TRIANGLE
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
サバナクローへと続く鏡とディアソムニアへと続く鏡。
その二つの間でななしはピタリと足を止めた。
左右から押し寄せるプレッシャーに鏡の間の空気はビリビリと張り詰めている。
「子分……?」
不安そうに袖を引っ張るグリムの頭をななしはぽんぽんと叩いた。その目はどちらの寮の鏡でもなく、鏡の間の中心にある誰もいない空間を真っ直ぐに見据えている。
「うん。私は誰の檻にも入らないし誰の沼にも沈まない……出てこい二大巨頭!!」
ななしのヤケクソ混じりの大声が厳かな鏡の間に響き渡った。
その瞬間、それぞれの鏡から驚いたような顔をしたレオナとマレウスが同時に姿を現した。
「あ? なんだ、草食動物。俺のところに来るんじゃねぇのかよ」
「お前が僕の元へ歩み寄ってくれるのを待っていたのだが……。まさか、お前の方から僕を呼び出すとはな」
二人はお互いの姿を視界に入れるなり一瞬で険しい顔になり、凄まじい威圧感を放ち始める。真ん中に挟まれたグリムが「ひえぇぇ!」と悲鳴を上げてななしの後ろに隠れた。
「わざわざ二人揃って出てきてくれてありがとうございます! はっきり言わせてもらいますけど、ここ数日、周りの視線が痛すぎて私の胃は限界です! 贈り物もありがたいですけど、どっちの肩を持つとか、どっちのモノになるとか、そういうの全部ナシにしてください!」
一気にまくし立てたななしにレオナが片眉を跳ね上げ、マレウスが微かに目を細める。
「おい、俺の誘いを断る気か? 生意気な口叩くじゃねぇか」
「僕を拒絶するというのか、ヒトの子」
「話を聞いてください!!」
ななしは一歩前に踏み込み二人を交互に指差した。
「 私はこれからもオンボロ寮の監督生として、二人と対等な友人でいます! 文句があるなら、今ここで二人まとめて私の説教を聞いていってください!」
ななしの啖呵が響き渡った鏡の間は、一瞬水を打ったような静寂に包まれた。
後ろに隠れているグリムは「終わったんだゾ……」と遺言のようにつぶやき完全に固まっている。
レオナは顎を少し上げたまま、酷く冷めたような、けれど獰猛な光を孕んだ瞳でななしをじっと見つめている。マレウスもまた感情の読めない無表情のまま、その高い視線からまっすぐにこちらを射抜いていた。
生きた心地のしない数秒が流れる。
沈黙を最初に破ったのはレオナだった。
「……ハッ。アハハハハ!」
心底おかしそうな笑い声が壁に反響する。レオナは目元を手で覆い肩を大きく揺らして笑っていた。
「友人だぁ? 俺を呼び出しといて、そんな間抜けな言葉が返ってくるとは思わねぇだろ。ほんとどこまでも図太い草食動物だぜ」
「僕に向かって友人などという言葉を贈ってきたのは、お前が初めてだ、人の子」
マレウスもまた呆れたように、けれどその唇にはいつもの寂しげなものではない鮮やかな笑みを浮かべていた。二人から放たれていた刺すような圧が霧が晴れるようにすっと引いていく。
「拒絶されたのは些か愉快ではないが……お前が誰の檻にも入らず、その傲慢な態度を崩さないというのなら、それも悪くない」
マレウスが一歩前に出てななしの頭にポンと大きな手を置いた。
「いいだろう。お前が望むなら、その友人という契約を結んでやろう。ただし僕を退屈させるなよ。それが条件だ」
「おい、トカゲ野郎。勝手に話進めてんじゃねぇよ」
レオナが不機嫌そうに舌打ちをしながら歩み寄りマレウスの手を払いのけるようにして、今度は自分の大きな手でななしの頭をごしごしと乱暴にかき回した。
