DISGUISE
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
オクタヴィネルの三人から逃れるようにして、ななしたちは這々の体でオンボロ寮へと帰り着いた。
夕闇が迫る談話室のソファにレオナが我が物顔で腰を下ろす。ラギーは手際よくキッチンのコンロに火をつけ、昨日の残りのメンチカツをフライパンに並べて温め直していた。
「ほらほらななしくん、突っ立ってないで、大人しく座るッスよ。顔が真っ白でゴーストみたいッスよ」
ラギーがフライパンを揺らしながら、振り返りもせずに声をかけてくる。
「あ、すみません。手伝います……」
「いいから座ってろって言ってんだよ、草食動物」
ソファの奥からレオナの低い声が響く。
逆らう気力もなく、ななしはテーブルを挟んだ対面の椅子にそっと腰を下ろした。下腹部の鈍痛は歩いたことでさらに増している。じわじわと滲む冷や汗が制服のシャツを肌に貼りつかせている。
「ふなー、オレ様はお腹ペコペコなんだゾ!」
グリムがラギーの足元でそわそわと尾を振る。
「はいはい、もう温まったッスよ。グリムくんの分はこれね」
ラギーがメンチカツをテーブルへ運んでくる。香ばしいソースの匂いが広がると同時に、グリムが待ってましたとばかりに大口を開けて齧り付いた。
「美味いんだゾー!」
「じゃ、レオナさんの分と、オレの分……と」
ラギーが自分の分のメンチカツを口に放り込み、ふと動きを止める。
昼間の植物園の、あの距離。そして今、狭い食堂の中で漂う匂い。ラギーの耳がピクリと跳ね、鼻先が不審げに動いた。
「……ねえ、ななしくん、どこか怪我してます?」
「え……?」
ななしの身体が強張る。
ラギーの目が純粋な不審と好奇心で細められる。
獣人族の鋭い嗅覚が捉える血の匂い。
けれど大怪我のそれとは違う、微量に存在し続ける奇妙な匂いの正体が、ラギーにはどうしても結びつかない。
「それは、その……違くて……」
ななしは言葉を詰まらせ抱え込んだお腹に無意識に力を込める。言い訳が思い浮かばない。
その時、ソファから大きな影が起き上がった。
「ラギー。お前、本当にうるせぇな」
レオナが気怠げに髪を掻き揚げながら、テーブルへと近づいてくる。
「何言ってるんッスかレオナさん、絶対に何か隠して――」
「隠してようがどうでもいいっつってんだよ。こいつはただの魔力なしだ。慣れねぇ魔力に当てられて、腹下して冷や汗かいてるだけだろ。ったく、これだからガキは面倒くせぇ」
レオナが吐き捨てるように言ったもっともらしい嘘に、ラギーは一瞬きょとんとした。
「へ? 魔法当てられて腹下したッスか? ……あー、まぁ魔力酔いみたいなもんもあるんッスかねぇ。血の匂いは……まぁ、どっか口の裏でも切ったんッスか?」
ラギーは腑に落ちない様子で首を傾げつつも、レオナの言葉にそれ以上追及するのをやめ、メンチカツを口に放り込んだ。
レオナはななしの前にドカッと腰を下ろすと、テーブルに置かれたメンチカツを一つ掴む。その鋭い瞳は、ななしが女であることも、その体調不良の本当の理由もすべて見抜いた上で、そっと視線を外した。
「……おい、ななし。飯食ったらさっさと寝ろ」
不器用で、どこまでも傲慢な、けれど確実な助け舟。
「……ありがとうございます」
ななしが小さく頭を下げると、レオナはフンと鼻を鳴らした。ラギーは「あ、オレが手伝うからななしくんは座ってていいッスよ〜」と、すっかり病人だと思い込んで皿を片付け始めている。
