だまりのような愛おしさに満ちているのだね。重心の位置、四肢の軽やかさ……。まるで、私が知らぬ間に重力から解放された小鳥になった気分だよ!」
「ル、ルーク先輩! お願いですから静かにしてください!」
対照的に、ルークの肉体に入ったななしは、あまりの視界の高さと、全身を包む狩人のようなしなやかな筋肉の質感に、おろおろと戸惑うばかりだ。
「ふふ、そんなに強張らなくていい。せっかくだ、この稀有な機会を謳歌しようじゃないか。……おや? それにしても……」
「……どうしたんですか?」
「いや、失敬。男性の肉体というものは、いわば重厚な狩猟弓のようなものだ。どこか硬質で、張り詰めた弦のような緊張感が常に付き纏う。……だが君の体は、まるで繊細なハープのようだ。歩くたびに、この胸元で柔らかなリズムが奏でられ……実に興味深い。これぞ重力との対話だね」
「なっ……! 何を観察してるんですか!」
「おっと、すまない。あまりの機能美に、つい狩人の本能が刺激されてしまったよ。……だが、ななしくん。君も、私の体の方で少々不自由を感じているのではないかな? 例えば……そう、足運びの際に、いささか収まりが悪いとかね」
「……っ!」
ななしは絶句し、もじもじと足元を気にし始めた。
そう、ルークの体は、彼女が思っているよりもずっと……その、中心にしっかりとした主張があった。歩くたびに、あるいは姿勢を変えるたびに、自分にはない重みを感じてしまうのだ。
「ルーク先輩の体は、その……もっと、こう、シュッとしてると思ってたんですけど……」
「はっはっは! 生命の躍動を感じるだろう? だが、それも美しき自然の一部。どうか、古き友人に接するように、優しく扱ってやってほしい」
「な、慣れません! 慣れたくありません!」
ななしは、ルークのしなやかな肉体を守るため、細心の注意を払って移動を開始した。しかしルークは、彼女の華奢な体を見事に使いこなし、まるで舞台の上を踊るように軽やかに付き従う。
「ちなみに、お手洗いの作法は気をつけることだ。私の方は、いささか気まぐれな矢を放つような難しさがあるからね。……おや、羞恥に染まった私の顔というのも、実に趣があって素晴らしい!」
「もう……っ! ルーク先輩のバカっ!」
結局、その日の夜まで入れ替わりは解けず、ななしは予測不能な重みとの格闘に疲れ果て、ルークは柔らかな調和という新たな美学を完食した。
◇
翌朝、元の姿に戻ったルークは、晴れやかな笑顔でななしに歩み寄った。
「おはよう、トリックスター。昨夜の君は、私の野生を見事に御していたね。……どうだい? 私の個性的な重力、少しは恋しくなったかな?」
「なるわけないです! 早く忘れたいです!」
ルークの優雅な笑い声が、朝の学園に響き渡る。監督生にとって、それは一生消えない、あまりに多機能な思い出となったのだった。
朗々と詩を詠み上げたのは、ルーク・ハント特有の華やかな、しかし今は監督生であるななしの喉から発せられた声であった。
事の起こりは、実験室から漏れ出た奇妙な煙。それを浴びた瞬間、二人の魂は肉体という器を飛び越え、互いの住処を入れ替えてしまったのである。
ななしの体に入ったルークは、慣れない少女の肉体の感触を確かめるように、しなやかに指先を動かし、自らの腰の曲線をなぞった。
「ああ、ななしくん。君の視界から見る世界は、こんなにも瑞々しく、春の陽だまりのような愛おしさに満ちているのだね。重心の位置、四肢の軽やかさ……。まるで、私が知らぬ間に重力から解放された小鳥になった気分だよ!」
「ル、ルーク先輩! お願いですから静かにしてください!」
対照的に、ルークの肉体に入ったななしは、あまりの視界の高さと、全身を包む狩人のようなしなやかな筋肉の質感に、おろおろと戸惑うばかりだ。
「ふふ、そんなに強張らなくていい。せっかくだ、この稀有な機会を謳歌しようじゃないか。……おや? それにしても……」
「……どうしたんですか?」
「いや、失敬。男性の肉体というものは、いわば重厚な狩猟弓のようなものだ。どこか硬質で、張り詰めた弦のような緊張感が常に付き纏う。……だが君の体は、まるで繊細なハープのようだ。歩くたびに、この胸元で柔らかなリズムが奏でられ……実に興味深い。これぞ重力との対話だね」
「なっ……! 何を観察してるんですか!」
「おっと、すまない。あまりの機能美に、つい狩人の本能が刺激されてしまったよ。……だが、ななしくん。君も、私の体の方で少々不自由を感じているのではないかな? 例えば……そう、足運びの際に、いささか収まりが悪いとかね」
「……っ!」
ななしは絶句し、もじもじと足元を気にし始めた。
そう、ルークの体は、彼女が思っているよりもずっと……その、中心にしっかりとした主張があった。歩くたびに、あるいは姿勢を変えるたびに、自分にはない重みを感じてしまうのだ。
「ルーク先輩の体は、その……もっと、こう、シュッとしてると思ってたんですけど……」
「はっはっは! 生命の躍動を感じるだろう? だが、それも美しき自然の一部。どうか、古き友人に接するように、優しく扱ってやってほしい」
「な、慣れません! 慣れたくありません!」
ななしは、ルークのしなやかな肉体を守るため、細心の注意を払って移動を開始した。しかしルークは、彼女の華奢な体を見事に使いこなし、まるで舞台の上を踊るように軽やかに付き従う。
「ちなみに、お手洗いの作法は気をつけることだ。私の方は、いささか気まぐれな矢を放つような難しさがあるからね。……おや、羞恥に染まった私の顔というのも、実に趣があって素晴らしい!」
「もう……っ! ルーク先輩のバカっ!」
結局、その日の夜まで入れ替わりは解けず、ななしは予測不能な重みとの格闘に疲れ果て、ルークは柔らかな調和という新たな美学を完食した。
◇
翌朝、元の姿に戻ったルークは、晴れやかな笑顔でななしに歩み寄った。
「おはよう、トリックスター。昨夜の君は、私の野生を見事に御していたね。……どうだい? 私の個性的な重力、少しは恋しくなったかな?」
「なるわけないです! 早く忘れたいです!」
ルークの優雅な笑い声が、朝の学園に響き渡る。監督生にとって、それは一生消えない、あまりに多機能な思い出となったのだった。
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