「おい草食動物。友人っつったからには、これからも俺の昼寝の場所は確保しとけよ。あと呼び出しを無視したら、次は本当にオンボロ寮ごと砂にするからな」
「二人とも頭を撫で回すのやめてください……! 髪がボサボサになります!」
「オ、オレ様は!? オレ様も食いもんくれるなら、仲間に入れてやってもいいんだゾ!」
空気が変わったのを察したグリムが急に調子よくななしの足元から飛び出してきた。
「お前はただの毛玉だろ。ほら、これでも食ってろ」
レオナがポケットから放り投げた飴玉をグリムは「ふなっ!」と空中で見事にキャッチする。
「あれー、みんな揃ってなにしてるんスか?」
鏡の間の入り口から呆れたような、けれどどこか楽しげな声がした。振り返ると、そこにはラギーとシルバーが立っていた。
「レオナさん、探したッスよ」
「マレウス様、談話室の準備が整いました。……どうやら、杞憂に終わったようですね」
シルバーが小さく微笑む。
セベクがいないおかげか、この場は奇跡的な静けさを保っていた。
「チッ、余計な迎えが来やがったな」
「僕もそろそろ戻らねばならないようだ。ヒトの子、また夜に」
二人は最後にななしの顔をもう一度だけ見つめ、それぞれ満足したような、どこか晴れやかな顔で自寮の鏡の向こうへと消えていった。
「……はぁ。とりあえず、生き延びた……」
その場にへたり込みそうになるななしの横で、ラギーが「お疲れッス」と声をかけてくる。
「いやー、あの二人の独占欲を正面からぶち壊すなんて、ななしくんくらいなもんッスよ」
「オレ様、これからも美味いもんが食えそうで楽しみなんだゾ!」
グリムが飴玉を舐めながら、誇らしげに胸を張る。
あの二大巨頭をいつでも呼び出せる学園で唯一無二のポジション。
「明日からも、賑やかになりそうだな……」
ななしはグリムの小さな手を引いて愛おしいオンボロ寮への道を歩き出すのだった。
その二つの間でななしはピタリと足を止めた。
左右から押し寄せるプレッシャーに鏡の間の空気はビリビリと張り詰めている。
「子分……?」
不安そうに袖を引っ張るグリムの頭をななしはぽんぽんと叩いた。その目はどちらの寮の鏡でもなく、鏡の間の中心にある誰もいない空間を真っ直ぐに見据えている。
「うん。私は誰の檻にも入らないし誰の沼にも沈まない……出てこい二大巨頭!!」
ななしのヤケクソ混じりの大声が厳かな鏡の間に響き渡った。
その瞬間、それぞれの鏡から驚いたような顔をしたレオナとマレウスが同時に姿を現した。
「あ? なんだ、草食動物。俺のところに来るんじゃねぇのかよ」
「お前が僕の元へ歩み寄ってくれるのを待っていたのだが……。まさか、お前の方から僕を呼び出すとはな」
二人はお互いの姿を視界に入れるなり一瞬で険しい顔になり、凄まじい威圧感を放ち始める。真ん中に挟まれたグリムが「ひえぇぇ!」と悲鳴を上げてななしの後ろに隠れた。
「わざわざ二人揃って出てきてくれてありがとうございます! はっきり言わせてもらいますけど、ここ数日、周りの視線が痛すぎて私の胃は限界です! 贈り物もありがたいですけど、どっちの肩を持つとか、どっちのモノになるとか、そういうの全部ナシにしてください!」
一気にまくし立てたななしにレオナが片眉を跳ね上げ、マレウスが微かに目を細める。
「おい、俺の誘いを断る気か? 生意気な口叩くじゃねぇか」
「僕を拒絶するというのか、ヒトの子」
「話を聞いてください!!」
ななしは一歩前に踏み込み二人を交互に指差した。
「 私はこれからもオンボロ寮の監督生として、二人と対等な友人でいます! 文句があるなら、今ここで二人まとめて私の説教を聞いていってください!」