「なんだ? オメーらさっきから何の話をしてるんだゾ?」
グリムだけが口の周りにソースをつけたまま、不思議そうに首を傾げていた。
夕闇が迫る談話室のソファにレオナが我が物顔で腰を下ろす。ラギーは手際よくキッチンのコンロに火をつけ、昨日の残りのメンチカツをフライパンに並べて温め直していた。
「ほらほらななしくん、突っ立ってないで、大人しく座るッスよ。顔が真っ白でゴーストみたいッスよ」
ラギーがフライパンを揺らしながら、振り返りもせずに声をかけてくる。
「あ、すみません。手伝います……」
「いいから座ってろって言ってんだよ、草食動物」
ソファの奥からレオナの低い声が響く。
逆らう気力もなく、ななしはテーブルを挟んだ対面の椅子にそっと腰を下ろした。下腹部の鈍痛は歩いたことでさらに増している。じわじわと滲む冷や汗が制服のシャツを肌に貼りつかせている。
「ふなー、オレ様はお腹ペコペコなんだゾ!」
グリムがラギーの足元でそわそわと尾を振る。
「はいはい、もう温まったッスよ。グリムくんの分はこれね」
ラギーがメンチカツをテーブルへ運んでくる。香ばしいソースの匂いが広がると同時に、グリムが待ってましたとばかりに大口を開けて齧り付いた。
「美味いんだゾー!」
「じゃ、レオナさんの分と、オレの分……と」
ラギーが自分の分のメンチカツを口に放り込み、ふと動きを止める。
昼間の植物園の、あの距離。そして今、狭い食堂の中で漂う匂い。ラギーの耳がピクリと跳ね、鼻先が不審げに動いた。
「……ねえ、ななしくん、どこか怪我してます?」
「え……?」
ななしの身体が強張る。
ラギーの目が純粋な不審と好奇心で細められる。
獣人族の鋭い嗅覚が捉える血の匂い。
けれど大怪我のそれとは違う、微量に存在し続ける奇妙な匂いの正体が、ラギーにはどうしても結びつかない。
「それは、その……違くて……」
ななしは言葉を詰まらせ抱え込んだお腹に無意識に力を込める。言い訳が思い浮かばない。
その時、ソファから大きな影が起き上がった。
「ラギー。お前、本当にうるせぇな」
レオナが気怠げに髪を掻き揚げながら、テーブルへと近づいてくる。
「何言ってるんッスかレオナさん、絶対に何か隠して――」
「隠してようがどうでもいいっつってんだよ。こいつはただの魔力なしだ。慣れねぇ魔力に当てられて、腹下して冷や汗かいてるだけだろ。ったく、これだからガキは面倒くせぇ」
レオナが吐き捨てるように言ったもっともらしい嘘に、ラギーは一瞬きょとんとした。
「へ? 魔法当てられて腹下したッスか? ……あー、まぁ魔力酔いみたいなもんもあるんッスかねぇ。血の匂いは……まぁ、どっか口の裏でも切ったんッスか?」
ラギーは腑に落ちない様子で首を傾げつつも、レオナの言葉にそれ以上追及するのをやめ、メンチカツを口に放り込んだ。
レオナはななしの前にドカッと腰を下ろすと、テーブルに置かれたメンチカツを一つ掴む。その鋭い瞳は、ななしが女であることも、その体調不良の本当の理由もすべて見抜いた上で、そっと視線を外した。
「……おい、ななし。飯食ったらさっさと寝ろ」
不器用で、どこまでも傲慢な、けれど確実な助け舟。
「……ありがとうございます」
ななしが小さく頭を下げると、レオナはフンと鼻を鳴らした。ラギーは「あ、オレが手伝うからななしくんは座ってていいッスよ〜」と、すっかり病人だと思い込んで皿を片付け始めている。
「なんだ? オメーらさっきから何の話をしてるんだゾ?」
グリムだけが口の周りにソースをつけたまま、不思議そうに首を傾げていた。