ななしの啖呵が響き渡った鏡の間は、一瞬水を打ったような静寂に包まれた。
後ろに隠れているグリムは「終わったんだゾ……」と遺言のようにつぶやき完全に固まっている。
レオナは顎を少し上げたまま、酷く冷めたような、けれど獰猛な光を孕んだ瞳でななしをじっと見つめている。マレウスもまた感情の読めない無表情のまま、その高い視線からまっすぐにこちらを射抜いていた。
生きた心地のしない数秒が流れる。
沈黙を最初に破ったのはレオナだった。
「……ハッ。アハハハハ!」
心底おかしそうな笑い声が壁に反響する。レオナは目元を手で覆い肩を大きく揺らして笑っていた。
「友人だぁ? 俺を呼び出しといて、そんな間抜けな言葉が返ってくるとは思わねぇだろ。ほんとどこまでも図太い草食動物だぜ」
「僕に向かって友人などという言葉を贈ってきたのは、お前が初めてだ、人の子」
マレウスもまた呆れたように、けれどその唇にはいつもの寂しげなものではない鮮やかな笑みを浮かべていた。二人から放たれていた刺すような圧が霧が晴れるようにすっと引いていく。
「拒絶されたのは些か愉快ではないが……お前が誰の檻にも入らず、その傲慢な態度を崩さないというのなら、それも悪くない」
マレウスが一歩前に出てななしの頭にポンと大きな手を置いた。
「いいだろう。お前が望むなら、その友人という契約を結んでやろう。ただし僕を退屈させるなよ。それが条件だ」
「おい、トカゲ野郎。勝手に話進めてんじゃねぇよ」
レオナが不機嫌そうに舌打ちをしながら歩み寄りマレウスの手を払いのけるようにして、今度は自分の大きな手でななしの頭をごしごしと乱暴にかき回した。
「おい草食動物。友人っつったからには、これからも俺の昼寝の場所は確保しとけよ。あと呼び出しを無視したら、次は本当にオンボロ寮ごと砂にするからな」
「二人とも頭を撫で回すのやめてください……! 髪がボサボサになります!」
「オ、オレ様は!? オレ様も食いもんくれるなら、仲間に入れてやってもいいんだゾ!」
空気が変わったのを察したグリムが急に調子よくななしの足元から飛び出してきた。
「お前はただの毛玉だろ。ほら、これでも食ってろ」
レオナがポケットから放り投げた飴玉をグリムは「ふなっ!」と空中で見事にキャッチする。
「あれー、みんな揃ってなにしてるんスか?」
鏡の間の入り口から呆れたような、けれどどこか楽しげな声がした。振り返ると、そこにはラギーとシルバーが立っていた。
「レオナさん、探したッスよ」
「マレウス様、談話室の準備が整いました。……どうやら、杞憂に終わったようですね」
シルバーが小さく微笑む。
セベクがいないおかげか、この場は奇跡的な静けさを保っていた。
「チッ、余計な迎えが来やがったな」
「僕もそろそろ戻らねばならないようだ。ヒトの子、また夜に」
二人は最後にななしの顔をもう一度だけ見つめ、それぞれ満足したような、どこか晴れやかな顔で自寮の鏡の向こうへと消えていった。
「……はぁ。とりあえず、生き延びた……」
その場にへたり込みそうになるななしの横で、ラギーが「お疲れッス」と声をかけてくる。
「いやー、あの二人の独占欲を正面からぶち壊すなんて、ななしくんくらいなもんッスよ」
「オレ様、これからも美味いもんが食えそうで楽しみなんだゾ!」
グリムが飴玉を舐めながら、誇らしげに胸を張る。
あの二大巨頭をいつでも呼び出せる学園で唯一無二のポジション。
「明日からも、賑やかになりそうだな……」
ななしはグリムの小さな手を引いて愛おしいオンボロ寮への道を歩き出すのだった。
23/23ページ
